親は子の鏡というが、ならば、A代表は若年層代表の鏡なのか。少なくともA代表がつかんだ自信、実績は、そのまま若い選手たちにも伝播するものらしい。メキシコで始まったU-17W杯を見ていると、そのことを実感する。
 大会ではここまで8試合、南アフリカでのW杯に出場した国とそうでない国の対決があったが、不出場組が勝ったのはたった1試合しかない。ウズベキスタンに終始主導権を握られていたニュージーランドは、しかし、4発をブチこんで快勝した。南アフリカでプライドを染み込ませたユニホームの力がなければ……と思わせる一戦だった。

 プライドの染み込みぐあいでは、どうやら日本も負けてはいない。そして、その効果は自分たちだけでなく、戦う相手にも波及している。初戦の相手、ジャマイカはもちろんのこと、A代表が世界王者になったこともあるフランスにとってさえ、日本は警戒すべき相手になっていた。
 その警戒ぶりは、データにもはっきりと表れている。ジャマイカとフランスではスタイル、能力ともにまるで異なっているが、両者ともに、日本を相手にした際のボール保持率は4割を大きく割り込んだ。つまり、どちらのチームも日本を相手にカウンター主体の戦い方をしてきたのである。
 特に驚くべきはフランスの戦い方だった。初戦でアルゼンチンに3−0と快勝しているだけに、当然のことながらカサにかかって攻めてくると思いきや、90分を通じて守備のバランスを崩さないサッカーに終始し、かつ、それでも終盤は日本の猛攻でズタズタにされかけた。

 日本がよかった、とは思わない。少なくとも、チームを率いる吉武監督からすれば不満も少なくなかったはずである。確かにボール保持の時間は長かったものの、ボールを持っていない選手の動きの質、量が貧弱だったため、相手の意表をつくようなパスはほとんど見られなかったからである。
 だが、そんな日本にあっても、つまり絶好調にはほど遠い日本であっても、ジャマイカは、フランスは脅威に感じていた。94年以降に生まれた彼らにとって、もしかすると日本は、物心がついて見た初めてのW杯が開催されていた国、以降どのW杯にも出場している強豪国、ということになるのかもしれない。

 2戦を終えて勝ち点4を獲得したことで、日本の決勝トーナメント進出の可能性は高まった。今後の相手も日本を警戒してくるのか。そして明らかに国際大会で警戒されることになれていない日本の選手たちは、どんな順応性をみせてくれるのか。まずは25日(日本時間)のアルゼンチン戦を楽しみにしたい。

<この原稿は11年6月23日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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