第1回のトヨタ杯で来日したノッティンガム・フォレストは、いわゆる“三段跳び”で話題を呼んだチームでもあった。
 1段目はイングランド2部(当時)優勝、2段目は現在のプレミアにあたる1部での優勝、そして3段目は、欧州チャンピオンズ杯での優勝である。残念ながら、4段目となるトヨタ杯ではウルグアイのナシオナル・モンテビデオの前に屈してしまったが、1シーズンごとに頂点を究めていった彼らの躍進は、イングランド・リーグの層の厚さを証明するものでもあった。
 三段跳び、とまではいかないものの、似たようなケースはドイツでもあった。95〜96シーズンにクラブ史上初の2部落ちを喫しながら、次のシーズンで2部優勝、さらに再昇格して迎えた96〜97シーズンで見事優勝を遂げたカイザースラウテルンのケースである。

 どちらも、滅多にあることではないし、あっていいことでもない。だが、こうしたことが起こることによって、リーグは一気に活性化することもある。生き残るため、志よりも目先の勝負を重視していた下位のチーム、下部カテゴリーのチームが自分たちの可能性を再確認することができるからである。

 柏は、勝てるのか。
 優勝経験のない彼らにとって、これからの戦いは完全に未知の領域となる。のしかかる重圧は、のびのびと戦ってきた彼らから大切なアドバンテージを削り取っていくだろう。だが、もし逃げきりに成功するようなことになれば、J1だけでなく、J2にも大きな変化が起きるかもしれない。

 目下のところ、一括りにJ2といっても、J1から落ちてきたチームと、JFLから上がってきたチームとでは将来への展望を含めた意識の持ち方がずいぶんと違ってしまっている。J1での戦いを念頭に置いているチームと、J1に上がること自体が大目標というチームである。J1とJ2は違いすぎる、そもそも自分たちがJ1で勝てるはずがないという思い込みが、後者の発想を生む最大の要因だと言っていい。

 もちろん、J1とJ2が同じわけはない。そのことは、今季の福岡が証明してしまってもいる。だが、まるで違うわけでもない。柏の躍進によって、そのことを痛感しつつあるJ2のチームは決して少なくないはずだ。
 たとえば、鳥栖。たとえば、札幌。たとえば、徳島。

 J1同様、今季のJ2もいよいよ佳境を迎えている。上位の直接対決がほぼ終わったJ1と違い、J2は昇格争い同士による終盤、あるいは最終節の直接対決が組まれている。ひりつくような昇格争いは、志のあるチームはどこか、を占う試験紙でもある。

<この原稿は11年11月3日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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