4日、世界陸上競技選手権東京大会の日本代表選考会を兼ねた第109回日本陸上競技選手権大会が東京・国立競技場で開幕した。男女8種目の優勝者が決定。女子5000mは田中希実(New Balance)が14分59秒02の大会新で4連覇を果たした。既に世界陸上の参加標準記録(14分50秒00)を突破していた田中は代表に内定。今大会の内定は第1号となった。女子棒高跳びは小林美月(日本体育大学)が日本学生新記録を塗り替える4m31で初優勝。男子100mは予選、準決勝を実施し、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)、桝田大輝(東洋大学)が予選落ち、山縣亮太(セイコー)が準決勝敗退という波乱が起きた。同決勝は5日に行われる。
今大会2種目にエントリーする田中が、まず5000mを制した。3位以内に入れば、世界陸上の代表に内定するが、後続を突き放す圧勝で出場権を手に入れた。

レース前に降り出した雨をものともせず、
序盤レースを引っ張ったのはペースメーカーではなく、
東京オリンピック日本代表で元日本記録保持者の廣中璃梨佳(
日本郵政グループ)だ。持ち味の積極的な走りで、
集団を引っ張る。これに田中と伊澤菜々花(スターツ)
がついていった。パリオリンピック代表の山本有真(積水化学)らは1km3分3秒設定のペースメーカーに付き、第2集団を形成した。

廣中がリードする先頭集団は2000m過ぎペースダウン。一度は第2集団に吸収されたが、田中が残り4周でスパートを掛けた。ポニーテールの後ろ髪を揺らしながら後続をグングン引き離していった。「優勝するだけじゃなく、テーマとして世界と戦えるスパートをと思っていました。最近の中では自分らしい走りはできたと思います。今までは『世界と戦えるように』とぐずぐず言って、自分で自分の足を引っ張っていた。今日は“自分を許さない”という気持ちで走って、やっと許せた」

2位
以下13秒以上の差を付ける。2004年に福士加代子がマークした大会記録( 15分5秒07) を塗り替える14分59秒02。「 璃梨佳ちゃんの背中が頼もしかった。彼女がいなかったら、やっぱり福士さんの大会記録を超えることができないまま、自分にも過去の先輩方にも気持ちで負けてしまうところだったので。璃梨佳ちゃんと2人で走ったからこそ出し切れたと思います」と田中。 残す種目は1500m。こちらも派遣標準記録をクリアしており、3位以内で代表に内定する。5日に予選、6日に決勝を控える。

女子棒高跳びは日体大3年の小林が初優勝。コーチを務める父・史明は1998年の日本選手権王者。親娘制覇となった。
3m70から10cm刻みで4回連続で一発クリア。4m10は3回目、4m20は2回目で成功した。ここで優勝争いは大坂谷明里(愛媛競技力向上対策本部)との2人に絞られた。4m15の自己ベストを更新した後も4m25を1回目で越えた。4m30は2回失敗したが、大坂谷の3回連続失敗(4m25=2回、4m30=1回)により優勝が確定した。

小林は現日本記録保持者の諸田実咲が中央大学4年時にマークした4m30の日本学生記録より1cm高い4m31にチャレンジ。「助走も踏み切りもハマッた」という跳躍は本人も手応え十分だった。日本歴代7位の好記録で見事初優勝を果たした。これで全国高校総合体育大会(インターハイ)、日本学生陸上競技対校選手権大会(インカレ)を制し、ついに掴んだシニアの全国制覇だ。「日本一になれたので次は世界でも戦えるよう頑張りたい」と意気込んだ。
(文・写真/杉浦泰介)