泉谷駿介&野本周成、男子110mHで世界陸上代表内定! 高校生・久保凛は女子800mで2連覇&日本新 〜日本陸上競技選手権〜
5日、世界陸上競技選手権東京大会の日本代表選考会を兼ねた第109回日本陸上競技選手権大会2日目が東京・国立競技場で行われた。男子110mハードルは泉谷駿介(住友電工)が13秒22(追い風0.8m)で優勝。0秒01差で2位に野本周成(愛媛県競技力向上本部)が入った。泉谷と野本既に世界陸上の派遣標準記録(13秒27)をクリアしていたため、代表に内定した。女子800mは東大阪大敬愛高校3年の久保凛が1分59秒52で2連覇を達成。派遣標準記録(1分59秒00)には届かなかったものの、自らが持つ日本記録を0秒41更新した。
男子やり投げは崎山雄太(愛媛競技力本部)が日本歴代2位となる87m16をマークして初優勝。世界陸上の参加標準記録(85m50)を突破し、代表内定を勝ち取った。同100mは桐生祥秀(日本生命)が10秒23(追い風0.4m)で同種目5年ぶり3度目の優勝。女子100mは井戸アビゲイル風果(東邦銀行)が11秒45(向かい風0.1m)で初優勝を果たした。
既にパリオリンピック5位入賞の村竹ラシッド(JAL)が代表に内定しており、残り2つの代表枠を争う熾烈なレースが110mハードルだ。派遣標準記録は泉谷、野本に加え、阿部竜希(順天堂大学)がクリアしており、この3人は2位以内に入れば代表内定となる。村竹はコンディション調整のため欠場したもののオリンピック2大会、世界陸上3大会に出場した高山峻野(ゼンリン)が決勝に残っておりハイレベルなレースが予想された。
準決勝を13秒19(追い風0.6m)で1位通過した泉谷が第6レーン、それに次ぐ13秒21(同)の野本が第4レーン、高山が2人の間第5レーン。阿部は泉谷の右隣りの第7レーンに位置した。号砲が鳴り、8人が一斉に飛び出した。泉谷は若干出遅れたという。実はこの日のウォーミングアップ中にふくらはぎを痛めたのだ。レース後に「正直怖かった」と心境を明かしたが、後半からの加速は流石だった。
前を行く野本を捉えたのは10本目のハードルを跳んだ後、最後のスプリント勝負で差し切った。わずか100分1秒差。「これだけ国内で競ったレースをでき、そこに勝てたことはすごく自信になります」。わずかに差し切られた野本は「レース展開は想定通り。後半僕が崩れた分、泉谷選手に置いてかれた」と肩を落とした。
これでこの種目の代表3枠は村竹、泉谷、野本で埋まった。「本気でメダルを狙って頑張りたい」と泉谷。6日走り幅跳びにエントリーしているが、足の状態を見て出場を決めるという。
昨年、高校2年生ながら女子800mを制した久保は、連覇をかけて臨んだ。昨年の決勝は2分3秒13と当時の自己記録を塗り替え、"日本一”の称号を手にした。その後の全国高校総合体育大会(インターハイ)では1分59秒93と日本女子初の1分台をマーク。昨年の日本陸上競技連盟(JAAF)の年間表彰式「JAAF ATHLETICS AWARD」では新人賞を受賞した。
日本陸上界のニューヒロインは、受賞後の囲み取材では「ちょっとまだ距離はあると思いますが、必ず標準記録を切る」と語っていた。4日の予選では全体1位の2分2秒56で通過した。「明日は勝って標準を切って終われるようにします」と力強いコメント。この日の決勝を迎えた。
ピンクのユニホームを纏い、ピンクのハチマキを巻いてスタートラインに立った。力強いコメント同様、走りも積極的だ。オープンレーンとなるバックストレートから先頭に立つと、1周目は59秒で走った。これは自身の持つ日本記録、そして派遣標準記録よりも速いラップだ。
久保は最後まで後続の追い上げを許さず、フィニッシュタイム1分59秒52の日本新記録。2位以下に4秒以上の差を付け、圧勝劇で連覇を達成した。「標準を切ることができず悔しいんですが、自己ベストを出し、納得のいく走りができたので良かったと思います」。 今回の会場は、世界陸上東京大会と同じ国立競技場だ。
「(世界陸上が)東京で開催されるので、ワクワク(の思い)しかない。“絶対に出場する”という気持ちで臨みます。もし出場できたら入賞を目指し、1本でも多く走れるよう頑張りたいです」
17歳は前を見据えている。

(文・写真/杉浦泰介)