20年もやっていると、現存しているルール、システムが未来永劫続くような気分になってくる。新しいやり方に対するアレルギーも強まる。今季から昇格、降格に関する新たな方式を取り入れたJリーグにも、賛否両論さまざまな声が寄せられていたと聞く。それだけに、J2プレーオフの盛り上がりと、ファイナルでの劇的な結末には、溜飲を下げる思いだった人もいたに違いない。
 6位だった大分が昇格を決めたことで、1年間かけて戦ってきたリーグ戦の重みが失われるのでは、という声もある。だが、引き分けだった場合にはリーグ戦上位のチームが勝ったことになるというルールがある以上、いずれはリーグ戦上位のチームの方が有利、という統計になっていくはずである。たった一度の下剋上でシステム自体を否定してしまうのはいかがなものか。

 J1では、最終節を前に広島が優勝を決めた。彼らが証明したのは、現在のJリーグでは、共通認識、哲学があれば資金力を凌駕することも可能だということ。鳥栖の躍進と合わせて、J1王者という地位をより身近に感じるようになったクラブも多いのではないか。頂点を狙うチームが増えれば、必然的にリーグ自体のレベルもあがる。日本サッカーの未来にとって、これはもちろん悪いことではない。

 ただ、昨年の柏に続き、2年連続でJ2降格を経験したクラブがチャンピオンになったということは、J1が完全なるカオスに陥ってしまったことも意味する。創設期のヴェルディをはじめ、過去のJリーグでは何度か“ジャイアント・チーム”が生まれかけた時期があったが、いずれも長続きせずに停滞期に突入してしまっている。なぜ、日本にはマンチェスターUが、バイエルンが、バルセロナが、レアル・マドリードが生まれないのか。リーグ関係者だけでなく、ファンやメディアも真剣に考えなければならない時期にきている。

 何度も何度も書いてきていることだが、代表チームの人気が、クラブのそれを圧倒的に凌駕しているという状態は、明らかに異様である。結果、Jリーグの実績なり内容が代表チームの選手選考に反映されなくても疑問を覚えない人が、世界的な常識からするとケタ外れに多い国になってしまった。このままの状態が続けば、Jリーグは代表チームの、海外リーグの下部組織でしかなくなってしまう。

 群雄割拠はもちろん面白い。しかし、そこを抜け出して王朝を築くチームが現れてくれば、Jリーグはもっと面白くなる。“アンチ”という楽しみ方があるJリーグを、これからの10年間に期待していきたい。そして、そのためには新しいことに挑戦し続けるJリーグであってもらいたい。

<この原稿は12年11月29日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
◎バックナンバーはこちらから