昨年最後のコラムで「女子に比べて男子は」と書いたのだが、新年早々、また同じことを書くハメになってしまった。
 あまりにも情けない天皇杯の決勝戦、いや、ガンバの戦いぶりだった。先制されてからの極端な意気消沈ぶりは、驚きを通り越して衝撃的ですらあった。弱いのは、押し込まれるのは仕方がない。なにせ、彼らはJ2に降格するチームなのだから。だが、リードを奪われて迎えた終盤にシュートを打とうとする気概さえ見せず、自陣での無意味なパスを繰り返すのには恐れ入った。
 繰り返すが、弱いのは、押し込まれるのは非難されるべきことではない。だが、勝とうとしないのは、そう感じさせてしまうのは、プロとして論外である。あのような試合でファンがブーイングを浴びせないのは、日本ならではというしかない。来季のJ2では圧倒的な戦力、資金力を誇ることになるガンバだが、元日の試合を見る限り、1年でのJ1復帰は簡単なことではないように思える。彼らの過去の栄光を考えると非常に残念なことであり、かつ、なぜこのような事態に陥ってしまったのかは不明だが、いまのガンバは、チームの根っこが腐敗してしまっている。根本的な治療は、長谷川健太新監督にとっても簡単なことではあるまい。

 さて、いきなり残念な試合で明けてしまった13年だが、日本サッカーにとっては重要な意味を持つ一年となる。

 ザッケローニ体制となって以来、確実に結果を出してきた日本代表だが、熟成にこだわるあまり、“絶対に外されない選手”と“絶対に使われない選手”という露骨な格差が生まれつつある。

 幸か不幸か、結果が出ているために不協和音も聞こえてこないが、Jでの成績がまるで反映されない選考、起用は、短期的にはともかく、長期的に見れば明らかなマイナスである。代表ばかりに注目が集まり、Jは見向きもされないという日本社会の傾向に拍車がかかるのか、それともブレーキがかかるのか――。コンフェデレーションズ杯あたりで一つの答えが出そうな気がする。 

 ともあれ、来年の今頃になれば、史上初めて、W杯でどのあたりを目指すのかという国民的なコンセンサスが生まれつつあることだろう。監督が口にした目標が失笑されることなく、大多数の人間に受け入れられる社会に、ようやく日本もなろうとしている。日本サッカーはもちろん、スポーツ界全般に大きな影響を及ぼすであろう東京五輪招致の可否も含め、近未来を決定づける一年の始まりである。

<この原稿は13年1月3日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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