歩く、走る、跳ぶ、投げる、打つ……スポーツをする人間はさまざまな動きを組み合わせたり、反復することで高いパフィーマンスを実現する。すべての動作において、文字どおり要となるのが腰だ。いくら筋肉を鍛え、技術を向上させたところで、体の重心部分がしっかりしていなければ、まさに“腰砕け”となる。

 しかし、日常生活などを通じ、腰の骨盤は少しずつ歪みが生じている。その歪みを放置したままにしておくと、身体の左右のバランスは崩れる。バランスが不均衡な状態では、フォームも乱れ、どんなスポーツであっても満足いく力を発揮できない。
「たとえばゴルフや野球でも骨盤がズレていると、体の中心線がズレてしまい、一番、力を伝えられるポイントでインパクトできません。骨盤のズレを直し、いい状態でプレー中もキープできる方法はないか。それをずっと考えていました」

 そのように山本富造社長が語る山本化学工業では、このほど正しい位置への骨盤矯正を目的とした“ゼロポジションベルト”の開発に成功した。山本化学工業では既に水着に浮力を付加することで、体の「浮心」と「重心」を一致させ、泳ぐ際のバランス向上を図る“ゼロポジション水着”を発表しているが、それに続く第2弾の製品だ。

“ゼロポジションベルト”は大きく分けて2つのパーツからなる。まずは腰を包み込む黒いベルト部分と、お尻の仙骨部分から左右に伸び、マジックテープで止める位置をずらせる灰色のアタッチメント部分だ。使用法はいたって簡単である。

(1)平らな床の上にリラックスした状態であおむけに足を伸ばして寝転がる。
(2)足のつま先の状態をチェックし、骨盤のズレを診断する。足のつま先が左右とも同じ角度で時計の11時と1時方向に向けば、骨盤の左右のズレはない。足のつま先の一方が左右のどちらかに開いている状態であれば、骨盤がその方向に開いてズレている。
(3)“ゼロポジションベルト”を着用し、骨盤が開いているほうのアタッチメントを写真のように後方から前方へと少し強く引っ張って止める。そして反対側のアタッチメントは前方から後方に少しだけ軽く引っ張って止める。これで骨盤がまっすぐ正しい位置にくるように矯正していく。
(4)アタッチメントの止める位置と方向を変えながら、寝転がった状態で足先の位置が左右同じ角度になる(=骨盤が左右のズレがない)ように調整する。 
 
 既にゴルフなどでフィールドテストを実施しており、ベルトの効果は出ているという。
「右にどうしてもスライスするというゴルフ愛好者の方が骨盤の位置を矯正したところ、ボールが真っすぐ飛んでいくようになりました。また、最初はショットが安定しても、ホールを重ねるごとに乱れる方は、疲労から体のバランスを崩していることが多い。そこで、このベルトを巻いて左右の調整をしてもらうと、最初と同じようなショットが連続的に打てるようになりました」
 
 山本社長も被験者となり、日常的にベルトを巻き、骨盤の左右の歪みを修正した。その上で学生時代から続けている少林寺拳法をやったところ、「蹴りが今まで以上にスムーズに出るようになった」と明かす。

「骨盤矯正の重要性は、スポーツのみならず、健康維持の目的でも盛んに言われるようになってきています。ただ、骨盤がズレている場合は、それに伴って背骨の歪みが生じ、周囲の筋肉も非対称な状態になっていますから、専門家の下で矯正してもらっても、しばらくすればまた元に戻ってしまうんです」

 スポーツを行い、身体が歪むと骨盤矯正を専門家にお願いする。これが今までの常識だった。だが、“ゼロポジションベルト”は全く発想が逆である。激しい運動をする時こそ正しい骨盤の位置をキープすることで、偏りのないゼロポジションの位置で定着する。日常生活でも、プレー中でも骨盤の左右の位置を正しくキープするという発想でつくられた今回のベルトは、「これまでありそうでなかった商品」と山本社長は胸を張る。

“ゼロポジションベルト”は今月下旬より発売予定で、「ゴルフや野球、テニス、ランニングとさまざまな陸上でのスポーツをしている方にぜひ一度、体感していただきたい」と山本社長は語る。また、「障害者スポーツにおいて、このベルトはより効果が見られるはず」と考えている。

 身体に不自由な部分がある障害者は、動きが制限されることもあり、どうしてもバランスが偏りやすい。それはスポーツのパフォーマンスにも大いに影響を及ぼす。骨盤をバランスよく保てる状態を維持できれば、もっとプレーがしやすくなり、レベルアップするのではないか――これまで山本化学工業ではパラリンピックを目指す競泳選手などにゼロポジション水着を使用してもらう試みを行ってきたが、今後は“ゼロポジションベルト”を他の障害者スポーツの競技でも試してもらえるように働きかけてみる意向だ。

「今回の“ゼロポジション”の発想で、体のバランスを向上させる。そして、もうひとつの特殊素材、赤外線を出す“バイオラバー”で下腹部の腸腰筋のある足の付け根を左右上下に30〜50回こすり、骨盤の前後の歪みを調整し、血流を良くして筋肉の硬直を防ぐ。この2つを組み合わせることで、初心者からトップアスリートまでスポーツに取り組むすべての人に、よりプレーしやすく、かつパフォーマンスを上げる提案ができるのではないかと考えています」
 スポーツ界のさらなる発展のため、山本化学工業は今まで以上に“本腰”を入れて取り組もうとしている。

 『一人一億円稼ぐ会社の鉄則』、ダイヤモンド社より出版[/color]
 山本化学工業の取り組みに対する考え方、新しい開発について、山本社長が1冊の本にまとめました。
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