ガッカリした。心底ガッカリした。びっくりするほどに収穫の少なかった先月末のブルガリア戦でさえ、この貧弱な勝利に比べれば豊穣な宝の山に思えてくる。問題点、課題点、修正点……律儀に書いていけば、スポニチの1面から最終面まで使っても足りないほどだ。わたしにとっては、ザッケローニ体制になって以来、最低最悪の試合だった。
 試合前日、記者から本田頼みを指摘されたザック監督が激怒したというニュースが伝わってきた。
 だが、考えてみればこれはおかしい。本来激怒すべきは、監督ではなく選手のはずである。監督としても半分本気で怒りながら半分は記事を読んだ選手たちの発奮に期待していた部分があったに違いない。

 だが、試合が進むにつれて明らかになっていったのは、どうやら本田頼みを指摘されて気分を害している選手はほとんどいないらしい、ということだ。
 ドーハが暑かった? コンディション調整が難しかった? モチベーションが高まらなかった? なるほど、どれも事実だろう。目標がW杯出場にあるチームならば、説得力はある自己弁護にどっぷりと漬かっているがいい。だが、本大会出場を決めた直後、さらなるレベルアップを誓ったのは、コンフェデの、あるいはW杯での“大躍進”を誓ったのは、本田だけではなかったはずである。

 あれは、単なる口先だけのことだったのか?
 ザック監督がメンバーを固定しすぎている、という声は、少しずつ少しずつ高まってきていた。しかし、こんな試合を見せられたら、もう二の句は出てこない。ようやく巡ってきたチャンスを、石にしがみついてでもモノにしてやる――そんな選手の挑戦的なプレーを期待する気持ちは、笑えるぐらい見事に裏切られた。

 南アフリカでの日本代表がそうだったように、サッカーの世界では、準備期間がメタメタでも本番になると突如として好結果が転がり込んでくる、ということがある。それでも、いい準備をした方がいい結果につながる可能性が高いから、すべてのチームはいい準備をしようとする。勝利を必然のものにしようとする。

 もし、万が一、この日本がコンフェデ杯で好結果を出すことがあったとしても、それは単なる偶然である。

 おそらく、本田は依然としてコンフェデでの躍進を狙っていることだろう。だが、この試合に出場したメンバーの半数以上に世界を口にする資格はない。高い志を抱くチームであれば絶対にやらない試合を、ドーハでの日本はやった。やってしまった。これで世界を語るのは、わたしが明日からの禁酒を誓うようなものである。

 つまり、嘲笑の対象である。

<この原稿は13年6月13日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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