ついにブラジルW杯グループリーグ(GL)の組み合わせが決まりました。ご存じのとおり、日本が入ったのはコートジボワール、ギリシャ、コロンビアのいるC組。5大会連続出場となる日本ですが、厳しい組に入ったかな、というのが正直な感想です。4カ国とも実力差がそこまで大きくなく、接戦が予想されます。
 決勝トーナメント進出へ最も大切なのは初戦のコートジボワールで勝ち点を獲得できるかどうか。コートジボワールに勝てば、GL突破の可能性は高まります。逆に敗れると苦しくなるでしょう。日本にとっては初戦、第2戦と勝ち点を積み重ねてGL突破を確定させるシナリオが理想ですね。

 エースへの供給源をつぶせ!

 コートジボワール戦で注意すべき選手は、やはりFWディディエ・ドログバです。高い技術を持ったストライカーであることに加え、彼は同国の精神的支柱でもあります。ドログバがいいプレーをすれば、つられて味方も力を発揮するように映るのです。試合ではドログバに、いかにボールを供給させないかがカギになるでしょう。日本はパスの出所をつぶすため、山口螢や細貝萌といったボール奪取に長けた選手をアンカーとして起用することも有効だと思います。

 攻撃では高い位置でボールを奪ってから縦に仕掛ける速攻と、ポゼッションしながらしっかり組み立てる遅攻を使い分ける。いずれにしてもポイントは11月の欧州遠征のように球離れを早くし、相手がボールを奪いに飛び込んでくるスキを与えないこと。フィジカル面では日本の方が間違いなくコートジボワールより劣っています。ガチャンと体をぶつけられて、競り合いに持ち込まれるのは避けたいところです。

 第2戦で当たるギリシャはC組の他国に比べると、力は落ちるとみています。しかし、W杯では簡単に勝てる相手はいません。同国のW杯欧州予選で10試合中8試合を完封した堅守は脅威です。

 日本がギリシャのゴールをこじ開けるためのポイントは、守から攻への切り替える時のスピードアップ。相手がボールを保持している間も、常に奪った後のことをイメージしておくことが大切です。マイボールにしたら、サイドの長友佑都が攻め上がる、または本田圭佑や柿谷曜一朗といった前線の選手にパスをつなぐ。静から動へと素早く切り替え、相手に自陣へ戻りながら対応させるかたちにすれば、鉄壁にズレを生じさせることができるでしょう。得失点差も考え、できるだけ多く点を取った上で勝利しておきたいですね。

 またギリシャ戦では、アルベルト・ザッケローニ監督のマネジメントも重要です。次のコロンビア戦、その後の決勝Tは総力戦が予想されます。初戦の結果にもよりますが、主力を温存したり、控えメンバーに実戦機会を与える必要性も出てくるでしょう。

 第3戦のコロンビアは、C組首位突破に最も近い存在と見ています。身体能力が高く、優れた技術を持ち合わせた選手が多い。私の中ではゴール前ではパスを回すよりも、ドリブルを仕掛けて、シュートを狙うというイメージが強いですね。

 中心選手のFWラダメル・ファルカオは、ゴールへの嗅覚、パワー、シュート技術といった点取り屋に必要な能力をすべて備えているといっても過言ではありません。まさに南米のストライカーといった印象です。

 日本は、コートジボワール戦同様に、ファルカオにボールを渡さないことが求められます。パスの出所にプレッシャーをかけ、もしファルカオにつながれても、うかつには飛び込んではいけません。粘り強く対応し、フォローにきた味方と囲い込んでボールを奪う守り方がベターでしょう。その上で、巡ってきたチャンスは確実にモノにする。日本が持ちうる力を全て発揮すれば、勝機は十分にあるはずです。

 広島が示したブレない強さ

 最後に、Jリーグについても触れておきます。サンフレッチェ広島の連覇で幕を閉じた2013年ですが、ここまで優勝の行方がもつれるとは思ってもいませんでした。実際、私は前回のコラムで、横浜F・マリノスが逃げ切ると予想していました。

 やはり、広島は昨季の優勝を経験したメンバーが多く残り、チームとしての戦い方にブレが少なかったですね。夏場の勝てない時期も、森保一監督は一貫して布陣や戦術を変えなかった。今の広島には、3連覇を成し遂げた時の鹿島アントラーズのような強さを感じます。当時の鹿島も陣容や戦術大幅な変更がなく、選手間の意思疎通が年々増していっていました。その意味で、広島の強さはまだしばらく続くと見ています。

 一方、降格したり、下位に沈んでしまったクラブの共通点は、シーズン中にコロコロとメンバーや戦い方を変えてしまったこと。変化に対する修正やすりあわせを十分に行えず、一枚岩で戦えなくなってしまったように映ります。今季、悔しい思いをしたクラブは、まずチームのかたちを固めることが来季以降の巻き返しにつながっていくのではないでしょうか。

 今年は将来が楽しみな選手が多く台頭したシーズンでもありましたね。柿谷、大迫勇也、齋藤学……彼らは代表にも召集され、その活躍がJリーグの盛り上げに一役買ったことは間違いありません。このような選手たちがもっと出てきて、Jリーグ、ひいては日本サッカーを発展させてくれることを期待し、W杯イヤーを迎えたいと思います。

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima-hsp.com/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。
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