さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナへ行く機会が、ほとんどなくなった。『K-1』、そして『PRIDE』、また『PRIDE』を継ぐ形で開催されていた『DREAM』『戦極』といった格闘技のビッグイベントが開かれなくなったからだ。
(写真:人気絶頂期にはアリーナが超満員に膨れ上がることも珍しくなかった)
 数年前までは、格闘技のビッグイベントが毎月のようにゴールデンタイムでテレビ放映されていた。だが、いまは、まったくない。キックボクシングの『KRUSH』、総合格闘技では『DEEP』『修斗』などが定期開催され、ディープなファンを熱くさせてはいるが、大衆に熱を届けるには至っていない。格闘技人気は下降したままだ。

 格闘技人気の再興は望めないのだろうか?
 いや、そんなことはない。今年に入って復興の兆しが見え始めている。

 それは、IGF(イノキ・ゲノム・フェデレーション)が本格的に総合格闘技路線を打ち出したことにある。
 これまでIGFのリングはプロレスが中心で、そこにリアルファイト(総合格闘技)が添えられる形だった。ところが、今年からは、プロレスとは分けてリアルファイトの大会が開催されることになる。その第1弾が、4月5日、東京・両国国技館での『INOKI GENOME FIGHT1』だ。

 すでに対戦カードも続々と発表されている。これまで(3月6日時点)に発表されているのは次の5試合。
▼石井慧(日本)vs.フィリップ・デ・フライ(英国)
▼ミノワマン(日本)vs.ヨーラン・ウルフ(スウェーデン)
▼クラッシャー川口(日本)vs.ブレット・ロジャース(米国)
▼ラマザン・エセンバエフ(ロシア)vs.山本勇気(日本)
▼澤田敦士(日本)vs.星風(モンゴル)

 このIGFの総合格闘技路線は、昨年の大晦日に藤田和之を破って、IGF王者となった石井が中心となる。北京五輪柔道競技で金メダルを獲得し、直後に総合格闘技転向を表明した頃ほどの人気はなくなったものの、このイベントにおける石井の存在は大きい。vs.ミルコ・クロコップ(クロアチア)、あるいはvs.鈴川真一をはじめとするヘビー級プロレスラーとのカードが今後、実現するのであれば、さまざまな意味で興味深い。

 また、この『INOKI GENOME FIGHT』シリーズは第2弾が、8月に東京都内で開催されることも決まっている。ここには青木真也、北岡悟ら『DREAM』『戦極』などで活躍していた日本人トップファイターの出場も予想される。いきなり、『PRIDE』の華麗なる再現とはいかないまでも、徐々にメンバーが揃えば、『INOKI GENOME FIGHT』は、かなり世間の関心を集める大会になることだろう。

 まずは、4・5両国『INOKI GENOME FIGHT1』を注視したい。

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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン 〜人種差別をのりこえたメジャーリーガー〜』(ともに汐文社)。最新刊は『運動能力アップのコツ』(汐文社)。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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