二宮: いよいよ、ブラジルW杯に臨む日本代表メンバー発表(12日)が目前に迫ってきました。小島さんには、注目のメンバー選考について、長期貯蔵のそば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」を飲みながらご意見をうかがっていきたいと思います。
小島: お酒を飲みながらの対談はなかなかないですね。お手柔らかにお願いします(笑)。

二宮: 小島さんは昔からお酒は強い方ですか?
小島: 現役時代は飲みましたが、最近は少なくなりました。汗でアルコールを出していませんからね(笑)。

二宮: 最近はどういった機会に飲むことが多いですか?
小島: 引退してからは休日に、家内とランチに出かけて食事しながらお酒も飲んでいます。昼間にお酒を飲むのが、一番うれしい瞬間ですね。

二宮: それは羨ましいなぁ。普段はビール党ということですが、「那由多(なゆた)の刻(とき)」のSoba&Sodaはいかがですか?
小島: あ、これはうまい! 香りも程よくて、飲んだ時の口当たりもすごくいい。ソーダで割っているから、のど越しも爽やかですね。

二宮: さて、注目のサッカー日本代表ですが、小島さんはディフェンダー(DF)のひとりに田中マルクス闘莉王選手を推していますね。
小島: その理由として、吉田麻也選手が負傷の影響もあって、万全ではないということが大きいですね。そもそも、2人のセンターバック(CB)のうちの1人は、W杯を経験した選手がいいと思うんです。

二宮: なるほど。吉田選手とコンビを組む今野泰幸選手も南アフリカW杯を経験していますが、CBとしての出場はありませんでした。
小島: やはり、本番の経験値というところでは不安がありますよね。ですから、W杯を経験している闘莉王選手がいれば、計算が立ちやすいのかなと。ましてや、開催地は彼の母国ですから、相当高いモチベーションで臨んでくれるはずです。

二宮: ゴールキーパー(GK)だった小島さんから見て、闘莉王選手のいいところは?
小島: ひとつはリーダーシップをとってくれるところ。W杯のような大きな大会ではGKが指示しようにも、大歓声でかき消されてしまうんです。そんな時、GKの代わりに声をかけ、守備の狙いをはっきりさせてくれる選手の存在はありがたいですね。

二宮: もうひとつは高さと強さですか?
小島: そうですね。やはり、高さと強さがある相手と戦った時、ゴール前にボールを入れられると怖い。吉田選手が本番も万全でない場合、今野選手と代表入りが濃厚と言われる森重真人選手のコンビは、いささかサイズダウンが否めません。どちらも対人に強く、カバーリングもできる優れた選手ではあるのですが……。その意味で闘莉王選手の高さは攻撃のオプションにもなります。

 ワントップにベストなのは本田

二宮: ザックジャパンでは、ワントップが誰になるかも注目されています。小島さんがワントップにふさわしいと考える選手は?
小島: 本田圭佑選手ですかねぇ……。

二宮: ほお、その心は?
小島: やはり、ボールが収まりますからね。南アフリカW杯で岡田武史監督が本田選手をワントップに起用した時は「どうして?」と驚きました。しかし、彼のように絶対的な強さを兼ね備えたセンターフォワードは、今の日本の選手ではいないように感じるんです。

二宮: 確かに、本田選手はシュートの精度に定評があります。
小島: 本田選手は強いシュートも打てますし、相手のGKの体勢が崩れている場合は、必要以上に強いシュートではなく正確なシュートを打てる。ACミランでのリーグ戦初ゴールもそうです。あの場面で足を振って強いシュートを打ちにいっていれば、その間にGKに触られるか、GKの体に当たっていたと思います。でも、本田選手は足でちょんと突いただけ。決定的な場面での落ち着きはさすがですよ。

二宮: 本田選手が前線でキープすれば、香川真司選手や岡崎慎司選手といった2列目の選手も生きてくるでしょうね。
小島: そういった選手が裏に飛び出していったり、逆に本田が外側に開いて、サイドの選手が中央に入ったり。ワントップにボールが収まることで、かなり多彩な攻撃ができると思います。もちろん、本田選手はポストプレーヤーとしての仕事のみならず、ゴール前にも入っていける。そうなると、ワントップとしての総合力に長けているのは、本田選手なのかなと。

 背番号1のジンクス

二宮: 小島さんの専門のGK争いはどうですか?
小島: やはり川島永嗣選手が本命ですね。ベルギーリーグでW杯に出場するレベルに近い選手といつも対戦していることは大きなアドバンテージでしょう。

二宮: 川島選手は前回大会直前に正GKの座を射止め、その後も代表で不動の地位を築いています。
小島: そうですね。ただ、日本代表GKにはおもしろいジンクスがあって、W杯で背番号1をつけたGKはまだ一度もピッチに立ったことがないんです。

二宮: へえ!
小島: 証拠として、フランスW杯の時は、僕が1番でした(笑)。あの時は川口能活選手が正GKを務めました。日韓W杯では川口選手が背番号1をつけましたが、レギュラーとしてプレーしたのは楢崎正剛選手。ドイツW杯はその逆で、南アフリカW杯は楢崎選手が背番号1でしたが、直前で川島選手がレギュラーに抜擢されました。実は、背番号1はW杯のピッチに縁がないんです。

二宮: 不思議なジンクスもあるものですね。
小島: 僕も教えてもらって気がついたんです。この情報を川島選手が知って、「背番号は1番以外にしてほしい」ということになればおもしろいなと思っているんですが(笑)。

二宮: GKはポジションがひとつですから、レギュラー争いは厳しいものがあります。小島さんは、フランスW杯で控えという立場でしたが、モチベーションを維持するのは大変だったでしょう?
小島: 僕の場合、「代表に選ばれるまでの方が大変」と割り切れていました。おそらく、僕がそういう考え方の人間だから、W杯メンバーにも残れたのだと思います。もちろん、試合のメンバー発表まではアピールはしました。しかし、「なぜ試合に出さないんだ」と監督を恨むことはなかった。不満分子の人間がいたら、和が乱れてしまって、チームとして成り立ちませんからね。

二宮: そうは言っても、W杯メンバー発表までは気が気ではなかったでしょう?
小島: フランスW杯の時は、登録メンバーが現在の23人ではなく、22人だったんです。その中で、GKを2人にするか、3人にするか、いろいろ議論があったようです。ですから、発表直前にはまあ、たくさんの取材を受けました。「小島さん、そろそろメンバーが発表されますが、心境はいかがですか?」と。メディアは、落選しそうな選手のところに取材に来るんですよね(笑)。

二宮: 聞く方も聞かれる方も嫌でしょうねぇ(笑)。
小島: いざ僕がメンバーに入ると、もう取材なんて来なかったですよ(笑)。

 フランスW杯にあった特別な思い

二宮: 日本にとってフランスW杯は初めての夢舞台でしたが、大会を戦う上で、小島さんに緊張や重圧はなかったですか?
小島: ワクワクした気持ちと、「こんなものなんだ」という気持ちがいろいろありましたね。テレビで見ていた大会なので、もっとすごいものを想像していたのですが、意外とそうでもなかったんです。もちろん、対戦相手は素晴らしいんですよ。世界の一流選手が、国の威信をかけて向かってくる。でも、グラウンドに入ったら、意外とスタジアムが……(苦笑)。

二宮: わかります。私も現地で取材しましたが、どこにでもあるようなスタジアムでしたよね(笑)。
小島: そうなんですよね(笑)。あとは、日本のサポーターがたくさん応援に来てくれた。ですから、少し雰囲気の違う国立競技場というイメージでした。おかげで、僕は平常心で大会に臨めていました。

二宮: 印象的なスタジアムと言えば、フランスW杯のアジア第3代表をイラン代表と争ったジョホールバルのラルキン・スタジアム。あそこもローカルな感じでしたね。
小島: そうですね。でも、あの時はそこまで考える余裕はなかったですよ(笑)。僕はメンバー外だったので、他の選手と一緒にスタンドで観戦していましたが、延長戦に入った時に、「行こう!」と。IDカードを見せて、ベンチの後ろで「Vゴールだよな?」と言いながら試合を見つめていました。

二宮: アジア最終予選では、4戦目でカザフスタンと引き分けた後に加茂周監督が更迭され、ヘッドコーチだった岡田武史さんが昇格しました。あの電撃解任の時のチーム状況はどのようなものでしたか?
小島: かなりのショック療法だったと思います。しかし、もう決まったことだから、選手たちはやるしかない、という状況でしたね。

二宮: 小島さん自身は?
小島: だいぶ、精神的に追い込まれていましたね。あんなにしんどい思いをしたのは、ザスパ草津(現群馬)でJFLに昇格する時と合わせて人生で2度くらい。W杯出場がかかる重苦しい雰囲気の中で、サッカーをやっていて初めて楽しくなかったです。サッカーは、勝っても負けても楽しいもの。楽しさをなかなか感じられなかったのがW杯の予選ですね。

二宮: 見ている側にも、あの重苦しい雰囲気はヒシヒシと伝わってきました。
小島: やはり“ドーハの悲劇”があって、2002年には日韓W杯の開催が決まっていたので、フランスW杯には特別な思いがありました。というのも、W杯初出場が「開催国枠で予選なし」というのが絶対に嫌だった。この思いは僕だけではなかったと思いますよ。

二宮: それだけにW杯出場権を得た時には込み上げるものがあったでしょう。
小島: もう、解放感の一言ですね。試合中に何度、岡野雅行君に「決めろよ!」と思ったことか(笑)。でも、あの試合は最後に岡野君が決めて本当によかったですよね。

 PKでの駆け引き

二宮: ブラジルW杯に話を戻しますと、決勝トーナメントに進めば、PK戦を行う可能性も出てきます。GKは試合前にビデオなどでキッカーのクセを研究したりするようですね。
小島: そういうことができればやりますね。元ドイツ代表GKのイェンス・レーマンなどはストッキングにデータを書いた紙を入れて、PKの前に確認していました。ただ、データを活用するにも、キッカーのタイプを見極めないといけません。

二宮: キッカーのタイプですか?
小島: たとえば、遠藤保仁選手とゴンちゃん(中山雅史)はまるでタイプが違います。ゴンちゃんはどちらかと言うと“決め打ちタイプ”。ボールをセットする前に蹴る方向を決めているんです。右に蹴ると決めた時には、どんな助走をしようが、GKがフェイントをかけようが、右にシュートを打つ。決め打ちタイプの選手にいろいろな駆け引きをしても、どうしようもないわけです。ですから、シュートの方向に反応することを第一に考えないといけません。それが、遠藤選手のように、最後までGKの動きを見るタイプのキッカーだと、先に動いたら逆をとられてしまう。

二宮: 遠藤選手の“コロコロPK”の餌食になってしまうわけですね。
小島: そういうことです。逆に、GKの動きをずっと見ている選手には、こちらからフェイントを仕掛けるんです。

二宮: 小島さんはPKの時にどのようなフェイントを?
小島: 僕は、アルゼンチン代表のセルヒオ・ゴイコチェアを参考にしていました。彼がやっていたのは、キッカーが蹴る瞬間に、たとえば右に動いて1度止まり、再び右へ飛ぶというフェイント。90年イタリアW杯で、準々決勝・ユーゴスラビア戦、準決勝・イタリア戦のPK戦で、ゴイコチェアのフェイントに相手選手がおもしろいように引っかかっていました。

二宮: 相手に「一度止まったから逆に飛ぶだろう」と思わせるわけですね。
小島: 世界の舞台ではすごく細かいところまで駆け引きしているというのがよくわかりましたね。ゴイコチェアの映像を見た次の日、練習でベッチーニョに試してみましたが、見事に引っかかりました(笑)。

二宮: 有効なフェイントじゃないですか。ブラジルで戦う日本代表選手にも伝授した方がいいのでは?
小島: どうですかね(笑)。このフェイントは同じ相手に1度しか使えないんです。名古屋でプレーしていた時のピクシー(ドラガン・ストイコビッチ)にも1回は通用しましたが、次の機会にはまったく惑わすことができませんでした。

二宮: 練習試合などで敢えて逆に飛んでおいて、本番では違う動きをするという戦略もあるのでは?
小島: スカウティングで入ってきた情報を生かしたり、これは漏れているだろうなというクセを逆手にとったり……。データを有効活用できるに越したことはないでしょうね。

小島伸幸(こじま・のぶゆき)
1967年1月17日、群馬県生まれ。新島学園高―同志社大―平塚(フジタ時代含む)―福岡―草津。平塚では94年からレギュラーとしてプレーし、同年の天皇杯制覇に貢献。99年に福岡へ移籍。02年からは故郷にある当時は群馬県1部に所属していた草津(現群馬)へ。04年、草津をJ2昇格へと導き、翌シーズン限りで現役を引退した。日本代表には95年に初選出され、同年6月のアンブロ杯ブラジル戦でA代表デビュー。その後もコンスタントに招集され、98年フランスW杯メンバーにも選出された。現在は解説者としての活動のみならず、08年から日本大学サッカー部のコーチも務めている。12年にはJFA公認S級コーチライセンス取得。身長187センチ。J1通算239試合、J2通算23試合、国際Aマッチ通算4試合出場。

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

長期に渡り、樫樽の中で貯蔵熟成した長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」。豊かな香りとまろやかなコクの深い味わいが特徴。また、ソーダで割ると樫樽貯蔵ならではの華やかなバニラのような香りとまろやかなコクが楽しめます。国際的な品評会「モンドセレクション」2014年最高金賞(GRAND GOLD QUALITY AWARD)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
Suginoko(すぎのこ)青山店
東京都港区北青山3−8−12 3階
TEL:03-3797-7758
営業時間:11:30〜14:30(月〜金のみ)、17:30〜23:30(22:30ラストオーダー、年中無休)

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 小島伸幸さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」(720ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「小島伸幸さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は6月12日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回の小島伸幸さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・鈴木友多/写真・杉浦泰介)


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