元世界王者の胴廻し回転蹴りがことごとく空を切り、準決勝で姿を消した。5月17〜18日、大阪府立体育会館にて新極真会主催、第25回オープントーナメント・全日本ウエイト制空手道選手権大会が開催され、男子軽量級で山野翔平が初優勝、中量級・山田一仁が4連覇を果たし、重量級・野本尚裕が6年ぶり2度目の優勝を果たした。また女子では軽量級・兼光のぞみが2連覇、中量級・佐藤弥沙希が全日本、ワールドカップに続き3冠を果たし、重量級・将口恵美が2連覇を果たした。
(写真:各階級優勝者。前列左から兼光のぞみ、佐藤弥沙希、将口恵美、後列左から山野翔平、山田一仁、野本尚裕)
 今大会は来年6月にロシアのサンクトペテルブルクにて開催される体重別世界大会「第4回カラテワールドカップ」の日本代表選抜戦でもあり、各階級で男子上位2名、女子優勝者が代表の座を掴むこととなる。今大会でもっとも世界への切符に手が届く立場にあったのは、第1回カラテワールドカップ、第6回全世界大会を制している塚本徳臣であった。

 重量級準決勝、塚本は本戦で渡辺大士の膝蹴りを顔面に浴び、下段蹴りで大きく膝を落とす苦しい展開となった。起死回生の胴廻し回転蹴りを試みるが、間合い不十分で、空を切る展開が続く。本戦終了後、渡辺に4本の旗が上がり、塚本は準決勝で姿を消した。
「塚本先輩に勝てて、満足してしまったことが、油断につながったのかもしれません」。そう振り返った渡辺は、決勝戦で野本尚裕の執拗な中段突きからの下段回し蹴りに動きを止められ、判定勝利で野本の手が挙がった。
(写真:重量級決勝戦、下段回し蹴りで攻める野本(左))

 中量級は、準決勝で保本学を上段膝蹴り1発で沈めて勝ち上がった島本一二三と、下段蹴りが冴える山田一仁の対戦となった。本戦から山田の中段突きと下段回し蹴りが島本をとらえる。延長戦、山田はさらに連撃の回転を速め島田を防戦一方に追い込み、判定勝利で4連覇を果たした。

 軽量級は、昨年3位の岩原弘和と、腸閉塞による70cmもの腸の摘出から蘇った不屈の男、山野翔平の対決となった。延長戦で胴廻し回転蹴りの大技を狙う岩原に対し、山野は体重の乗った重い中段突きの連打で岩原を後退させる。さらに下段回し蹴りで岩原を追い詰め、判定勝利で初優勝を果たした。

 優勝者たちの気持ちは、早くも来年6月のカラテワールドカップに向かっていた。2001年6月、ハンガリー・ブタペストで開催された第2回カラテワールドカップでは、男子3階級、女子2階級中、日本勢が優勝したのは軽量級の宮野考裕のみ、男子重量級に至っては4位まですべてを外国勢が占めるという苦杯を舐めさせられた。2005年の第3回大会は日本開催ということにも助けられ、王座を奪い返すことができたが、来年はロシアでのアウェーでの闘いとなるため、苦しい戦いが予想される。

 国技である大相撲は外国人力士が横綱の地位を占め、武道である柔道は不可解な判定に日本勢が苦しめられ、柔道からJUDOへと変貌しつつある。そんな状況の中、空手だけは永久的に日本が世界をリードしていきたい、というのは多くの空手家の願いである。
 空手母国日本の威信を守ることができるのか? ロシアでの戦いはすでに始まっている。

大会結果
<男子軽量級>
優勝 山野翔平(福岡支部)
2位 岩原弘和(横浜木元道場)
3位 森川琢也(厚木赤羽支部)
4位 河瀬俊作(佐賀筑後支部)

■山野翔平選手のコメント
「試合は1年ぶりでした。手術後は歩くことさえきつかったが、ゆっくりと休んで、いろいろ考えることができた。今までは、ただ練習をやっていたという感じだったが、突き方、蹴り方、戦い方の一つ一つを考える時間ができた。病気になる前と後とでは、今のほうが調子がいいです」

■岩原弘和選手のコメント
「今日の大会を振り返って、納得していない部分がたくさんあった。悪い部分をもっと直したい。パンチがもっと出せていたら、もみくちゃにならずに戦えていた。ワールドカップに向けての課題は、突きがもっと出せるように、また今の技に磨きをかけ、倒せる技を身に付けたい」

<男子中量級>
優勝 山田一仁(兵庫明石道場)
2位 島本一二三(広島支部)
3位 島本雄二(広島支部)
4位 保本学(横浜木元道場)

山田一仁選手のコメント
「試合前は、いつも熱くなりすぎるところがあったが、今回は試合前、頭の中がすっきりとして、冷静に戦うことができた。ワールドカップに向けて、今まで自分がやって来た稽古に間違いはないと確信した。今後は短所を克服して、全体のレベルアップをしたい」

■島本一二三選手のコメント
「ワールドカップへの出場を決めたことで、ひとつの壁を越えることができた。ワールドカップ優勝という、もうひとつの壁を越えたい」

<男子重量級>
優勝 野本尚裕(愛媛支部)
2位 渡辺大士(福岡支部)
3位 塚本徳臣(世田谷杉並支部)
4位 森健太(福岡支部)

■野本尚裕選手のコメント
「今大会はいつもよりも緊張した。大会前にやらなければいけないことが、やれていなかったことが緊張につながったと思う。今の自分がこのままワールドカップに行っても、外国人には太刀打ちできない。この1年が勝負です」

■渡辺大士選手のコメント
「終わってほっとしています。塚本先輩に勝ててワールドカップ代表になれたことは、自信につながりました。ウェイトトレーニングをして、走り込みをしてパワーアップしてワールドカップに臨みたい」

<女子軽量級>
優勝 兼光のぞみ(兵庫明石道場)
2位 福田美み子(群馬支部)

■兼光選手のコメント
「2連覇はあまり考えなかった。スタミナをアップし、技術を磨くという普段通りの練習をしていたことが結果につながったと思う。ワールドカップはアウェーでの戦いなので、相手に効かせて倒さないと勝てない。右足の怪我を治してしっかりと練習したい」

<女子中量級>
優勝 佐藤弥沙希(和歌山支部)
2位 増子麻理(厚木赤羽支部)

■佐藤弥沙希選手のコメント
「ワールドカップはロシアでのアウェーでの戦いなので、五分五分なら相手に旗が上がってしまう。圧倒的に勝たなければならない。パワーアップのために取り組んでいるウェイトトレーニングの効果が今大会で出ていたので、今後も続けて行きたい」

<女子重量級>
優勝 将口恵美(愛知山本道場)
2位 上池晃代(香川原内道場)

■将口恵美選手のコメント
「ワールドカップでは、多分私が体が一番小さいでしょう。しかし日本重量級の代表として、海外の選手には負けたくないです。下段回し蹴りが得意ですが、もっといろんな技を自然に出せるように練習したい」


(上間伸浩)