『K-1』、日本で復活!
 そう感じるに十分な熱いイベントだった。
 11月3日、東京・代々木第二体育館で開催された『K-1 WORLD GP 2014 IN JAPAN』のことである。
(写真:4000人を超すファンが会場を埋め尽くした (C)M-1 Sports Media)
 K-1のフレーズがテレビから消えて久しい。私の記憶に残っている最後の大会は、2010年12月11日、有明コロシアム大会(K-1 WORLD GP FIMAL)。この時、アリスター・オーフレイムがピーター・アーツを決勝で破り、優勝を果たしている。いや、その後、一度だけ、日本国内においてK-1と名のつくプロの大会が開かれた。

 2012年10月14日に両国国技館で、新運営会社『K-1 Global Holdings Limited』の主催で『K-1 WORLD GP FINAL16』が開かれ、メインエベントはミルコ・クロコップが登場したが、それは寒々しい大会だった。「これがK-1なのか……」。そんな声が漏れるほどに。ここから日本でのK-1が復活してくれればと、私も願ったが、想いは叶わなかった。観客も少なく、またファイトのレベルも決して高いとは言えず、かつてのK-1のような熱は生じなかった。

 だが、今回の11.3代々木決戦は違った。
 ヘビー級を中心としたK-1ではないが、かつて魔裟斗を中心に中量級が躍動した熱さを存分に醸していた。

 日本を代表するキックボクサー、HIROYA、左右田泰臣、山崎秀晃、久保優太が、−65キロ級トーナメントにおいて海外強豪選手を迎え討つ。チケットはソールドアウト、満員の観衆が見守る中、死闘が演じられた。

 決勝は左右田とゲーオ・フェアテックス(タイ)の顔合わせ。ゲーオは、この日の勝ち上がりの2勝を含めて、対日本人13戦無敗の元ルンピニースタジアム・フェザー級チャンピオン。準決勝で久保をKOした勢いそのままに左右田にも判定完勝。新生K-1の「初代−65キロ級チャンピオン」のベルトを腰に巻いた。
(写真:ハイキックを繰り出すなど決勝は手数で勝ったゲーオ (C)M-1 Sports Media)

 ベスト4に日本人が3人(HIROYA、左右田、久保)も勝ち上がりながら王座を海外選手に持ち去られたことを残念がる向きがあろうが、今回に限っては、ゲーオが勝ってよかったと私は思う。

 やはり強い外国人選手の存在がK-1を熱くする。1993年4月の第1回K-1グランプリでは、ブランコ・シカティック(クロアチア)が優勝。2002年5月のK-1 WORLD MAXの第1回−70キロ級トーナメントを制したのは、アルバート・クラウス(オランダ)だった。強い外国人ファイターに対して、日本人選手が熱く向かっていく。その中での闘いのレベルも上昇し、さらにリングが熟成していった。それがK-1の歴史だ。−65キロ級においては今後、「打倒! ゲーオ」がテーマとなった。これで闘いが、さらに面白くなる。

 さて、K-1の次回大会が、すでに決定している。来年1月18日(試合開始16時)、場所は今回と同じ代々木第二体育館。ここで繰り広げられるのは「−60キロ級・初代王座決定トーナメント」だ。さらなる熱き闘いを、そしてK-1の完全復活を期待せずにいられない。


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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン 〜人種差別をのりこえたメジャーリーガー〜』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『忘れ難きボクシング名勝負100 昭和編』(日刊スポーツグラフ)。
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