決定した会場は北海道が1つ、東北が1つ、関東が3つ、中部が2つ、近畿が2つ、九州が3つ。中国・四国からは1つも選ばれなかった。無理もない。ハナっから開催都市に名乗りを上げなかったのだから……。
 2019年に日本で行われるラグビーW杯の開催都市が決定した。日本選手権で7連覇を達成した新日鉄釜石の流れをくむシーウェイブスの本拠地・釜石市(岩手県)が選出されたのは、震災からの復興のシンボルとして多数から支持を得よう。九州から3都市が選ばれたのは、ラグビー熱の高さを反映してのものだろう。

 置いてきぼりをくらったのは中・四国である。日韓が共催した13年前のサッカーW杯を思い出す。最終的に国内14自治体で開催会場を巡る熱戦が繰り広げられたが、中・四国はかやの外だった。選考作業の最中は、当時のFIFA会長ジョアン・アベランジェの「平和都市でW杯を開催したい」との意向もあり、広島ビッグアーチ(現エディオンスタジアム広島)での開催は決定的とみられていた。

 ところが、FIFAが基準に定めていた屋根の設営に広島市が予算をつけなかったため選考から外れ、新潟が逆転で当選したという経緯がある。当時の日本サッカー協会副会長・川淵三郎は講演で「もし、広島のビッグアーチがFIFAの基準通りに屋根をつけていたら、新潟の代わりに開催地に選ばれていた。そうしたら、ビッグスワンなどできず、新潟は今もなお“サッカー不毛の地”になっていたかもしれない」と語っている。

 広島ビッグアーチは94年に首都以外では初めて開催されたアジア大会のメーンスタジアムとして建設された。将来の国際大会招致をにらんだものだったことは言うまでもない。

 ところが19年ラグビーW杯開催都市立候補は改修に時間がかかることや、その間、他競技が使用できなくなることを理由に見送られ、国外代表チームのキャンプ地誘致を目指すという。何とも腰の引けた対応だ。四国にいたっては02年のサッカーW杯同様、立候補に名乗りを上げる自治体すら現れなかった。

 このご時世、いたずらにハコモノをつくればいいというものではない。建設計画よりも運用計画の方が大事だと私は思っている。しかし、サッカーもラグビーもW杯本番の熱気とは無縁という中・四国の状況は、レガシーの面で、いささかの寂しさを禁じ得ない。

<この原稿は15年3月4日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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