わたしには以前から苦々しく思っていることがあて、それは、W杯が近づいてくると、Jリーグを取り上げる大メディアの報道がことごとく「この選手は代表に選ばれるか否か」という視点で塗りつぶされてしまうことだった。
 それが、今回はW杯の3年前から始まってしまった。

 クラブ史上初めてJ1に上がってきた松本山雅の奮闘や、昨年のJ2を圧倒的な強さで勝ち上がってきた湘南の躍進など、今季序盤のJリーグは実に見どころが多い。先週末で言えば、鳥栖のキム・ミンヒョクが永久追放になってもおかしくない反則を犯すという重大なニュースもあった。十分な戦力を揃えながら最下位にあえぐ名古屋なども、欧州であれば大きな見出しになるトピックである。

 Jリーグ自体が関心の対象なのであれば。

 だが、代表チームを最大の人気チームとし、その人気に頼った舵取りをしてきた日本の場合、決して少なくない人にとってのJリーグは、代表に選ばれる選手たちのパドックにすぎない。大切なのは「そこで何をするか」ではなく「本番(代表)で何をするか」なのである。

 結果、多くのメディアは、Jリーグの結果や内容を伝えるよりも、ハリルホジッチ監督の動向と“御前試合”で活躍した選手ばかりに焦点を当てている。

 こんなことが続いていけば、Jリーグはいよいよ日本代表の付属物にすぎなくなってしまう。これは非常に危ない。

 昨年のW杯、連覇を期待されたスペイン代表は惨敗を喫した。イングランド代表の結果も無残だった。では、これら代表チームの敗退は、その国のリーグにダメージをもらしただろうか。観客動員を低下させ、各クラブからのスポンサー離れを招いただろうか。

 欧州のほとんどのサッカーファンにとって、代表チームはデザートであり、別腹のようなものである。おいしいに越したことはないし、欲する気持ちもある。ただ、メインディッシュはあくまでも毎週末に応援するチームであり、その愛情や情熱は代表の結果に左右されるものでは断じてない。

 これは決して、特殊な考え方ではない。ひいきのチームを持つ野球ファンであれば、すんなりとおわかりいただけるのではないか。小久保監督率いる侍ジャパンの結果が、自分のチームを応援することにどれほど影響を及ぼすか――。

 ACLでの日本勢の苦戦を考えると、近い将来、日本がW杯や五輪に出場できない時はきっとやってくる。それでも揺らがないJリーグにするためにはどうするべきなのか。いまから考えておく必要があるとわたしは思う。

<この原稿は15年4月9日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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