スポーツの故障予防には入念なウォームアップやケアが欠かせない。アップにより、筋肉が伸縮を繰り返すことで血流が促され、筋温が上昇する。筋温が低いまま、急に動かすと肉離れなどのトラブルが起きやすくなる。

「筋肉はもちろん、スポーツをする上では関節の故障も少なくありません。関節が動きやすい状態をいかにつくるのか。その点でバイオラバーの良さを知っているアスリートが増えてきています」

 山本化学工業の山本富造社長は、スポーツ界への働きかけについて、こう語る。バイオラバーはこれまで紹介してきたように、電力や加熱を必要とせず、赤外線の力で体を内部から温める。膝や足首、手首にサポーターとして巻けば、関節周りの体温が上がり、故障予防につながるというわけだ。

 アップだけでなくケアに関してもバイオラバーは有効だ。
「激しい運動で炎症を起こしている部分にバイオラバーを装着することで血流を促します。万が一、故障をした場合も、固定したままの状態が続くと血流が滞ってしまう。バイオラバーを周辺に巻くと血流も良くなり、回復を早める方向に持っていけます」

 山本科学工業のバイオラバーや、ウェットスーツなどのラバー素材はやわらかく、体の動きを妨げないのが大きな特徴だ。「包み込まれているような安心感がある」と、深海に潜るフリーダイバーや、海を職場とする海女に同社のラバー素材は愛用されている。

 今回、このラバー素材の秘密を解き明かす、おもしろい実験結果が出た。京都工業繊維大の繊維科学センターの浦川宏センター長による3次元測定によって、他の繊維素材とは異なる特徴が表れたというのだ。

「通常の繊維素材は縦と横の二軸で構成されていますから、縦、横、高さの3次元で同時に引っ張ると、逆S字カーブを描くそうです。ところが我々のラバー素材で実験したところ、J字型のカーブを描く結果が出たんです」

 山本社長が浦川センター長から聞いた話によると、「人間の皮膚も同様のJ字型カーブを描く」とのこと。
「つまり、この実験結果が正しければ、我々のラバー素材は人間の皮膚の動きに近いということが科学的に証明できるのではないかと考えています。着用する人にとって動きやすく、違和感のないものを追求してきた方向性が間違っていなかったことになります」

 山本化学工業では高機能ラバー素材を「第2の筋肉」と位置づけ、利用者のパフォーマンスを引き出し、向上させるツールとして開発、改良を進めてきた。
「体と同化して拒否反応がないからこそ、“安心感がある”という実感につながるのでしょうね。“安心感”の秘密が理解できた気がします」

 山本社長は自社のラバー素材に自信を深めている。科学的な裏付けをもとに、より体と一体化し、動きをサポートする素材づくりへ、すなわち「第2の筋肉」を進化させていく計画を加速させるつもりだ。

 山本化学工業株式会社