世界フライ級タイトルマッチ(30日、代々木第一体育館)で防衛を果たしたWBC王者内藤大助(宮田)、WBA王者坂田健史(協栄)が、試合から一夜明けた31日、それぞれ所属ジムで会見を行い、心境を語った。両王者が大方の予想通りに防衛したこともあって、話題の中心は内藤の試合後、リングに乱入した亀田興毅だった。特に金平桂一郎協栄ジム会長は、亀田のパフォーマンスを「茶番」と切り捨て、怒りをあらわにした。
(写真:亀田乱入に怒りをぶちまける金平会長と冷静な坂田)
 事の発端は亀田が内藤の勝利者インタビュー中にリングに上がり、「次、俺とやろう」と対戦要求をしたこと。これが金平会長の逆鱗に触れ、金平会長は1時間以上にも渡り、“亀田乱入”について厳しく言及した。
「亀田はWBAの1位なのだから、WBA王者の坂田と試合をするのが当然の流れではないか。今回のタイトルマッチが終われば、オファーを出そうと思っていたし、予定通り近日中に(オファー)出します。もし対戦を拒否して内藤選手と戦うことになれば、内藤の方が与しやすしと考え、坂田から逃げたと判断せざるを得ない。
 マッチメイクは正式な手続きを踏んで、交渉を重ねるもの。試合後のリングで決めるなんて筋が通っていない。これが認められれば他の選手もマネするのではないか。亀田だから許されるとしたら絶対に間違っている。
 ダブルメーンイベントとして登場したリングで、ないがしろ(坂田がいないところで話をすすめたこと)にするやり方は坂田に対する冒涜だ。内藤、亀田の興業なら文句はないが、昨日は共同開催だった。同じリングに上がる者への配慮に欠けるのではないか」
 そして金平会長はこう付け加えた。「リングで誰が一番強いかを決めればいい。内藤選手にも“ノンタイトルで構わないから”と対戦要求を出した。私は坂田が最強だと信じている」。4度目の防衛成功にも、ボクシングに派手さがなく、パフォーマンスにも無縁な王者がスポットライトを浴びないことに納得いかない様子であった。

 坂田は久高寛之(仲里ATSYMI)を判定勝利(3−0)で下した一戦について「空振りが多かったので、もっと落ち着いて試合をすべきだった」と反省した。しかし、初回から前に出続けたことについては「スロースターターの汚名を返上できたかな」と満足げな様子。亀田に話題を独占されたことには、「誰の会見なんでしょうね」と笑顔で対応してみせた。

 一方、WBCのベルトを死守した内藤は清水智信(金子)戦を振り返り、「作戦ミスだった」と劇的な逆転KOにも不満気な表情を浮かべた。今回は変則を警戒する挑戦者の裏をかいて、ワンツー主体で戦うことを選択。その様はアマチュア仕込みのアウトボクシングを展開する清水と比較すれば、“異様な”オーソドックスに映った。内藤の動きにはいつもの躍動感がなく、スピードも感じられない。しかし、ポイントを奪われはしたものの、終盤に得意の左フックでKOでしとめ、キャリアの厚みをみせつける結果となった。
(写真:3度目の防衛成功に安どの表情を浮かべる内藤)

 今後について内藤は「ボクシングのボの字も考えたくない。ゆっくり旅行にいって家族サービスします」と1カ月の「完全オフ」宣言。「年内にもう1試合やりたい」と休養明けの構想も明かした。そうなると対戦相手候補には当然亀田の名前が浮上する。昨夜の対戦要求に「やるぞー」と返事したことについて、「ファンサービスも込めて、空気を読んでやったこと」と説明した。また、「亀田兄弟はボクシングを世間に広めた存在。いき過ぎは許されないがプロとしてパフォーマンスすることには賛成」とファンを第一に考える内藤らしいコメント。突然の対戦要求にも「お客さんが喜んでくれたなら」と不快に感じなかったようだ。

 宮田博行会長は昨夜の思わぬ苦戦にも、「最後の1秒でも倒せる練習をしてきたので、自信をもって見ていられた」と振り返った。次戦については「オファーのある選手をピックアップして、内藤が有利な選手を選びます。1度でも多く防衛させたいので」と亀田戦や坂田との統一戦よりも「防衛」が最優先であることを強調。会見の最後には愛弟子に対し「心から尊敬するチャンピオンです」と感慨深げに語った。