14日、ボクシングの世界ダブルタイトルマッチ(16日、代々木第一体育館)の調印式と記者会見が都内ホテルで行なわれ、WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(真正)ら4選手が出席し、試合への意気込みを語った。長谷川は「ドロドロになっても、ボコボコになっても勝ってほしい」と同じリングで世界初挑戦に挑む“弟分”粟生隆寛(帝拳)にエールを送った。
(写真:挑戦者バルデス(左)とV6王者長谷川(右))
 日本が誇るサウスポー2選手がメキシコの強敵を迎え撃つ。
 V6王者長谷川は同級2位のアレハンドロ・バルデスの挑戦を受ける。去る6月に初のKO防衛を果たした長谷川は、持ち味であるスピードとタイミングはもちろん、パンチ力向上にも磨きをかけた。さらに今回はプライベートでも仲のよい粟生とのダブル世界戦ということもあり、モチベーションも高い。
 懸念材料を挙げるならば、バルデスが長谷川が“苦手”と公言するサウスポーであること、身長で5.8センチ、リーチで9.2センチ上回ることか。これに対して山下正人真正ジム会長は、「長谷川の方が踏み込みのスピードがあり、距離を潰せるため体格差は問題ない。サウスポー対策もスパーリングで準備した」と意に介さない。
「練習は完璧。この試合に勝つことでもう一段階強くなった自分がみられるはず」との長谷川の発言にも試合に対する自信が見てとれる。長谷川の日本人史上5人目、現役王者では最多となるV7達成への視界は良好だ。

 対するバルデスは世界初挑戦となる左ボクサーファイターだ。これまで身長173センチ、リーチ182.5センチのバンタム級では恵まれた体躯を生かして4年間負けなし。軽快なフットワークを用い、オーソドックスに右ジャブから直線的なパンチを放つ。2日後に迫った決戦に向けてバルデスは「チャンピオンには素晴らしいスピードがある。しかし私たちはメキシコで、それに対処するためのトレーニングを積んできた」と意気込みを語った。

 一方、史上初の「高校6冠」を達成した日本ボクシング界のホープは満を持して世界に挑む。無敗(16勝8KO1分)で大舞台に辿り着いた粟生はWBC世界フェザー級王者のオスカー・ラリオスのベルトを狙う。粟生は憧れのWBCのベルトを目の当たりにして、「やはりかっこいいですね。次に会見をやる時には僕の目の前にあるでしょう」と王座奪取に自信を見せた。さらに、「アウトボクシングでいくか、インファイトでいくかは状況をみて判断します。相手がパンチを出す前に合わせる練習はしてきたし、出したところに合わせる技術は持っている」。“兄貴分”長谷川と同じ24歳での初戴冠のイメージはできている。
(写真:2階級王者ラリオス(左)と日本のスーパーホープ粟生(右))

 相手のラリオスはWBC世界スーパーバンタム級王者を9度も防衛した実力者だ。31歳となりベテランと呼ばれる現在も、チャンスでの手数の多さ、プレスの強さは健在だ。何より粟生の4倍以上の豊富なプロキャリア(63勝42KO6敗1分)は驚異的である。「体調が万全なので観客が満足する試合をお見せできるだろう」と対日本人4戦全勝を誇る「日本人キラー」は冷静に語った。粟生がベルトを巻けば、9月に戴冠した同門の西岡利晃に続く7人目の現役日本人王者となる。