2008年の総合格闘技を締めくくる「FieLDS Dynamite!! 〜勇気のチカラ2008〜」が12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催された。メインイベントとなった田村潔司(U-FILE CAMP)と桜庭和志(Laughter7)の一戦は、グラウンドでの膠着状態が続き、決着は判定へ。上に乗って何度も桜庭の顔面に拳を振り下ろした田村が3−0で12年ぶりの対決を制した。
(写真:上をとって桜庭を攻撃する田村)
「最後にサク(桜庭)と(観客に)伝わらない試合をして申し訳ない」
「どうせ負けるなら、完全にKOとか一本とられたほうが良かった」
 注目の田村vs.桜庭は勝者も敗者もスッキリしない年越しとなった。UWFインターナショナルの先輩後輩、そして日本でプロレスから総合格闘技の道を切り開いてきた両ファイターの歴史的対決。ファンにとっては、これまで幾度となく浮上しながら実現しなかった夢の対決だった。

 試合は立ち上がりから桜庭がタックルを試み、グラウンドでの勝負を挑む。「それが田村の戦いだから」。因縁の相手を意識した試合展開だった。しかし、試合時間のほとんどをマットに背をつける苦しいファイトとなった。顔面に無数のパンチをくらい、スタンドでも田村のローキックを受けて、ぐらつく場面が見られた。

 一方の田村も有利な体勢になりながら決め手を欠いた。「見た目は膠着していたようにみえたが、相手は体重を使ったコントロールがうまい。駆け引きの攻防だった」。ポジションが逆転しないよう、危なげない試合運びに終始した。「メインとなると、野球で言えば4番バッター。ホームランを狙わなくてはいけない。プレッシャーもあって、重くなった」。試合後にはセコンドから、「もう少し(積極的に)行っても良かったのでは?」と指摘を受けたという。
(写真:質問に考え込むシーンもみられた田村)

「お互いダメだったので、またいつかお願いします」(田村)。あれほど対戦まで紆余曲折のあった両者が、拳を交えた後は再戦を希望した。近いうちに再びリングで完全決着をはかる日がやってきそうだ。

 “悪童”バダ・ハリには正義の鉄槌が打ち下ろされた。12月6日、K−1ワールドグランプリ決勝でレミー・ボンヤスキーの顔面を踏みつけて失格となったバダ・ハリはアリスター・オーフレイム(オランダ)と対戦。顔面にひざげりを受けると、続く左フックであえなくマットに沈んだ。なんとか立ち上がったものの、再び左フックを浴びてノックダウン。わずか1R2分2秒で敗れ去った。「総合格闘技の選手のみなさま、そして総合格闘技を尊敬してくれるみなさま、これが結果です」。勝ったアリスターはマイクをとって、観客の歓声に応えた。
(写真:オーフレイムの左フックにバダ・ハリがダウン)

 “巨人”崔洪万(韓国)と強烈なキックを武器に持つミルコ・クロコップ(クロアチア)の好カードは一瞬で黒白がついた。崔が長いリーチを繰り出せば、ミルコもハイキックで応戦。互いに間合いをはかって踏み込めず、両者にイエローカードが出される展開だった。だが、2006年PRIDE無差別級を制した男は勝負どころを定めていた。「ハイキックはローから神経をそらせようと思っていただけ」。狙いすました左のローを相手の左ヒザに打ち込むと、218センチの長身はもろくも崩れ落ちた。試合後には3日にヒザの十字靭帯の再建手術に臨むことを公表。全治は6カ月から9カ月かかるとされ、9カ月ぶりの勝利にも笑顔はなかった。
(写真:「今回はケガとの戦いだった」と明かしたミルコ)

 また18歳以下のK-1チャンピオンを決める「K-1甲子園」は優勝候補と目されたHIROYA(セントジョーンズインターナショナルハイスクール)が優勝。準決勝、決勝といずれも判定ながら勝ち抜き、準優勝に終わった昨年の雪辱を晴らした。憧れの魔裟斗からチャンピオンベルトを授与された16歳は、「あんまりバカバカ打たれすぎるぞ、バカになるぞ」と厳しいエールを送られ、苦笑いを浮かべていた。
 
 大会全体を振り返るとDREAM戦士がK−1ルールで臨む不利な状況ながら、K−1勢に全勝。「バダ・ハリまで負けるとは思わなかった。でもサプライズがあったほうがおもしろいので、結果としてはよかった」。ふがいない結果にファンからブーイングを浴びた谷川貞治FEG代表は、DREAM勢の「勇気」を勝因にあげ、大会の成功を素直に喜んだ。笹原圭一DREAMイベントプロデューサーは「最後に格闘技の熱を届けられた」と激闘をみせた選手たちに感謝の言葉を繰り返した。2009年は3月にフェザー級トーナメントを開催し、年内にウェルター級、ライトヘビー級、ヘビー級と各チャンピオンシップを実施する予定だ。

 各試合の結果は以下の通り。

<K−1甲子園リザーブマッチ>
〇平塚大士(愛知県立安城農林高)
2R1分0秒 KO
×佐々木大蔵(東京都立山崎高)

<第1試合> ※DREAM無差別級 
〇ミノワマン(フリー)
1R1分1秒 足首固め
×エロール・ジマーマン(スリナム)

<第2試合> ※K−1甲子園準決勝
〇卜部功也(千葉県立岬高)
3R2分29秒 TKO(ドクターストップ)
×日下部竜也(愛知県立豊田高)

<第3試合> ※K−1甲子園準決勝
〇HIROYA(セントジョーンズインターナショナルハイスクール)
3R判定 3−0
×嶋田翔太(私立西武台高)

<第4試合> ※K−1ミドル級
〇アルトゥール・キシェンコ(ウクライナ)
3R判定 2−0
×佐藤嘉洋(フルキャスト/名古屋JKファクトリー)

<第5試合> ※DREAMライト級
〇中村大介(U-FILE CAMP.com)
1R2分43秒 腕ひしぎ逆十字固め
×所英男(チームZST)
(写真:腕十字を決めにかかる中村)

<第6試合> ※DREAMウェルター級
〇アンディ・オロゴン(ナイジェリア)
1R3分52秒 KO
×坂口征夫(坂口道場横浜)

<第7試合> ※K−1甲子園決勝
〇HIROYA
3R判定 ドロー 延長1R判定 3−0
×卜部功也
(写真:優勝したものの「反省点ばかり」と苦笑いのHIROYA)

<第8試合> ※DREAMヘビー級、PRODUCED by DJ OZMA 〜Featuring ゆでたまご〜
〇ボブ・サップ(米国)
1R5分22秒 TKO(レフェリーストップ)
×キン肉万太郎

<第9試合> ※DREAMヘビー級
〇セーム・シュルト(オランダ)
1R5分31秒 三角絞め
×マイティ・モー(米国)

<第10試合> ※DREAMウェルター級
〇桜井“マッハ”速人(マッハ道場)
1R7分1秒 TKO(レフェリーストップ)
×柴田勝頼(ARMS)

<第11試合> ※K−1ミドル級
〇川尻達也(T-BLOOD)
1R2分47秒 KO
×武田幸三(治政館)
(写真:川尻の鮮やかなヒザ蹴りに2度目のダウンを奪われた武田)

<第12試合> ※K−1無差別級
〇アリスター・オーフレイム(オランダ)
1R2分2秒 KO
×バダ・ハリ(モロッコ)

<第13試合> ※DREAMヘビー級
〇ミルコ・クロコップ(クロアチア)
1R6分32秒 KO
×崔洪万(韓国)

<第14試合> ※K−1無差別級
〇ゲガール・ムサシ(オランダ)
1R2分32秒 KO
×武蔵(正道会館)
(写真:ムサシの激しい連打でレフェリーストップ)

<第15試合> ※DREAMヘビー級、ジェロム・レ・バンナ(フランス)欠場のため、メルヴィン・マヌーフ(オランダ)に出場者変更
〇メルヴィン・マヌーフ
1R18秒 KO
×マーク・ハント(ニュージーランド)

<第16試合> ※DREAMライト級
〇青木真也(パラエストラ東京)
1R1分32秒 踵固め
×エディ・アルバレス(米国)
(写真:「(世界最強と認める)BJペンとやってみたい」。次なる目標を語る青木)

<第17試合> ※DREAMライト級
ヨアキム・ハンセン(ノルウェー)×J.Z.カルバン(ブラジル)
ハンセン、ドクターストップにより欠場のため中止

<第18試合> ※DREAMミドル級
〇田村潔司(U-FILE CAMP)
2R判定 2−0
×桜庭和志(Laughter7)
(写真:「もうちょっとやりたかった」。不完全燃焼の桜庭)