ザックジャパンのブラジルW杯事前合宿地に、米国マイアミが最有力候補に上がっているようだ。複数のメディアが報じている。

 日本がグループリーグを戦うレシフェ(対コートジボワール)、ナタル(対ギリシャ)、クイアバ(対コロンビア)はいずれも高温多湿。アルベルト・ザッケローニ監督は事前合宿地で「暑熱対策」に取り組む姿勢を打ち出していた。マイアミはこの3カ所に似たような気候であり、さらにブラジルと同じ時差という利点もある。ただ、2月に入っても正式発表に至っていないのは、ある重要事項が決まっていないからかもしれない。

 重要事項とは、すなわち練習試合の相手だ。

 4年前、岡田ジャパンは事前合宿地にスイス・ザースフェーを選んだ。南アフリカが高地とあって「高地順化」、また「サッカーに集中できる環境」を選定の条件に挙げていたが、外せなかったのが「強豪国とのトレーニングマッチ」だった。

 スイスでは他の強豪国がキャンプを張るとの情報を得ていた。そこでイングランド、コートジボワールとの対戦が実現した。結果は2連敗。特にスイス・シオンで対戦したコートジボワールには屈強なフィジカルで日本は圧倒されてしまった。

 しかし、大会直前のタイミングで強豪国の強さを肌で感じられたことが、大会初戦にカメルーンを打ち破るきっかけにもつながった。ある選手は「コートジボワールと戦ったから、『あれっ、こんなものか』と思った」と試合後に語っていたほど。選手たちが危機感を募らせた意味でも、効果があった。

 大会後、岡田武史監督はこのように言っていた。

「ボール際に勝つためにこの2年間、体幹トレーニングをやらせてきたんだけど、いくら体幹が強くなったところでボール際にいかないと意味がない。Jリーグなら(ボール際に)行かなくても通用してしまうけど、世界だとそうはいかない。やっぱりボール際に激しくいかなきゃと気づかせてくれたのがイングランドであり、コートジボワールだった。それでカメルーン戦でボール際に行ったら、全然負けていないことを証明できた。

 僕はこういった意味で以前から強いチームとやらせてくれと言ってきた。イングランド、コートジボワールとやった2試合が転機になったんじゃないかと思う」

 合宿地付近にあるクラブチームなどと単なる調整試合として済ませてしまっていれば、転機は迎えられなかったはずである。
 
 日本サッカー協会はこの南アフリカW杯の“成功体験”をもとに、選定作業を進めてきた。本大会の環境対策、サッカーに集中する、そして強豪国との練習試合。この3点セットを事前合宿地でこなせれば、ベースキャンプ地はコンディションの調整しやすい、リラックスできる場所であればいい。あとは「安全安心」「空港に近い」「いい練習場がある」などが条件になるだろうか。

 協会はベースキャンプ地を、ブラジル南東部イトゥに決定。総敷地面積約14万平方メートルある「スパ・スポーツ・リゾート」が拠点となり、天然芝のピッチが2面あるほか、プールやジャグジーなどもあるという。リラックスを目的とする意味でも、ブラジルではついていないことが多いバスタブの設備が必須条件だったようだ。空港にも約30分というアクセス。条件はほぼ満たしていると言っていい。

 あとは事前合宿地の発表を待つばかり。練習試合を2つ予定しているようで、そこで強豪国のマッチメークが可能になれば、決定にGOサインが出るに違いない。報道ではマイアミになれば対戦相手候補にナイジェリアが挙がっているという。初戦のコートジボワール戦を考えれば、かなりいい相手になるだろう。実現してもらいたいカードである。

 日本は5大会連続となるW杯出場。大会前の準備という点では、グループリーグの対戦国より優っている部分が多いと思う。抜かりのない準備ができれば、きっといい結果につながっていくはずである。

 日本がどの強豪国とトレーニングマッチをこなして本大会に臨むのか、注目したい。

(このコーナーは第1木曜日に更新します)
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