ボクシングのWBA世界フライ級タイトルマッチが7日、神戸ワールド記念ホールで行われ、挑戦者の亀田大毅(亀田)が王者のデンカオセーン・カオウィチット(タイ)を3−0の判定で破り、3度目の世界挑戦でベルトを獲得した。亀田家にとっては長男・興毅(WBC世界フライ級)に続く戴冠で、日本人初となる兄弟王者が誕生した。これで日本人男子の世界王者は史上最多タイの7人に増えた。
 新チャンピオンとして名前が読み上げられた瞬間、うれし涙が止まらなかった。
「センスも才能もないと言われてきた。頑張れたのは家族のおかげ。オヤジ、ありがとう!」
 2度の世界挑戦失敗を糧に、成長を遂げた21歳の姿がリング上にあった。

 昨年10月の挑戦ではアウトボクシンクを展開した王者をつかまえきれず、僅差の判定で敗れた。手数も少なく、中盤以降はクリンチで逃れる王者の老獪さにしてやられた。

 だが、リターンマッチに向けて、兄・興毅から伝授された武器が王者を追い詰めた。右のノーモーションパンチだ。これが序盤から何度もタイ人の顔面をとらえる。デンカオセーンは前回同様、ボディを狙って相手の出足を止めようと試みるが、亀田もしっかりパンチを返し、ひるまない。

 思うように強打を発揮できない王者は焦りからか、ボクシングがラフになっていく。6R、頭を下げ、強引に突進するデンカオセーンに挑戦者が2度、押し倒される場面もあった。さらには接近でもみ合いになった際に、ホールディングの反則を犯して減点1。これで亀田の優位は明らかになった。

 手数の少なかった前回の反省を踏まえ、左のジャブもよく使えていた。劣勢を挽回しようと前に出るチャンピオンに対し、適度に距離をとる冷静さも光った。逆に8R、9Rと的確に右を当て、王者をぐらつかせた。一発逆転を狙ってチャンピオンは強引に攻めたが、11Rに再びホールディングの反則をとられて、万事休す。2者が116−110をつける内容で文句なしのタイトル奪取となった。

 2007年の世界初挑戦(WBC世界フライ級)では当時の王者・内藤大助に手も足も出ず、大差の判定負け。悪質な反則行為もあり、世間からバッシングの嵐を受けた。それから2年半、そのボクシングは見違えるほどに巧さが増した。ただ、巧さだけでは世界で勝ち続けることは難しい。兄・興毅も同様だが、ここまでの世界戦はすべて判定決着。多くのボクシングファンを納得させるには、相手を倒しきる強さを磨くことが次なるステップとなる。