最下位に終わった東アジア杯は、国内組の弱さが露呈した大会となりました。ボディコンタクトや判断のスピードはやはり海外でプレーしている選手と比較すると劣ってしまいます。個の力で局面を打開したり、ボールを奪い返すといった部分で物足りなさを感じました。
 個を補う組織力の面でもテレビ画面を通じて、選手たちが何をしたいのか、意図が見えてきませんでしたね。そつなくプレーはしているものの、何が何でもゴールを奪い取ろうとする姿勢が見えなかったのは、とても残念です。

 守備の面では北朝鮮戦での2失点に代表されるように高さへの対応が課題として指摘されました。とはいえ、背の高い代表クラスのDFは急には現れません。高さ勝負に持ちこまれないための対処が何より重要です。

 たとえば、ハイボールを自由に上げさせないよう、出どころへのプレスをしっかりかけていたのか。外へ展開させるような追い込み方ができていたのか。こういったところに目をむける必要があると感じます。前線でのプレッシャーができていれば、ボールを奪って、早い攻撃に転じることもできるでしょう。高さへの対応の前に守備の基本をもう一度見直してほしいと思います。

 これで対アジア勢は4試合連続で白星なし。9月のW杯2次予選でも、日本はマークされる存在として、タフな戦いを余儀なくされるでしょう。これを打破するには何が求められるでしょうか。僕は相手に脅威を与える激しさだとみています。きれいなサッカー、足先だけのサッカーでは、引いて守る相手を崩し切れません。

 まずはアグレッシブに戦い、仕掛ける。相手に息つく暇を与えないことが大事です。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はペナルティエリア内でファウルをもらうような動きも選手たちに要求していますが、これも仕掛けの数を増やさなくては落ち着いて対処されてしまいます。単にファウルを誘うのではなく、せざるを得ない状況に追い込む。相手を圧倒する戦いをみせてほしいものです。

 その点では東アジア杯に引き続いて今回のカンボジア代表戦(9月3日)、アフガニスタン代表戦(8日)の代表に選ばれた新戦力のMF遠藤航(湘南)やDF米倉恒貴(G大阪)は楽しみです。彼らには細かいことはともかく、積極的にプレーしてほしいと期待しています。早いアプローチで攻撃の芽を摘み、チャンスを演出する。そんなシーンが何度も見られれば、チームにとって新たなオプションが生まれるはずです。

 守りでは今回、正GKの川島永嗣が招集されませんでした。これは大きな問題にはならないと思います。ハリル体制になり、守りのスタイルはこれから積み上げる段階。まだ今は個々の選手での対応がメインになっています。

 川島がいなくても、各選手がすり合わせをしながら守備をまとめていくでしょう。その融合が短時間でどのくらいできるかがポイントです。むしろ、これまで出番の少なかった他のGKには大きなチャンスととらえて頑張ってほしいと思います。

 カンボジア戦、アフガニスタン戦は結果はもちろん、内容が問われる2試合です。繰り返しになりますが、ピッチに立つ選手たちの激しさ、アグレッシブさが伝わってくるゲームを見せてほしいと願っています。


●大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima-hsp.com/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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