25日に東京ビッグサイトで行われるWBA世界フライ級タイトルマッチの調印式と前日計量が24日、都内で行われた。初防衛戦に臨む王者の亀田大毅(亀田)は「チャンピオンのほうが気は楽。怖いものはない。失うものは何もない」と自然体を強調。一方、元同級王者で挑戦者の坂田健史(協栄)は「もう1度ベルトを獲りにいく気持ちしかない。苦しい試合になると思うが最後は自分が勝つ」と静かに意気込みをみせた。会見では協栄ジム側が亀田ジム側の“問題行動”を指摘するなど、前日から両者の戦いはヒートアップした。
(写真:若さの亀田と実績の坂田、因縁の対決が実現)
 先制パンチは坂田の所属する協栄ジムから飛んできた。会見の冒頭、ジムの金平桂一郎会長が「明日はボクシング界注目の一戦。クリーンでフェアな試合をしていきたい」と挨拶。ところが続けて、「亀田ジムの吉井(慎次)会長にお聞きしたいことがある」と異例の公開質問が飛び出した。その内容は昨晩、都内ホテルで亀田ジムの五十嵐紀行前会長が、今回の試合の立会人であるアラン・キム氏と面会しているところを協栄ジム関係者が目撃したというもの。五十嵐前会長は大毅の父・史郎氏が3月の長男・興毅の防衛戦後に暴言を吐いた責任を問われ、無期限資格停止中の身分だ。「これは吉井会長の指示によるものか?」と問いただすと吉井会長は即座に否定。両者に不穏な空気が流れた。

 対する亀田ジムも嶋聡マネジャーが質疑応答の最後に割り込んで反撃を開始。五十嵐前会長はトレーナーのホテルチェックインに立ち会っていただけで、キム氏と会ったのはたまたまで挨拶を交わした程度と反論した。すると、すかさず金平会長もマイクを握り、「ライセンス停止中の人間がそういう(接触が予想される)場にいてはいけないのではないか」と再び疑問を呈す。「今は試合に集中させたい」と、その場を収めたJBCの安河内剛事務局長は「挨拶程度なら問題にしない」との見解を示したが、両陣営に新たな遺恨が生まれた。

 さらに会見後に実施されたルールミーティングでも協栄ジム側は“ジャブ”を繰り出す。亀田が世界奪取した2月のデンカオセーン・カオウィチット(タイ)戦のDVDを持ち出し、腕を抱え込んだりするレスリング行為について「故意ではないが危険」と主張。レフェリーに注意するようアピールした。協栄サイドは「(亀田とデンカオセーン)どちらが悪いと言ったわけではない」と語ったが、亀田陣営を揺さぶりにかかったのは明らかだ。

 亀田−坂田戦はようやく実現した因縁の対決だ。協栄ジムはかつて亀田が在籍したジム。2007年、当時の世界王者・内藤大助(宮田)戦で反則行為を繰り返して問題となった際には、金平会長らがその対応に追われた。翌年、ジムは騒動を繰り返す亀田を解雇。その後、立ち上がった亀田ジムとは、協栄ジム所属中のファイトマネーが未払いだとして訴訟を起こされている。

 また昨年10月、デンカオセーンが亀田を破って防衛を果たした際には、元王者の坂田が次の対戦相手に名乗りをあげ、契約まで結んでいた。ところが、判定を不服として亀田側が要求した再戦が優先して認められ、チャンピオン奪回プランが幻に。この試合に勝った亀田にベルトをさらわれた形になっていた。こうした状況から本来は両者は3カ月以内にタイトルマッチを行う予定だったが調整がつかず、実施に7カ月も要した。

 会見後の計量では2人ともリミットの体重(50.8キロ)で1発パス。待ちに待った一戦に進退をかける坂田は、「今回は今までにないくらいいいコンディション。明日が楽しみ」と好調ぶりをアピール。大竹重幸トレーナーも「スパーリングをみていても、私の想像以上に考えてボクシングをしている。その部分はすごく成長している。坂田健史だけをみれば絶対に負けないという形には仕上がった」と太鼓判を押した。

 一方の亀田は1週間で一気に9キロも落とした減量が苦しかった様子。「(減量の影響は)正直あると思うけど、そんなこと言ってられへん。それでも勝てると思ってる」といつものビッグマウスは、ややトーンダウン気味だった。亀田、坂田とも世界戦では判定決着がほとんどで、この一戦も最後までもつれる可能性がある。西岡利晃(WBCスーパーバンタム級王者)、内山高志(WBAスーパーフェザー級王者)が豪快なKO勝利で王座に君臨する中、ボクシングファンを納得させる内容をみせられるのか。リング外の話題はもういいだろう。
「みんなに感動を与える試合、見てて燃える試合、やっていても燃えるようなおもしろい試合をしたい」
 亀田が口にした言葉をリング上で“有言実行”してほしい。

(石田洋之)