過去に例をみない格闘技フェスティバル「戦極 Soul of Fight〜」が30日、東京・有明コロシアムで初開催された。「朝から晩まで格闘技」のキャッチフレーズの下、通常の戦極(SRC)で実施される総合格闘技のみならず、ジャケット(道衣)マッチ、キックボクシング、ムエタイ、女子格闘技も含めた全28試合が実施された。ビッグイベントを締めくくったSRCフェザー級チャンピオンシップでは、挑戦者の日沖発(ALIVE)が王者マルロン・サンドロ(ブラジル/ノヴァ・ウニオン)を激闘の末、3−0の判定で下し、新王者に輝いた。
(写真:3R、マウントポジションからサンドロを攻め立てる日沖)
 9時間を超えた“祭り”のトリを飾るにふさわしい闘いだった。挑戦者の日沖が挑んだのは初の防衛戦となるサンドロ。今年は3月に鹿又智成(パラエストラ八王子)をわずか9秒でKOすると、6月のタイトルマッチで金原正徳(パラエストラ八王子)も39秒で“秒殺”し、チャンピオンになった。このところ3戦連続1RKO中と圧倒的な強さを誇る。

 立ち上がりから攻めてきたのは、予想通りサンドロだった。ローキックからフック、アッパーとロープ際に追い詰める。日沖はカウンターでパンチを返し、動きを止めてテークダウンを狙ったものの、サンドロは倒れない。強打のブラジル人に日沖は1R途中で右まぶたをカット。2Rにはフェイント気味の右フックが鼻に当たって出血し、危うく“血祭り”になりそうな展開だった。

 しかし、苦しい場面でも挑戦者は冷静だった。「ボディを当てて削ろう」。試合前に描いたプランを実行に移した。3R、ミドルキックからアッパーとたたみかけてボディを集中攻撃すると、さすがの王者もひるみ、背を向けた。日沖はそのスキに乗じて、テークダウンを奪い、馬乗りになって拳を振り下ろす。サンドロも鼻血を出しながら、必死の防戦。会場はこの日、一番の盛り上がりをみせた。

「ノックアウトできると思ったができなかった。他のことをしないと倒せない」
 早期決着のファイトプランが崩れたサンドロは、4Rになると今度は日沖をテイクダウンし、グラウンド勝負に持ち込む。だが試合後、本人も悔やんだように、これはかえって日沖のペースになってしまった。上から攻めようとするサンドロに対し、日沖は逆に下からサンドロの体を足で抱え込み、動きを封じる。ラウンド終了間際には三角締めからの腕十字。ゴングに救われ、サンドロは窮地を脱したものの、形勢は完全に逆転した。

 圧巻だったのは最終5Rだ。タックルで倒そうとしたサンドロの腕をとり、相手の背中にまわしてアームロックをかける。完全に極まったようにも見えたが、王者はタップしない。日沖は上に乗って、さらに腕をひねりあげたが、サンドロは耐えに耐え、驚異の粘りをみせる。
「死闘だったが、スポーツなので(相手の腕を)壊したくなかった。(レフェリーには)このままいったら折れちゃうよとアピールした」
 悲鳴と歓声が交錯する中、最後は背中にまわした相手の腕を逆に伸ばして腕十字。「戦争のような試合だった」とサンドロも振り返った一戦はジャッジ全員が日沖を支持する完勝だった。

「周りからいい試合だと言ってもらえた。ファイターとして幸せ。充実感がある」
 日本人最後の砦として強敵を撃破し、日沖の顔には疲労感の中にも喜びがにじみ出ていた。最高のフィナーレに今大会から新しくイベントプロデューサーに就任した松本天心氏も「(8月のミドル級チャンピオンシップ)ジョルジ・サンチアゴ×三崎和雄戦を超える激闘」と手放しで賞賛。初の試みとなったイベントにも「熱い試合が多くて(時間が)短く感じたのは私だけじゃないはず。メインイベントの結末も含めて100点をあげたい」と来年以降の開催に手ごたえを感じていた。
(写真:「(フェザー級の)65キロでベストの選手になるという目標がひとつの形になった」と語る日沖)

 試合結果は以下の通り。

<第1試合> ※ライト級 SRCジャケットルール
〇山田崇太郎(Brave/SRC育成選手)
1分40秒 TKO(レフェリーストップ)
×キム・イサク(韓国/CMA KOREA/亀尾異種格闘技ジム)

<第2試合> ※59kg契約 SRCジャケットルール
〇清水清隆(SKアブソリュート)
判定 2−1
×杉田一朗(心温塾)

<第3試合> ※ライト級 SRCジャケットルール
〇坂口征夫(坂口道場一族)
ストライクポイント 2P
×ジョン・ジンソク(韓国/CMA KOREA/Wolf Max)

<第4試合> ※ライト級 戦極キックボクシングルール
 池上大将(ウィラサクレック)
3R判定 ドロー
 田中雄士(レンジャー品川)

<第5試合> ※70kg契約 戦極キックボクシングルール
〇池井佑丞(クロスポイント吉祥寺)
2R48秒 KO
×松倉信太郎(バンゲリングベイ・スピリット)

<第6試合> ※70kg契約 戦極キックボクシングルール
 山内佑太郎(パワーオブドリーム)
3R判定 ドロー
 横山剣(CRAZY WOLF)

<第7試合> ※52kg契約 戦極ムエタイルール
〇藤原あらし(バンゲリングベイ・スピリット)
5R判定 3−0
×江幡睦(伊原道場)

<第8試合> ※60kg契約 戦極ムエタイルール
〇カノンスック・ウィラサクレック(タイ/ウィラサクレック・フェアテックスジム)
5R判定 3−0
×山本元気(DTSキックボクシングジム)

<第9試合> ※73kg契約 戦極ムエタイルール
 宮本武勇志(治政館/新日本キックボクシング協会)
3R判定 ドロー
 小又大貴(エスジム)

<第10試合> ※ヘビー級 戦極キックボクシングルール
〇小澤和樹(team SUDO)
1R2分55秒 KO
×イ・チャンソプ(韓国/CMA KOREA)

<第11試合> ※ヘビー級 戦極ムエタイルール
〇ファビアーノ・サイクロン(ブラジル/TARGET)
2R2分9秒 TKO(ドクターストップ)
×アンドリュー・ペック(ニュージーランド/ユニバーサルキックボクシングジム)

<第12試合> ※ミニフライ級 戦極ムエタイルール
〇神村エリカ(TARGET)
2R38秒 TKO(ドクターストップ)
×ちはる(ウィラサクレック・フェアテックスジム)

<第13試合> ※48kg契約 SRCレディースルール
〇瀧本美咲(空手道禅道界横浜支部)
2R判定 2−1
×エイミー・デイビス(米国/Davis Muay Thai)

<第14試合> ※無差別級 VALKYRIE提供試合
〇中井りん(修斗道場四国)
1R2分9秒 アームロック
×HARI(FIGHT CHIX)

<第15試合> ※61kg契約 SRCレディースルール
〇赤野仁美(AACC)
試合前ドクターストップ
×ロクサン・モダフェリ(米国/フリー)

<第16試合> ※バンタム級ASIAトーナメント準決勝
〇清水俊一(総合格闘技宇留野道場/チームZST)
2R判定 3−0
×井上学(U.W.F.スネークピットジャパン)

<第17試合> ※バンタム級ASIAトーナメント準決勝
〇中原太陽(和術慧舟會GODS)
1R2分7秒 反則(ローブロー)
×田村彰敏(総合格闘技津田沼道場)

<第18試合> ※ヘビー級
〇デイブ・ハーマン(米国/Team Peewee’s Playhouse)
3R判定 3−0
×中尾“KISS”芳広(TEAM TACKLER)

<第19試合> ※ミドル級
〇マメッド・ハリドブ(ポーランド/TEAM KSW/MMA Arrachion)
1R2分22秒 TKO(レフェリーストップ)
×佐々木有生(GRABAKA)

<第20試合> ※ライト級
〇ジャダンバ・ナラントンガラグ(モンゴル/チーム朝青龍)
1R2分3秒 KO
×横田一則(GRABAKA)

<第21試合> ※ウェルター級グランプリ決勝
〇中村K太郎(和術慧舟會東京本部)
2R3分48秒 チョークスリーパー
×Yasubei榎本(Enomoto Dojo)

<第22試合> ※ライト級 SRCvs.DREAM対抗戦
〇真騎士(SRC育成選手)
3R判定 3−0
×パーキー(韓国/CMA KOREA)

<第23試合> ※ウェルター級 SRCvs.DREAM対抗戦
〇奥野“轟天”泰舗(CAVE)
1R19秒 KO
×長南亮(TeamM.A.D)

<第24試合> ※フェザー級 SRCvs.DREAM対抗戦
〇前田吉朗(パンクラス稲垣組)
1R1分27秒 TKO(レフェリーストップ)
×金原正徳(パラエストラ八王子/チームZST)

<第25試合> ※53.5kg契約 SRCレディースルール
〇藤井恵(AACC)
3R判定 3−0
×藤野恵実(和術慧舟會GODS)

<第26試合> ※70kg契約 戦極キックボクシングルール
〇ブアカーオ・ポー.プラムック(タイ/ポー.プラムックジム)
3R判定 3−0
×中島弘貴(バンゲリングベイ・スピリット)
(写真:K-1 WORLD MAXを2度制覇したブアカーオ(右)と果敢に打ち合った中島)

<第27試合> ※ミドル級
〇三崎和雄(フリー)
1R1分15秒 TKO(レフェリーストップ)
×マイク・シール(メキシコ/ジャクソンズMMA)

<第28試合> ※フェザー級チャンピオンシップ
〇日沖発(ALIVE)
5R判定 3−0
×マルロン・サンドロ(ブラジル/ノヴァ・ウニオン)