甚大な被害をもたらした東日本大震災の影響を受けて延期されていたBCリーグが、当初の予定から1週間遅れの16日に開幕する。5年目を迎えた同リーグには今季、NPBやメジャーなどの第一線で活躍した投手が加入した。新潟アルビレックスBCの高津臣吾と正田樹、信濃グランセローズの金村暁だ。NPB入りを目指す若者が多く集う同リーグで、彼らが果たす役割は大きい。チームやリーグのレベルアップはもちろんのこと、彼らとの勝負で結果を出すことがNPBへの道を開くきっかけになる可能性もあるだけに、若手には大きなチャンスともいえる。果たして、今季のBCリーグはどんなペナントレースが展開されるのか。各チームの戦力状況を見てみたい。
“スモールベースボール”で王座奪回! 〜群馬ダイヤモンドペガサス〜
 群馬ダイヤモンドペガサスは、機動力をいかした“スモールベースボール”で2季ぶりの王座奪回を目指す。その“スモールベースボール”の中心となるのが俊足の内山勇輝。昨季まで俊足好打者としてチームを牽引してきた青木清隆が現役を引退し、今季からはコーチを務める。内山はその青木不在の穴を埋める活躍が期待されている。昨季、積極的な走塁でチームに貢献した山田憲、志藤恭太や、新人の新井伸太郎などもおり、どこからでも走れる布陣をしくことができれば、幅広い攻撃ができそうだ。投手陣はエース堤雅貴、キム・ジョンファンに加えて新戦力のヘルナンデスとマヨラが柱となる。両投手ともに直球は150キロ台と威力は十分だが、安定感が課題となる。昨季は不在だった投手コーチに八木沢壮六氏が着任。より強固な投手力を築くことができるかにも注目したい。

リーグ一を誇る投手力で初の地区&リーグ制覇へ 〜新潟アルビレックスBC〜
 今季は高津臣吾と正田樹が加入し、例年以上の注目を浴びている。経験豊富な2人は若手にいい緊張感と刺激をもたらしており、チーム全体に「今年こそは」という強い意気込みが感じられる。もともと投手力があるチーム。昨季10勝をマークした石渡大介、リーグ2位の防御率2.05で抜群の安定感を誇った雨宮敬、チーム最多の87奪三振をマークした寺田哲也、雨宮とともにリリーフの中心として活躍した間曽晃平。それに正田と高津が加わる投手陣の層の厚さはリーグ一。それだけに昨季、浮彫となった得点力不足をどこまで解消できているかがカギとなる。東北楽天では野村克也氏の下でコーチを務めた橋上秀樹新監督の采配も見どころの一つだ。

初優勝への課題は山積み 〜信濃グランセローズ〜
 6球団で唯一、優勝していないのが信濃だ。2年目を迎えた佐野嘉幸監督のもと、今季こそはプレーオフ進出を果たしたい。カギを握るのは、昨季チーム防御率3.51と不安定だった投手陣の再建だ。日本ハム、阪神で活躍した金村暁が加入したものの、調整不足は否めず、オープン戦では登板0に終わった。それだけに既存選手の奮起に期待したいところだ。先発は昨季、チーム最多の9勝をマークした給前信吾と杉山慎の両右腕が中心となる。また、新人の篠田朗樹もオープン戦で結果を残しており、先発の一角に入りそうだ。課題はリリーフだが、調子が上向き始めている鈴木幸介、昨季リーグ2位の12セーブを挙げた飯田達也に安定感が出てくればかたちが見えてくる。打線は新助っ人のペレス、昨季チーム最多の37打点をマークした竜太郎の前にどれだけランナーをためられるかがカギとなる。そのためにも脇田晃、フミヒサの1、2番コンビが機能するかが重要となる。

原点からの王座奪回 〜富山サンダーバーズ〜
 昨季は前後期ともに最下位に陥った富山は今季、スローガン「原点」に返り、再建を目指す。メンバーもガラリと変わり、まさにチームは一からのスタートだ。投手は日名田城宏、田中孝次の既存選手に加え、関西独立リーグで年間最多勝のタイトルを獲得した百合翔吾、四国・九州アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)、関西独立リーグを経ている松田有二、ジャパン・フューチャーベースボールリーグ出身の遠上賢一と他リーグを経験した投手陣に期待したい。一方、打線では新4番の新人・島袋涼平に注目したい。187センチ、100キロと恵まれた体格から繰り出すパワーは一級品。ここぞというときの勝負強さがチームの勝敗に大きく影響しそうだ。

機動力にパワーを加えた打線に注目 〜石川ミリオンスターズ〜
 森慎二監督2年目の今シーズンも投手中心の守り勝つ野球で臨む。先発には経験豊富な大輔、昨季最優秀防御率(1.97)をマークした佐藤広樹、チームで唯一2ケタ勝利(10勝)をマークした完投能力の高い左腕・山下英の3本柱。リリーフには3年ぶりに古巣に復帰した蛇澤敦と南和彰が控えており、今季も安定した投手陣を築いている。さらに打線は機動力に加えて力強さが加わった。オープン戦で2本のホームランを放った敬洋、181センチ、90キロと体格にも恵まれている南昌丈が持ち前のパワーを発揮することができれば、昨季までとは違う新たな石川打線が見られそうだ。オープン戦では5連勝とチームは勢いに乗っており、リーグ初の連覇、そして独立リーグ日本一を目指す

今季も投手3本柱が中心に 〜福井ミラクルエレファンツ〜
 球団創設以来、2年連続で最下位に陥っていた福井だが、昨季は前期2位になると、後期には初優勝を遂げた。その躍進の原動力となったのが藤井宏海、岩井昭仁、高谷博章の投手3本柱だ。いずれも完投能力が高く、投手層の薄さをカバーした。シーズンを通して安定したピッチングを見せ、接戦をモノにできたことが大きい。今季も間違いなく、3人の活躍が不可欠となる。その投手陣を支えたのがキャプテンでもあるキャッチャーの織田一生だ。チームから厚い信頼を寄せられており、彼のリーダーシップがチームの結束力を生み出した。バッテリーを中心とした野球で今季はさらなる飛躍を誓う。