クラブワールドカップに開催国枠で出場したJリーグ王者サンフレッチェ広島は準決勝で南米王者リバープレート(アルゼンチン)と対戦し、0-1で敗れた。強豪に対して健闘しながらも、後半にガクッとペースが落ちた印象を受けた。

 

 12月2日のチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦から15日間で5試合目。それも中2日は3回目だった。シーズンのラストに待ち受けていたハードなスケジュールが、タフで鳴る広島の足を止めた一因に思えてならなかった。リバープレートや他大陸のチームは長距離移動という側面があるとはいえ、ホームの広島にとっても過酷な条件下での大会であったと言える。

 

 これがもし広島でなくガンバ大阪が勝ち上がっていたらどうなっていたか。元々、ACL準決勝、ヤマザキナビスコカップ決勝と過密日程をこなしてきた中で、彼らは11月28日のCS準決勝から再び連戦スケジュールを組みこまれることになっていた。報道によれば浦和レッズとのCS準決勝を視察した日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「リーグの期間が長すぎる。今日見たA代表の選手も疲れていた」とこぼしていたという。疲労を溜めた状態でクラブワールドカップに臨んでも、いい結果を得られたかどうかは甚だ疑問である。

 

 広島にしてもG大阪にしても、そして浦和にしてもシーズンはまだ終わっていない。12月26日には天皇杯準々決勝が残っており、勝ち進めば1月1日の決勝で長いシーズンを締めくくることになる。ハリルホジッチ監督が眉をひそめるのもよく分かる。

 

 長い上に終盤の過密日程が組まれているシーズン。

 これでオフがタップリとあるわけでもない。U-23日本代表はカタールで1月12日開幕のリオデジャネイロ五輪最終予選が待っている。広島の浅野拓磨などはほぼオフなしの状態で臨まなくてはならなくなる。

 

 来年のJリーグは初の2月開幕(J1=27日、J2=28日)となり、ACL出場チームはその前にグループリーグがスタートする。例年と比べてもオフ期間が削り取られる選手たちは少なくないだろう。

 

 しかしながら、いいオフがないと、いいパフォーマンスにつながっていかない。

 

 オフを重視して、いい結果につなげたのが2010年、南アフリカW杯で日本代表をベスト16に導いた岡田武史監督である。

 

 振り返ってみると、まずワールドカップイヤーに入った1月6日にアウェーのイエメンでアジアカップ予選が待ち受けていた。岡田の方針は「全員、最低2週間はフルに休ませる」だった。オフの真っただ中にある常連メンバーを招集することなく、U-20韓国代表と親善試合を行なうなど活動中のU-20代表とJリーグで活躍するA代表経験のない若手をミックスした編成でサヌアに向かい、3-2で勝利している。

 

 また指揮官はW杯本大会直前の5月、Jリーグの過密日程を考慮して24日の壮行試合韓国戦を前に4、5日間のオフを与えている。集合したのは韓国戦の3日前。逆に韓国代表はKリーグの日程がJリーグほど詰まっておらず、なおかつ日本戦の1週間前にはエクアドル代表と親善試合を行なっている。

 

 3日前に集合するチームと早くから準備しているチームとの対戦ではコンディションに差が出てくる。0-2で完敗し、岡田ジャパンはバッシングにさらされた。批判も承知の上で、オフを優先したのである。彼はのちにこう語っている。

「休ませないことには本大会で体が持たなくなる。02年、06年と比べても強化の日程は2週間ほど短い。そこで休ませるというのはものすごく怖いんだけど、それでもオフを優先させなきゃならない」

 

 あのとき与えたオフが結果的に、本大会のパフォーマンスを生み出していたわけである。

 

 来年はW杯アジア最終予選もスタートして、ハリルジャパンもロシアに向けてエンジンがかかっていく。クラブの日程も、タイトであることに変わりない。だがオフはクラブの監督、代表監督のやりくりだけではどうしても限界がある。今の状況は、さすがの岡田でさえも頭を抱えるのではあるまいか。

 

 Jリーグのチャンピオンシップ制度、天皇杯の日程……大枠のスケジュールを変えずに選手に負担を強いる状態が続くことは、日本サッカーのためにならないと筆者は強く感じている。


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