ボクシングのWBAダブル世界タイトルマッチが7日、大阪府立体育会館で行われ、バンタム級では王者の亀田興毅(亀田)が同級12位のマリオ・マシアス(メキシコ)を4R2分4秒KOで下し、3度目の防衛に成功した。またスーパーフライ級では挑戦者の同級1位・亀田大毅が王者のテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)に挑戦。日本初となる兄弟揃っての複数階級制覇を狙ったが、0−3の判定で敗れ、ベルトを奪うことはできなかった。
<亀田兄、3度のダウンで圧勝>

「今日はバンタム級で一番パンチの力が乗っていた」
 本人も試合後、自画自賛する内容だった。メキシコでは“ウラカン”(ハリケーン)と呼ばれ、パンチを振りまわしてくる挑戦者を歯牙にもかけなかった。

 軽快なフットワークから上下左右へパンチをリズムよく打ち分けた。1Rには左フックが相手の股間に命中。ローブローで試合が中断したが、それだけ立ち上がりから相手の懐に入りこめていた。

 最初のダウンは、このローブローが伏線となった。再びボディを打つとみせかけ、挑戦者がパンチを合わせてきたところを見切り、頭を下げて左フックを顔面に浴びせる。「手応えのあるパンチ。全部(相手の)パンチも見れた」と本人も納得の内容でメキシコ人が腰から崩れた。

 2Rになってマシアスもサウスポースタイルにスイッチするなど、局面を打開しようと試みるが、王者には全く通用しない。亀田興はどんどん足を使って中に入り、ボディを効かせて相手の動きを止める。そして3Rには終了間際に左のストレートがこめかみにヒット。挑戦者は苦悶の表情を浮かべてキャンバスにひざをつく。ダウンはゴングに救われたものの、決着は時間の問題だった。

 迎えた4R。コーナーに追い込んで右左とボディを叩き込む。最後は左の強烈なボディがストマックに入り、さすがのマシアスも耐えきれない。マウスピースを吐き出し、リング上で四つん這いになると、テンカウントでは立ち上がれなかった。

 前回、8月の防衛戦ではダビド・デラモラ(メキシコ)に対し、序盤に目の上をカット。僅差での判定勝ちとなり、決して褒められる試合ではなかった。今回は一転して3度のダウンを奪っての完勝。ここまで3度の防衛戦ではいずれもランキングの低い格下を相手にしているだけに、指名試合が予想される次戦が本当の実力を問われるリングになりそうだ。

<亀田弟、敗因は手数の少なさ>

 試合終了のゴングが鳴った瞬間、両者は同時に両拳を突き上げてアピールした。だが、その表情で勝敗は明らかだった。鼻血を出し、右目の上が腫れあがっていた亀田大に対し、テーパリットの顔はきれいなまま。一進一退の展開ながら、王者のパンチが的確にヒットしていたことを物語っていた。

 序盤から両者は激しく打ち合った。頭をつけ合って亀田大がボディ攻撃をみせれば、王者は左右のフックで顔面をとらえる。2Rには早くも亀田大の鼻から血が垂れた。亀田大も3Rには左フック、右フック、左ボディとワンツースリーを決めるなど反撃をみせた。

 だが中盤以降、テーパリットが距離を取りはじめると、なかなか相手をつかまえきれない。7Rには右のストレートを当ててロープ際に追い込み、8Rにはボディで王者の動きを止めたものの、完全なダメージを与えることはできなかった。むしろテーパリットは出てくる亀田大に対して必ずパンチを返し、手数の多さで着実にポイントを重ねた。

 終盤、亀田大は右のノーモーションで活路を見出そうとするも、これも狙いすぎて手が出ない。テーパリットは前日に1回目の計量でリミットから500グラムオーバーするなど調整に不安を残し、ラウンドを重ねるにつれてパンチが上滑りしていた。最終的なジャッジは2ポイント差が1者、4ポイント差が1者。もう少し挑戦者が手数を増やし、有効打が出ていればポイントがひっくり返った可能性もある。

 もともと同級は8月に清水智信(金子)がウーゴ・カサレス(メキシコ)を破り、新チャンピオンとなっていた。しかし清水が右眼窩(がんか)底を骨折したためWBAが休養扱いとし、暫定王者のテーパリットが正規王者に昇格。清水サイドの抗議も認められず、タイトルマッチとして認定されたものだ。もし、ここで亀田が勝利しても真の2階級制覇とは呼べない状況ではあった。そんな一戦に敗れたことで、ベルト再挑戦には出直しを迫られそうだ。