労働組合・日本プロ野球選手会は20日、大阪市内で総会を開き、来年3月に予定されている第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しない方針を決定した。選手会側が従来から求めてきた大会収益の分配見直しなどについて改善が見られないため。NPB側(日本プロ野球組織)は既にWBC参加を表明しているため、今後は両者が協議の場を設定することになりそうだ。
 過去2大会を日本が連覇し、大きな注目を集めたWBC。だが、その実態は真の世界一決定戦と呼ぶにはふさわしくない面が多い。まず主催者が国際野球連盟(IBAF)などの国際機関ではない点が挙げられる。運営するのはメジャーリーグ機構(MLB)と同選手会が立ち上げた会社だ。そのため、大会の収益は66%はMLBと同選手間に分配される。NPBが受け取る利益率は13%に過ぎない。

 その一方で“ジャパンマネー”は、この大会の売上に大きな貢献をしている。選手会によると、大会のスポンサー料の約7割は日本代表を支援する企業によるもの。チケット売上や放映権料に関しても、日本関連で入る部分が大きな割合を占めており、現状では“日本が多額の資金をMLBに貢ぐ大会”と言っても過言ではない。

 しかも個々の国・地域の代表を支援するスポンサーの協賛金も、WBCではすべて運営会社に集まる仕組みになっている。通常、他の競技を見ても代表チームのスポンサー集めは、各国・地域に権限がある。そのため各競技団体はスポンサーやグッズ販売からの収入を代表の活動資金に充てているが、これはWBCでは不可能だ。

 NPBでは2010年度まで5期連続赤字を計上しており、決して財政状況は良くない。収益配分の改善や代表のスポンサー料をNPBの収入に移行することは今後、大会に参加し続ける上で大きなポイントだった。

 NPBもこれらの問題点は認識しており、運営サイドと交渉を進めてきたが、現状はあまり進展していない。WBCの運営会社はあくまでも強気の姿勢だ。大会にまつわる収入を一括管理する理由は、赤字のリスクに備えるためと説明しており、大幅な譲歩は望めそうにない。日本が不参加でも大会は実施する方針で、“ジャパンマネー”が入らなくても運営は可能と主張している。

 NPBはその一方では新たな収入源として代表を常設化し、定期的に興行を行うことを決定。3月に台湾代表との試合を実施し、11月にはキューバ戦が予定されている。当然、この代表常設はWBCを見据えたもの。今回の不参加表明は根本問題が解決しないまま参加へと先行するNPBに、選手会が待ったをかけたかたちだ。

 WBCの問題点は何も日米間の話だけに限らない。過去、日本で開催される第1ラウンドの興行権を握ってきたのはNPBではなく読売新聞だ。代表戦をNPBの1球団の親会社が管轄しているというのはいびつな構造である。しかも来年のWBCでは第2ラウンドの日本開催も取り沙汰されており、もし実施が決まれば読売中心の構図がさらに強まる。

 こういった課題をひとつひとつクリアにしていかない限り、WBCは真の国際大会とはなりえない。このほど再任が決まった加藤良三コミッショナーは元駐米大使だ。米国とのパイプをうまく活用しながら、引き続き運営会社との交渉に当たり、選手会を納得させる結論を引き出せるかどうか。コミッショナーとしての力量がまさに問われている。