30日(現地時間)、体操男子団体決勝が行なわれ、日本は北京に続いて銀メダルを獲得した。予選では落下が相次ぎ、5位に終わった日本は立て直しを図って決勝に臨んだ。2種目目の跳馬で山室光史(コナミ)がケガを負うなどのアクシデントがあったものの、中国に次いで2位をキープして最終のあん馬へ。最後を飾った内村航平(コナミ)がミスをしたが、僅かの差で地元英国とウクライナを上回り、銀メダルを獲得した。
「団体での金メダル」――北京以降、日本体操陣の最大の目標は、達成することができなかった。世界選手権3連覇と今や世界が認めるエースの内村が鉄棒でまさかの落下をするなど、予選では普段では考えられないミスが連発した。1日はさんで行なわれた決勝では1種目目の吊り輪を終えた時点で、3位につけた日本。予選での嫌な流れを吹っ切ったように見えた。

 だが、2種目目の跳馬でアクシデントが待っていた。山室が落下し、演技が続けることができないほどの大ケガを負ってしまう。それでも動揺することなく、落ち着いて演技をし続けた日本は、吊り輪、跳馬、平行棒と前半の3種目を終えた時点で中国に次いで2位に浮上した。だが、この時点で中国には2.010差を空けられ、やや苦しい展開となる。

 勝負の4種目目は予選で3人ともに落下をした鉄棒。まずはキャプテンの田中和仁(徳州会)はミスはしたものの、なんとか最小限に食い止め、15.165というまずまずの得点をあげた。続いて鉄棒を最も得意とする弟の田中佑典(コナミ)。ほぼ完璧な演技を見せ、16.000の高得点を叩き出した。田中兄弟の演技に気合いを入れ直した内村も実力通りの演技で会場を沸かせ、15.733をあげた。しかし、中国も高得点をあげ、その差を縮めることができない。

 5種目目は床。1人目の田中和は途中、片手をついてしまうミスをし、13.733と得点を伸ばすことができなかった。初代表の最年少、18歳の加藤凌平(順大)と内村もきれいにまとめはしたものの、意外にも得点が伸びず、中国との差は2.577。金メダル獲得には、最後のあん馬でのミスは絶対に許されない状況となった。

 まず最初に臨んだ中国は、3人ともに大きなミスもなく、安定した演技を披露。これで金メダル獲得を確信したかのように、演技を待つ日本の隣で喜び合う。日本は逆転を信じ、最後の演技に集中した。1人目は田中和。予定していた山室がケガをしたことで、急遽代役を務めることになった田中はキャプテンとしての意地を見せたいところだったが、落下という痛いミスを犯してしまう。2人目の加藤はきれいにまとめたものの、高得点には至らず、この時点で中国の金メダルが確定。さらに会場は地元・英国のメダル獲得確定を知った観客たちの歓喜の渦に巻き込まれ、騒然となる中での演技は、最終演者の内村にとって集中力を保つには難しい状況だった。それでも予選のようなミスもなく、演技が終わろうとしていたその時、着地に向かうひねりでバランスを崩し、危うく落下しそうになった。それでもなんとかもちこたえた内村だったが、得点は13.455。電光掲示板に映し出された日本の順位は4位だった。

 これに日本が猛抗議をし、審判団が長い協議をした結果、14.166点に修正され、銀メダル獲得となった。なんとか表彰台をキープし、安堵の笑みを浮かべた内村だったが、試合後のインタビューでは納得のいかない表情で次のように語った。
「電光掲示板に4位と表示された時は、何も言葉が出なかった。今まで何をやってきたんだろうと思った。2位にはなったが、正直2位でも4位でもあまり変わらない。銀メダルはとれたが、後味の悪い結果となった。表彰式では4年前、今回と同じように金メダルの中国を羨ましそうに見つめていたことを思い出した」

 最大の目標だった団体での金メダルは逃したが、内村には個人総合種目が残されている。団体での悔しさを晴らすべく、美しい演技で王者の貫録を見せてほしい。