9年目を迎えた四国アイランドリーグPlusの前期シーズンが6日、開幕する。3月のWBCでは元高知の角中勝也(千葉ロッテ、元高知)が日本代表に選ばれ、例年以上にリーグに対する注目度は高まっている。今季は広島より各球団に1名ずつ育成選手が派遣され、昨季に続き、河原純一(愛媛、元中日)、桜井広大(香川、元阪神)らNPBで実績を残した選手たちもプレーする。またリーグからNPB入りを果たした西川雅人(愛媛、元オリックス)、大原淳也(香川、元DeNA)が古巣に戻ってきた。期待の新人も多く、角中に続くような新たなスターが誕生するのか、見どころは多い。昨季以上の「Plus」を目指して戦う各チームの戦力と注目選手を紹介する。
(写真:桜井らを擁し、投打のバランスがいい香川がペナントレースを牽引しそうだ)
香川オリーブガイナーズ
★12年成績
前期 25勝10敗5分 1位
後期 21勝14敗5分 2位

 昨季は2年ぶりの年間王者に輝いたものの、独立リーググランドチャンピオンシップでは、BCリーグの新潟アルビレックスBCに3連敗を喫して日本一を逃した。「昨季の悔しさから選手の目の色が変わっている」と伊藤秀範コーチが明かすように、昨季のメンバーを中心にチームの仕上がりは順調だ。投手では昨季8勝をあげた渡辺靖彬が先発の軸。加えて新人の又吉克樹(西原高−IPU環太平洋大)がローテーションに入る。サイドから投げ込むキレのあるボールを武器に、広島2軍との交流試合でも7回1失点と好投した。さらに肩の故障のため2年間、公式戦での登板がなかった篠原慎平が愛媛から移籍し、復活の兆しをみせている。一時はドラフト候補として注目された本格派右腕だけに戦力となれば大きい。ブルペンも左の後藤真人、右の酒井大介と盤石だ。

 打線は大原の加入で、より強力になった。長打力のある桜井に、昨季の前期優勝に貢献した島袋翔伍、コンスタントにヒットが打てる国本和俊と好打者が揃う。相手にとっては脅威だ。さらに新戦力では内野手の生田目翔悟がオープン戦でアピールした。「芯に当てるのがうまい」と西田真二監督もバッティングを評価する。星野雄大(東京ヤクルト)が抜けたキャッチャーも、3年目の大川修也が成長してきた。強肩のルーキー有山裕太(大阪桐蔭高−奈良産業大(中退))と競いながらホームベースを守ることになりそうだ。

愛媛マンダリンパイレーツ
★12年成績
前期 21勝15敗4分 2位
後期 23勝14敗3分 1位

 昨季は後期を制したが、リーグチャンピオンシップで香川に敗れ、悲願の年間優勝を果たせなかった。先発で12勝をあげたデイビット・トレイハン、中軸に座っていたブレット・フラワー、橋本将がチームを去り、戦力ダウンした分をチーム力で補う。先発の柱は昨季、最優秀防御率(1.91)に輝いた小林憲幸。広島から派遣された池ノ内亮介も先発陣に加わる。星野おさむ監督は彼らに次ぐ先発としてベテランの河原純一を起用する考えだ。昨季は中継ぎとしてフル回転を期待したが、調子が上がらず、10試合の登板にとどまった。「間隔を空けながら、まとまったイニングを投げてもらったほうがいい」と指揮官はみている。

 ブルペンは西川が戻ってきたのは心強い。新人右腕の橋本隼も身長170センチと小柄ながら、「ストレートと変化球の腕の振りが変わらない」(星野監督)とクローザー候補に浮上している。北海道日本ハムから入団した金森敬之は昨年受けたヒジの手術の影響もあり、戦列に加わるのは5月上旬にずれ込む予定だ。打線はキャプテンの高田泰輔をトップバッターに、昨季の本塁打王(7本)・金城雅也を4番に据えて成長を促す。昨季の首位打者(.349)・大井裕喜、東京新大学野球リーグで首位打者と打点王の獲得経験がある新人の鶴田都貴(神村学園高−東京国際大)ら脇を固める選手がうまくサポートして打線を機能させたい。

徳島インディゴソックス
★12年成績
前期 15勝23敗2分 3位
後期 21勝15敗4分 3位

 連覇を目指した昨季は投手陣が大幅に入れ替わった影響もあり、前期は苦戦を強いられた。後期は立て直したものの、愛媛、香川との優勝争いで勝ち切れなかった。今季は主力の多くが残留し、V奪回を狙う。投手陣は昨季2ケタ勝利をあげた山口直紘と、岩根成海の先発2枚看板。ここに広島から派遣された小松剛が加わる。09年には1軍で5勝をあげた右腕が力を発揮すれば、かなりの戦力アップになる。愛媛から移籍した入野貴大の入団でブルペンにも柱ができた。ドミニカのカープアカデミーからやってきたシレット、ガルシアの両外国人と合わせてスタッフは豊富だ。

 打線は1番・吉村旬平、2番・東弘明、3番・神谷厚毅と機動力の使える選手を上位に並べる。昨季も島田直也監督は東、吉村の1、2番コンビで足でかき回す攻撃を試みたが、うまく機能しなかった。4番以降は大谷龍次、松嶋亮太らポイントゲッターが並ぶだけに、「1、2番が打線を引っ張ってくれれば」と指揮官も攻撃のポイントにあげる。下位を打つ大谷真徳、小野知久も長打力があり、つながるとイヤな打線になるだろう。新人の井生広大(福岡・小倉高−明治学院大)は首都大学リーグ2部で首位打者に輝いた実績を持ち、活躍が見込める。

高知ファイティングドッグス
★12年成績
前期 9勝26敗5分 4位
後期 7勝27敗6分 4位

 ここ2年は低迷が続き、今季こそ逆襲のシーズンだ。だが、「1年前のチーム状況を1とすれば、今は6、7まで来ている」と定岡千秋監督が明かすように、巻き返しの態勢は整ったとみていい。投手陣は右の野原慎二郎、左の吉川岳と、実績のある選手がオープン戦から状態がいい。この2人に加えて山中智貴、井川博文と先発候補は揃っている。広島から派遣された塚田晃平は192センチの長身から投げおろす右腕。ドミニカ人左腕のグルジョンは速球が売りだ。高卒新人の中村正利(鹿児島城西高)は左で140キロ台のストレートを投げる。昨春の鹿児島県大会ではチームを優勝に導いており、18歳ながらレベルは高い。

 打線も中軸がしっかり固まった。新人の河田直人(生光学園高−愛知学院大)はオープン戦で2本塁打を放ち、飛ばす力は十分。韓国プロ野球の安峻亨に、一昨季のホームラン王・迫留駿と一発のあるバッターが顔を揃える。これなら昨季は打率.151、3本塁打に終わった迫留にかかる負担も軽減されるだろう。ドミニカ人内野手のデイビー・バティスタはシャープなスイングで上位を打てるタイプだ。昨秋、西武の入団テストを受け、育成選手での獲得が検討されていた。足のある村上祐基と1番を争う。昨季はチーム打率が1割台と攻撃陣は不振にあえいだ。バティスタや村上が塁に出てかきまわし、クリーンアップで還すスタイルを確立したい。故障者の多さも成績不振の一因になっていたが、ここまでは大きなケガ人が出ていないのも好材料だ。

(石田洋之)