現地時間8日、世界体操競技選手権種目別決勝2日目がカナダ・モントリオールで行われた。女子床運動(ゆか)は村上茉愛(日本体育大)が制し、日本女子として同種目初の金メダルを手にした。男子跳馬は白井健三(日本体育大)が優勝。前日のゆかにつづき今大会2冠を達成した。

 

 1986年8月生まれ、同い年の男女次代のエースが得意種目で輝いた。

 

 女子ゆか決勝に臨んだ村上は2日前の個人総合で4位、この日行われた平均台でも4位だった。自身初の世界大会表彰台まで、あと一歩と迫っていた。今大会最後のゆかは「すべて出し切って完璧な演技ができた」と自賛するパフォーマンスで快挙を成し遂げた。日本人としては1954年ローマ大会での田中敬子の平均台以来、63年ぶり2人目の金メダルだ。

 

 トップバッターで登場した村上は序盤からダイナミックな跳び技を次々と決める。まずはH難度「シリバス」(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)の着地に成功。以前からの力強さに加え、表現力が増した印象もある。音楽に乗って自らの世界へと引き込んだ。Eスコア(出来栄え点)は8.333点。トータル14.233点をマークして、他の選手の演技を待った。その後、村上の点数を超える者は現れなかった。

 

 4年前の世界体操では4位だった村上。一気に表彰台の頂点へ上り詰めた。「やっと1位を取れた。東京に向けていい経験になったかなと思います」と胸を張る。ゆかと跳馬が得意種目の村上だが、今大会では平均台で4位に入った。個人総合4位入賞でオールラウンドの実力を付けつつある。21歳の村上が女子のエースに名乗りを挙げた。

 

 跳馬の決勝に臨む白井はある決断をした。「3回半を跳びたい気持ちがすごく強かったのですが、それを辞めるのもスペシャリストとしての決断」。1本目の試技、自らの名が付く「シライ2」(伸身ユルチェンコ3回半ひねり)を選択せずに「シライ/キム・ヒフン」(伸身ユルチェンコ3回ひねり)に挑んだ。白井は勢い良く駆け出して踏み切り、着地も決めた。Eスコアは9.600点の高評価だった。

 

 1本目で15.200点をマークすると、2本目の試技は「ドリッグス」(伸身カサマツ跳び1回半ひねり)で終えた。こちらは着地にわずか動いたが、Eスコアが9.400点。2本の平均得点は14.900点でトップに立った。他国の跳馬のスペシャリストたちが、白井の得点を超えることはできなかった。ロンドン五輪で跳馬銅のイゴール・ラジビロフ(ウクライナ)は14.899点。わずか0.001点差で白井が競り勝った。跳馬は世界体操で初の表彰台。日本勢では78年ストラスブール大会の清水順一以来の金メダルを獲得した。

 

 今大会2冠、3個目のメダルを獲得した白井。五輪を合わせた世界大会でのメダル獲得数は2ケタに乗った。「今年は代表を引っ張るという新しい感覚を覚えることができた。代表の中での立ち位置も変わってきたのかなと思っています」。内村航平(リンガーハット)の負傷により、急遽、日本のエースという重責を背負った。プレッシャーの中で結果を残したことは、今後にとって非常に大きな経験となったはずだ。

 

 名門・日体大に通う21歳の2人が、カナダの地で確かな自信と煌めく勲章を手に入れた。

 

(文/杉浦泰介)