9年目を迎えた四国アイランドリーグPlusは、前期シーズンが大詰めを迎えている。チームの優勝争いとともに、各選手にとっては、これから後期シーズンにかけてNPB行きへの大事なアピールの時期だ。過去、リーグからは育成も含め、ドラフト会議で35選手が指名を受け、外国人でもアレッサンドロ・マエストリ(オリックス)らがNPB入りを果たしている。地域密着の球団運営で、選手育成の場として日本球界にしっかりと地位を築いてきたアイランドリーグは、この先、どんな戦略を描いているのか。鍵山誠CEOに二宮清純がインタビューした。
二宮: リーグからは2005年の創設以来、NPBには毎年、選手を送り込み、角中勝也選手(千葉ロッテ)のように、日本代表に選ばれる選手も出てきました。欲を言えば、彼に続く選手が、もう2、3人出てきてほしいですね。
鍵山: 今、リーグでプレーしている選手や、出身選手には、ぜひ第2、第3の角中目指して頑張ってほしいと願っています。ただし、NPBは12球団しかなく、その中で1軍で活躍できる選手はひと握りです。アマチュアの好素材は高校、大学、社会人から、そのままドラフトで指名されていきます。NPBのスカウトも全国で選手を見てきていますから、隠れた逸材がリーグを経て出てくる確率が今後、右肩上がりで伸びていくとは考えにくいのが現状です。

二宮: 角中選手もブレイクするまでにプロで6年かかりました。NPBで即戦力になる選手を供給するのは難しいものがあると?
鍵山: 特にピッチャーは即1軍で通用するクラスは、独立リーグに来る前に根こそぎ指名されています。上位指名されるような選手がリーグに何人もやってくるというケースは出てきにくいでしょうね。まだ野手のほうがポジションや出場機会の関係で埋もれている選手が多いかもしれません。

二宮: リーグではNPB入りした選手の契約金の2割を、育成料としてもらえるシステムになっていますが、現状は下位指名や育成選手としての入団が多く、経営面でのメリットがあまりない状態です。
鍵山: そこで昨年より外国人を育てて、NPBに売り込むことにも力を入れています。昨季は米独立リーグから各球団2名ずつ選手を獲得し、マエストリがシーズン途中でオリックスに入団しました。海外にまで領域を広げれば、可能性のある選手はたくさんいます。マエストリもイタリア出身ですが、最近は中南米のみならず、ヨーロッパでもおもしろい選手が増えてきました。

二宮: メジャーリーグが先に目をつけていますが、中国やインドといったアジアにもマーケットは広げられそうですね。
鍵山: 実は今回、ミャンマーの選手が香川に入団します。ミャンマーの代表監督を日本人が務めていた縁で、代表チームのピッチャーがやってくるんです。173センチと小柄ですが、サウスポーでもしかしたら化けるかもしれません。野球を世界中に普及し、発展させる上でも、さまざまな国や地域の選手を獲得することも意義があると考えています。

二宮: 外国人が独立リーグ経由で入団する場合、その育成料はどのようにリーグに入ってくるのでしょうか。
鍵山: 外国人選手とは合意の下、NPB入り後、3年間は年俸の一部をリーグ時代の所属球団に支払う仕組みになっています。3年の間に入団した選手が活躍して年俸が上がれば、その分、リーグの球団に入ってくるお金も多くなる。このシステムでNPB入りした第1号が、マエストリ選手なんです。

二宮: となると経営上は、日本人よりも外国人を育て、日本よりも年俸が高いメジャーリーグに売り込んだほうが収入増にはつながるでしょうね。
鍵山: ドラフトを経てNPBに選手を供給することも大切ですが、それだけでは限界があります。いろんなところから選手を集め、さまざまなリーグに供給するモデルを今後はつくっていきたいのです。第一弾として計画しているのは、高知でのウインターリーグ。米国やアジア、そして日本の選手も交えて11月に試合ができればと考えています。

二宮: そこにMLBやNPB、各国リーグのスカウトを集め、ショーケースにするというわけですね。
鍵山: はい。それで選手獲得の暁には、何パーセントかを支払ってもらうかたちになります。現在、リーグの理事で米独立リーグ球団と関わりのある方もいますから、そのつながりで米国から15名前後の選手を呼んでくる予定です。NPBの各球団にも声をかけて、実戦機会の不足している若手や、戦力外になった選手などのアピールの場としても活用してもらえればと思っています。

二宮: 初年度のウインターリーグはどのくらいの規模で実施するプランですか、
鍵山: 4チームをつくって、2週間強で14試合の日程になる見込みです。各チームの監督、コーチは、リーグの各球団で指導している皆さんにオフの仕事のひとつとしてお願いします。お客さんからは入場料をいただき、それが運営費となります。

二宮: ウインターリーグで人が集まれば、地元の経済にもプラスになりますね。
鍵山: 高知の方にプランをお話したところ、行政をはじめ、歓迎ムードでした。うまくいけば2年目以降、チーム数を増やして、もっと大がかりにできるでしょう。このウインターリーグが軌道に乗れば、選手育成はもちろん、経営においてもアイランドリーグのひとつの目玉となるはずです。

<現在発売中の『第三文明』2013年7月号でも、鍵山CEOのインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>