20日、Jリーグは事務局で開いた理事会の決議事項を発表した。J1第11節柏レイソル対鹿島アントラーズ(日立柏サッカー場)で鹿島サポーターが太鼓のばちをピッチへ落とすなどして試合が中断した件について、リーグは鹿島にけん責(始末書提出)の制裁を課した。また村井満チェアマンは、J2第14節愛媛FC対カマタマーレ讃岐(ニンジニアスタジアム)において、愛媛サポーターが英語で「讃岐は邪魔者」と読めるフラッグを掲げた問題にも言及。「差別を助長する表現で看過できない」とし、愛媛側の最終報告を待って処分の有無を検討する考えを明かした。
 鹿島のけん責処分について、村井チェアマンは当該サポーターに試合中断や選手への威嚇などの目的がなかったとしながらも、「(当該サポーターの)不適切な態度により、結果としてピッチへの物の投げ込みで試合を中断させ、その後、同サポーターは警備員に対して暴力行為をはたらいた」ことを問題視。また、鹿島サポーターが過去の柏戦でもトラブルを起こしていたにもかかわらず、クラブがサポーターを管理できなかったとして、今回の処分に至った。

 愛媛対讃岐で起きたフラッグ問題については、愛媛がクラブHPに今回の件の経緯と謝罪文を掲載した。

<5月18日(日)13:00から行われた愛媛FC vs カマタマーレ讃岐戦の試合前において、警備体制の不備もあり、試合前の選手バス到着時に、一部の愛媛FCサポーターがカマタマーレ讃岐の選手バスの前に飛び出し選手バスを止める危険な行動を起こしました。
 また、カマタマーレ讃岐に対する不適切なゲートフラッグを掲げられた事が確認されました。遠くからお越しいただいたカマタマーレ讃岐のサポーターの皆様、愛媛FCを応援にお越しいただいた多くの皆様に大変不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
 現在、事実確認を含め今後クラブの対応、サポーターへの処分などを対応中でございます。
 早急に、今後の対策を含めまして協議していきますので、引き続き宜しくお願いいたします。
 この度は大変申し訳ございませんでした。>(愛媛FC公式HPより引用)

「不適切なゲートフラッグ」には、「SANUKI IS ODSTRUCTIVE」と表記されており、「ODSTRUCTIVE」は「OBSTRUCTIVE」(邪魔)の誤記とみられている。

 昨年まで愛媛と四国ダービーを戦った徳島ヴォルティスのJ1昇格を受け、愛媛対讃岐の一戦は“新・四国ダービー”と銘打たれていた。今回の問題は、新たな熱いダービーマッチ誕生に水を差す事態だ。

 リーグには理事会に出席した愛媛・亀井文雄代表取締役社長から報告があった。しかし、村井チェアマンは更に詳細を調べた上での再報告を要望したという。
 3月には浦和レッズサポーターが差別的内容の掲示物を掲げたとして、浦和には無観客試合という厳罰が下された。愛媛サポーターが掲げた内容は、人種・性別・国籍などを差別したものではない。だが、「SANUKI」という言葉には、クラブのみならず、讃岐に関わる人々を表す意味が含まれているととられても何ら不思議ではない。だからこそ、村井チェアマンは「看過できない表現」と語気を強めたのだろう。

 村井チェアマンは以前、差別撲滅に向けて「サッカーに関わるすべての人の感受性を高めることが重要」と語っていた。クラブが監視の目を光らせ、不適切な内容のフラッグ等を掲示させないことは重要である。しかし、それ以前に、差別的な意識が人々からなくならない限り、問題は根絶しない。必要なのは「RESPECT」の精神である。