第95回東京箱根間往復大学駅伝競走は3日、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの復路5区間(109.6km)が行われた。往路2位の東海大学は8区で先頭に立ち、合計タイム10時間52分9秒の大会新記録で初優勝を果たした。2位に復路優勝の青山学院大学が3分41秒差で、3位には往路優勝の東洋大学が5分54秒差で入った。最優秀選手賞(MVP)にあたる金栗四三杯は8区で区間新記録を樹立し、区間賞を獲得した東海大の小松陽平(3年)が選ばれた。

 

 上位10校までに与えられる来年のシード権は駒澤大学、帝京大学、法政大学、國學院大学、順天堂大学、拓殖大学、中央学院大学までが獲得し、次回大会への出場権を掴みとった。一方、12位の伝統校・早稲田大学は13年ぶりにシード喪失。最多92回出場の中央大学は11位でシード権を得られなかった。

 

“黄金世代”の活躍で東海大が初優勝を果たした。史上3校目の5連覇に挑んだ青学大、5年ぶり4度目の総合優勝を狙う東洋大のライバル校を振り切った。

 

 東洋大は3本柱の奮闘で往路2連覇を果たし、総合初優勝を目指す東海大は2位につけた。5連覇&3冠のかかる青学大は6位と出遅れた。往路から一夜明けて迎えた復路。復路は往路よりも約2km長い。1位と2位の差は1分14秒。決してセーフティーリードとは言えない。序盤の区間での走りがカギを握ると見られていた。

 

 復路のスタートは“山下りの6区”。序盤に上ってからは10km以上下りが続くスペシャリスト区間である。首位・東洋大は2年連続で今西駿介(3年)、2位・東海大は3年連続で中島怜利(3年)、6位からの大逆転を狙う青学大は4年連続で小野田勇次(4年)を起用した。

 

 上記の3人はそれぞれ力を発揮した。先頭でスタートした今西は58分12秒で区間3位。苦しい表情を浮かべながら駆け下りたが、トップを守った。中島は58分6秒で区間2位の走り、その差を6秒縮めた。その2人を上回る快走を見せたのが、前回区間賞の小野田だ。57秒57は区間新記録をマーク。2年連続で“山下りの6区”を制した。

 

 7区は東洋大が主将の小笹椋(4年)、東海大は“黄金世代”の阪口竜平(3年)だ。小笹は前回10区区間賞、4年連続の箱根路を1時間3分45秒で区間3位だったが、阪口がそれを上回る走りで追い上げた。区間2位の1時間2分41秒で、東洋大の背中ははっきりと見える位置につけた。

 

 区間賞は前回MVPの青学大・林奎介(4年)だ。安定したフォームで平塚まで駆け抜けた。1時間2分18秒で順位を2つ上げ、一気にトップとの差を1分27秒縮めた。「去年の記録を超すことができなかったですけど、少しでも追いつくことができたかな」。青学大は2区連続区間賞で、その差を3分48秒とつめてみせた。

 

 平塚から戸塚の21.4km走る8区。平塚中継所でわずか4秒となった両校の差はすぐになくなった。東洋大は鈴木宗孝(1年)、東海大は小松。小松は鈴木の背後にピタリとついた。鈴木もペースを上げて揺さぶろうとしたが、小松を引きはがせない。すると14.6km過ぎに小松が仕掛け、鈴木を突き放した。

 

 ここでトップが入れ替わる。小松は力強い走りで、その差を広げた。1時間3分49秒で区間賞を獲得。22年前の区間記録を塗り替えてみせた。1997年11月生まれの小松が生まれる前の記録である。本人は「まさか自分が大記録を更新するとは思ってもいませんでした」と驚き、「自分でも100点満点の走りができた」と喜んだ。

 

 初の大学駅伝とは思えぬ快走だった。これまで鬼塚翔太、關颯人、館澤享次ら“黄金世代”の陰に隠れていたが、今回はMVP級の活躍だ。一方、東洋大のルーキー鈴木は1時間4分44秒と区間3位と踏ん張ったが、東海大との差は51秒つけられた。

 

 9区は「復路のエース区間」と呼ばれる。2区と並ぶ最長の23.1kmだ。東海大は主将の湊谷春紀(4年)が逃げ切りを図る。最上級生として後輩の力走に応えないわけにはいかない。追いかける東洋大の中村拳梧(4年)に影すら踏ませなかった。区間賞こそ区間新の青学大・吉田圭太(2年)に譲ったものの、区間2位で襷を繋いだ。

 

 東海大のアンカーは郡司陽大(3年)。これで10区間中7人が“黄金世代”の3年生だ。郡司は23kmを一人旅。歓声に後押しされながら、鶴見から大手町を駆け抜けた。東海大は10時間52分9秒の大会新記録を叩き出し、創部59年目でついに箱根制覇だ。

 

 近年はスピードランナーを揃え、優勝候補に挙げられながら頂点に届かなかった。「悔しい思いが一番あった。挑戦を諦めなかった学生たちの姿勢が発揮された」と両角速監督。今回の箱根経験者は8人が来シーズンも残る。“黄金世代”が最終学年となるシーズンは箱根2連覇&3冠を狙いにいくだろう。

 

 10区で東洋大をかわした青学大だったが、最後まで東海大の背中をとらえることはできなかった。それでも復路は5区間中3区間で区間賞を獲り、5時間23分49秒の新記録で制する意地を見せた。東海大と青学大に抜かれ総合3位となった東洋大は、これで11年連続3位以内となった。東洋大は10区間中4年生は3人のみ。来シーズンの大学駅伝も東海大、青学大、東洋大の3強を中心に展開されそうだ。

 

 総合順位は以下の通り。

(1)東海大(2)青山学院大(3)東洋大(4)駒澤大(5)帝京大(6)法政大(7)國學院大(8)順天堂大(9)拓殖大(10)中央学院大(11)中央大(12)早稲田大(13)日本体育大(14)日本大(15)東京国際大(16)神奈川大(17)明治大(18)国士舘大(19)大東文化大(20)城西大(※)関東学生連合(21)山梨学院大(22)上武大

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)