7日、FIG世界体操競技選手権の男子団体総合決勝が中国・南寧で行われ、日本は273.269点で2位に入り、銀メダルを獲得した。優勝は地元・中国が273.369点で6連覇を達成。日本はライバル中国と0.1点の僅差。2004年アテネ五輪以来の団体戦金メダルを逃し、4大会連続の銀メダルだった。3位には前回大会銅メダルの米国が入った。
 悲願の金メダルには、わずかに届かなかった。個人総合世界王者の内村航平(KONAMI)、それに続く存在として期待される順天堂大学3年生コンビの野々村笙吾、加藤凌平と日本屈指のオールラウンダーを3人揃えた。さらには昨年の世界選手権種目別で金メダルを獲った白井健三(岸根高)、亀山耕平(徳洲会体操クラブ)とロンドン五輪代表の田中佑典(KONAMI)とスペシャリスト3人を加えた6人には、34年ぶりの金メダルも狙えるメンバーとの声もあった。だが、表彰台の頂点にはライバル中国が立った。

 予選2位の日本は、同1位中国と同じ組で回ることになった。最初の種目はゆか。まず中国の3人が演技をし、44.766点をマークした。日本のトップバッターは加藤だ。ロンドン五輪の団体メンバーで、昨年の世界選手権個人総合では内村に次ぐ2位に入った。安定抜群の21歳は、得意のゆかでもその力を発揮した。15.266点の高得点でチームに勢いをつけると、続くエースの内村が15.700点を叩き出す。演技の出来栄えを示すEスコアは10点満点で9.100点のハイスコアだった。そして日本3人目はチーム最年少の白井。難度点であるDスコアは7.4点という演技構成で挑んだ。しかし、自らの名前がつく「シライ2」(前方伸身宙返り3回ひねり)で着地が乱れ、ラインオーバー。0.3点引かれた。それでも15.766点が加算され、日本は1種目目を終わって46.732点でトップに立った。

 2種目目はあん馬。日本には世界選手権金メダリストの亀山がいる。今大会は種目別で予選敗退しており、団体戦に懸ける思いは強い。「絶対に落ちない」との意気込みで、持ち味である力強い旋回を見せた。15.300点で加藤と内村にバトンを回した。あん馬でも全体1位の得点を出した日本は、92.073点でトップをキープした。3種目目のつり輪は、第2ローテーションを終えて5位の中国が15点以上を連発。46.532点と一気に得点を乗せてきた。日本は野々村、田中、内村で44.532点とあまり得点を伸ばせず、その差はつめられた。跳馬でも中国に0.3点低い点数。残り2種目で、その差は1.283点となり、敵地・中国ということを考えれば、決して安心はできない数字だ。

 迎えた平行棒。46.324点をマークし、日本にプレッシャーをかける。加藤、田中、野々村の3人は、重圧に負けず美しい演技を披露し、46.032点でしのいだ。特に今大会が初代表の野々村は体線の美しさが映える演技で15.633点。世界選手権デビューでも物怖じせず、自身の良さをアピールした。その差は縮まったものの、日本はトップのまま最終種目の鉄棒に金メダルへの望みをかけた。先に演技をするのは、日本。まずは1人目の加藤だが、金メダルの硬さからか14.200点と得点が伸びない。付けられたEスコアも辛く7.900点と低調だった。ここで順大OBでもある田中が後輩を救う。田中は3年前の世界選手権団体の決勝では落下の大過失を犯している。「3年前は航平さんにつなげられなかった」と、リベンジの意味もあった今回はミスなく15.266点を加算し、しっかりとバトンを内村に渡した。

 日本の最終演技者は、当然、内村だ。美しい演技で観客を魅了した。カッシーナで始まる演技構成は力強く、そして美しい。内村はフィニッシュの伸身新月面の着地をビタッと決め、両手でガッツポーズ。15.400点と王者らしい安定した演技で、日本の総得点を273.269点とした。あとは中国の演技を待つのみだった。中国は1人目が14.758点と伸びなかった。しかし2人目は15.233点としっかり得点を出してきた。あと1人で、その差は15.866点。些細なミスも許されない緊迫した空気の中で、中国選手が鉄棒に臨んだ。日本の選手たちは固唾を飲んで、それを見守った。

「最後の演技は素晴らしかった」と内村が言うほどのパフォーマンスを中国選手は見せた。それをこの大一番でしてくるのが、やはり中国の強さである。Dスコア7.5点という構成で、ノーミス。着地が決まった瞬間、大歓声が沸き、会場のムードは一気にホスト国へと傾いた。掲示された得点は15.966点。まるで帳尻を合わせたように、0.1点差で中国が逆転した。今回主将を務めていた内村にとっては、かねてから広言しているほど団体の金メダルは是が非でも欲しかったタイトルだ。またしても中国に苦汁を舐めさせられた。完全アウェーの状況で、この僅差は悪い結果ではない。だが、0.1点という微差は大過失はなくとも、小さなミスがあったから生まれたものとも言える。

 中国の背中は確実にとらえた。これからライバルを追い抜くには、日本が目指す美しい体操をさらに極めていくしかない。今回の借りは来年の世界選手権の地であるイギリス・グラスゴーで晴らす。

<男子団体総合決勝>
1位 中国 273.369点
2位 日本 273.269点
3位 米国 270.369点