皆様、お久しぶりです。白寿生科学研究所の岸川でございます。


 2019年も早いもので残り1カ月となりました。今年は元号が平成から令和に変わり、スポーツの世界では42年ぶりに海外メジャーを制した女子プロゴルファー渋野日向子選手や、NBAウィザーズからドラフト1巡目(全体9位)指名を受け開幕からスタメンで活躍している八村塁選手などニューヒロイン&ヒーローが出現。そして、ラグビーワールドカップが日本で行われ、日本代表が予選リーグで強豪国を次々と倒し、目標に掲げていたベスト8に入りを果たしました。日本中を、いや世界をも巻き込む一大イベントとなりました。

 

 野球界では今年もホークスが2位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、セ・リーグ覇者のジャイアンツに4連勝し、日本シリーズ3連覇を成し遂げました。前回のコラムに書いたように、私の高校の後輩・阿部慎之助選手が今年限りで引退を表明。ジャイアンツの選手たちは阿部選手と日本一を目指して戦いましたが、力及ばず敗れてしまいました。

 

 試合を観て感じたのは、ホークスの投手力です。先発はもちろん、マックス150キロを揃える強力な中継ぎ陣を含めたディフェンスでジャイアンツの中心打者(特に坂本勇人、丸佳浩の両選手)を封じ込め得点力を半減させました。早いイニングでリードを奪えなかったジャイアンツは終始苦しい戦いを強いられたのではないでしょうか。

 

 さて、日本シリーズが終わると、若手選手たちは宮崎で行われているフェニックスリーグや秋季キャンプへ参加します。

 

 現在、12月と1月は球団主導による練習や監督・コーチによる指導はできなくなっています。これは今からおよそ30年位前に選手会が勝ち取った権利です。故に11月に行われる秋季キャンプが若手の選手を鍛える最後の場となります。そして秋季キャンプが終わると選手たちは体を休め、その後は球団のイベントや納会・契約交渉などを行い、年内に自主トレへと向かいます。

 

 ちなみに私が現役だった20数年前、キャンプが終わるとあまり練習をしていませんでした(笑)。12月は体を休め、年明けから始動していました。全員とは言いませんが、当時はこのパターンの選手が多かったと思います。話を元に戻せば、私は現役時代や裏方のときからずっと思っていたことがあります。それは「なぜ11月まで各球団は練習をするのだろう」ということです。

 

 時代とともにトレーニング方法はどんどん進化しており、果たして昔からやっていることが現代に適応しているのかどうか? 秋季キャンプ後はオフに入る。そうすると秋に頑張ったことが果たして身に付いているのかどうか? そう考えると、そろそろ秋季キャンプのあり方自体を見直す時期に来ているのではないかと感じています。

 

 私案を述べれば、シーズンが終了したら秋季キャンプなどは行わずに、そこから自主トレ期間にすればいいと考えています。これからのオフに必要なのは、球団が管理して"やらせる練習"ではなく、選手自身が考える環境です。どうすれば一軍で試合に出られるのか? 自分に足りないものは何か? まず自己分析し、自分自身で何に取り組むべきかを考え、出した答えに沿ったメニューを決め、そこにどう取り組むか。それが大事です。やらせる練習と比べれば、はるかに効果があるでしょう。
「どうぞご自由に」となれば、中には練習をしない選手もいるでしょう。ですが成績が出なければいずれは戦力外です。練習をするもしないも、そこは全て自己責任。それくらい厳しい世界にいるからこそ、成功すれば高い年俸を手に入れられるのです。

 

 今の選手たちは翌年のキャンプに向け、オフの間もかなり早い段階から体を鍛えています。それこそ秋季キャンプが終わった数日後から練習している選手もいます。練習メニューについても野球の練習だけではなく他の競技を取り入れたり様々なトレーニング方法がある中で自分に合った練習方法を探し、そして取り組んでいます。

 

 球団は縛り付ける環境を用意するのではなく、自己責任の大切さを教えるとともに、自分で考える環境を整えることこそ、球団の役割ではないでしょうか。近い将来、秋季キャンプをしない球団が出てくることを期待しています。

 

 最後になりますが、2019年も小野仁と松修康、岸川のコラムを愛読いただきありがとうございました。2020年もよろしくお願いいたします。皆さま、良い年をお迎えください。

 

 

<岸川登俊(きしかわ・たかとし)プロフィール>
1970年1月30日、東京都生まれ。安田学園高(東京)から東京ガスを経て、95年、ドラフト6位で千葉ロッテに入団。新人ながら30試合に登板するなどサウスポーのセットアッパーとして期待されるも結果を残せず、中日(98~99年)、オリックス(00~01年)とトレードで渡り歩き、01年オフに戦力外通告を受け、現役を引退した。引退後は打撃投手として巨人に入団。以後、17年まで巨人に在籍し、小久保裕紀、高橋由伸、村田修一、阿部慎之助らの練習パートナーを長く務めた。17年秋、定年退職により退団。18年10月、白寿生科学研究所へ入社し、現職は管理本部総務部人材開拓課所属。プロ野球選手をはじめ多くの元アスリートのセカンドキャリアや体育会系学生の就職活動を支援する。


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