3日、第96回東京箱根間往復大学駅伝競走は、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの復路5区間(109.6km)で行われ、往路優勝の青山学院大学が一度もトップを譲らず、10時間45分23秒の大会新記録で制した。2年ぶり5回目の総合優勝。2位は3分2秒差で前回覇者の東海大学、3位には8分57秒差で往路2位の國學院大学が入った。最優秀選手賞に当たる金栗四三杯は、2区で区間新記録を樹立した東洋大学の相澤晃(4年)が受賞した。

 

 上位10校までに与えられるシード権は、帝京大学、東京国際大学、明治大学、早稲田大学、駒澤大学、創価大学、東洋大までが手にした。東京国際大、創価大は初のシード権獲得。11位の中央学院大学は5年連続、13位の拓殖大学は2年連続でのシード権獲得がストップした。

 

 総合順位は以下の通り。

(1)青山学院大(2)東海大(3)國學院大(4)帝京大(5)東京国際大(6)明治大(7)早稲田大(8)駒澤大(9)創価大(10)東洋大(11)中央学院大(12)中央大(13)拓殖大(14)順天堂大(15)法政大(16)神奈川大(17)日本体育大(18)日本大(19)国士舘大(20)筑波大(※)関東学生連合

※OP参加のため順位なし

 

 往路同様に気象条件にも恵まれた今年の箱根駅伝。復路も区間新連発の高速レースとなった。

 

 山下りの6区で驚異的な走りを見せたのは、逆転の連覇を狙う東海大主将・館澤享次(4年)だ。「下りが得意な選手に対し、そこで真っ向勝負しても敵わない。自分の得意な上りとラストで勝負しようと思っていたので最初の5kmは突っ込み気味で入った」。1500mで日本選手権連覇(17、18年)を成し遂げたスピードランナーは前半から飛ばした。

 

 前を走る東京国際大の大上颯麻(1年)をすぐにかわし、3位に浮上した。区間記録を40秒更新する57分17秒の力走で青学大とはスタート時点で3分23秒あった差を、2分21秒に詰めた。「ここまでチームに迷惑をかけてきた。最後の箱根駅伝で主将としての意地を見せたかった。結果が出て良かった」。黄金世代の代表格・館澤は胸を張り、1年生の松崎咲人に襷を繋いだ。

 

 7区は松崎がその差を20秒縮めた。そして昨年は首位交代のあった8区。2分1秒の差をどれだけ守れるかが青学大の、どれだけ詰められるかが東海大の優勝のカギだった。青学大は岩見秀哉(3年)、東海大は昨年8区を走りMVPに輝いた小松陽平(4年)が任された。

 

 区間賞は1時間4分24秒の小松だったが、岩見も区間2位の1時間4分25秒で走った。平塚中継所から戸塚中継所までの21.4kmで、両校の差は2分ちょうど。小松は「1秒しか差を詰められず申し訳ない」と声を震わせた。青学大の岩見は「落ち着いて走ることができた」とリードを力に変え、逆転の流れを食い止めた。

 

 決定打となったのが9区。23.1kmを走る復路のエース区間だ。青学大の神林勇太(3年)が区間記録ペースで快走。追いかける東海大の松尾淳之介(4年)を引き離し、引導を渡す走りだった。1時間8分13秒と区間記録には12秒届かなかったが、初の箱根駅伝で区間賞を獲得した。東海大・松尾は1時間9分55秒の区間8位で、青学大との差は3分42秒開いた。

 

 青学大アンカーの湯原慶吾(2年)は区間5位の走りで、東海大の郡司陽大(4年)の追撃をかわした。最後の直線、大手町で待つメンバーは湯原コールと手拍子で迎える。湯原は右手を掲げてゴールテープを切った。青学大は10時間45分23秒で昨年の東海大が叩き出した大会記録を6分半以上塗り替えた。

 

 10区間中7区間で区間記録が生まれた高速レースを制した。復路の優勝は東海大に譲ったが、4区で先頭に立ってからは最後までトップで走り抜けた。復路は区間3位、4位、2位、1位、5位と終始安定した走り。“やっぱり青学大が強かった”と思わせる戦いぶりだった。原晋監督が名付けた「やっぱり大作戦」は成功に終わった。

 

(文/杉浦泰介)