寂しいゴールデンウイークだった。

 ほとんどの時間を部屋の中で過ごしていた。スポーツ取材を始めてから30余年になるが、こんな経験は初めてである。

 

 例年なら4月29日には、全日本柔道選手権があり、連休の間に数々のスポーツイベントが開催される。だが今年は、コロナウイルス感染拡大により、ほぼすべてのイベントが中止になってしまった。

 

 プロボクシングは、国内において6月いっぱい試合を行わないと決まっている。7月から興行再開の予定だが、これも状況次第で、どうなるかはわからない。

 

 格闘技イベント『RIZIN』も4月19日の横浜アリーナ大会が中止となった。4月2日、RIZINの榊原信行CEOは、「今年の夏に格闘技のメガイベントを開催したい」と話していたが現状を考えると、これも難しそうである。

 

 さて、いつになったら格闘技イベントは再開されるのか?

 実は海の向こうでは、5月10日(現地時間)に再開される。

『UFC249』が、米国フロリダ州ジャクソンビルのVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで行われるのだ。同所において、14日(同)、17日(同)にも『UFCファイトナイト』が連続開催される。

 

 勿論、いずれも無観客試合だが、『UFC249』ではダブルタイトルマッチが組まれている。

▼UFCライト級暫定王座決定戦

トニー・ファーガソン(米国)vs.ジャスティン・ゲイジー(米国)

▼UFCバンタム級選手権試合

王者ヘンリー・セフード(米国)vs.挑戦者ドミニク・クルーズ(米国)

 

 批判的な声も

 

 見応えのある好カードが組まれたうえに、格闘技ファンはファイトに飢えている。おそらくは、PPV(ペイ・パー・ビュー)放送において、かなりの収益が見込めるだろう。UFC代表のダナ・ホワイトは、そう目論んで開催を強行する。

 

「こんな時期に大会を開くのは不謹慎だ!」

 米国内において批判的な声も多くある。

 これに関して良い悪いを言うつもりはない。国内外を問わず、格闘技関係者は難局を打開するための知恵を絞っているのだ。

 

 ただ、格闘技イベントにおいて、無観客試合では“熱”が生じない。観る者に“熱狂”が伝わらないのでは、長くファンの支持を得られるものにならないだろう。超満員のファンが集うアリーナで開かれてこそ、観る者を熱くさせる格闘技イベントが実現するのだ。

 

 ワクチンが開発されるまで、私たちはウイルスと共存しなければならない。時間はかかるだろう。早くても、本格的に動き出せるのは秋以降だ。

 でも、終息を待つしかない。

 ファイター、イベント関係者には、この苦境に打ち勝ってもらいたい。そう切に願う。

 

<追記>

 5月5日に、目黒藤本ジムの会長であった藤本勲氏が他界した。享年78。

 現役時代には、日本ヘビー級初代王座、東洋太平洋ミドル級王座を獲得するなど、重量級キックボクサーとして活躍した藤本氏は、目黒ジムと目黒藤本ジムにおいて長く後進の育成に尽力された。

 私が『ゴング格闘技』編集部に在籍していた1980年代後半から90年代前半にかけては特に取材で大変お世話になった。60年代、70年代の熱きキック界の話を、いろいろと聞かせていただいた。

 情熱にあふれた名伯楽でした。ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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