堀口恭司、朝倉海にリベンジ バンタム級のベルトを奪還 ~RIZIN~
格闘技イベント「RIZIN.26」が31日、さいたまスーパーアリーナで行われた。RIZINバンタム級タイトルマッチは挑戦者で前王者の堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が王者の朝倉海(トライフォース赤坂)に1ラウンド2分48秒でTKO勝ち。堀口が王座奪還に成功し、朝倉は初防衛に失敗した。女子スーパーアトム級王座決定戦は元王者の浜崎朱加(AACC)が山本美憂(KRAZY BEE/SPIKE22)に一本勝ち。1年ぶりに王座に返り咲いた。
そのほかでは那須川天心(TARGET/Cygames)がキックボクシングルールで勝利。11月の「RIZIN.25」でフェザー級タイトル獲得を逃した朝倉未来(トライフォース赤坂)は再起戦でKO勝ちを収めた。
堀口は1年4カ月ぶりの復帰戦、朝倉海とのリベンジマッチを鮮やかなKO勝ちで制した。
2019年8月の「RIZIN.18」で朝倉海にKO負けを喫し、3カ月には右膝前十字靭帯断裂と半月板を損傷した。この年の大晦日、「RIZIN.20」でRIZIN&ベラトールのバンタム級ベルトをかけて戦う予定だったが、試合は流れ、堀口は両王座を返上。朝倉海はマネル・ケイプ(アンゴラ)とRIZINバンタム級王座決定戦を行うこととなった。
朝倉海はケイプに敗戦。今年8月、ケイプのUFC契約により、空位となったRIZINバンタム級王座を扇久保博正(パラエストラ松戸)と争い、奪取した。堀口との再戦は、元UFCファイターを倒すことで海外進出への足掛かりとしたい思惑があった。
“バンタム級最強”の称号を巡る争いは、探り合いの様相を呈した。約1分で堀口のローキックが3発、朝倉海の左足を襲った。「カーフキック」と呼ばれるふくらはぎを狙う蹴り。「2発目くらいから効いていた」(朝倉海)。ダメージは確実に蓄積していた。2分10秒過ぎ、堀口の4発目のカーフキックで入ると、朝倉海の動きが明らかに止まった。
朝倉海は蹴りを嫌がり、自分の距離、タイミングで踏み込めなくなる。間合いは堀口がコントロール。右の飛び膝蹴りで一気に詰めてきた朝倉海にカウンターの右を当てた。そのままパウンドに持ち込み、試合を決めた。TKO勝ちで朝倉海を撃破した。
朝倉海対策のひとつがカーフキックだった。「グラップリングも(対策に)入れていたんですが、向き合った時に“出すべきじゃないな”と思った」。相手が寝技を警戒していると見るや、カーフキック中心の戦い方に絞った。試合後、朝倉海は「蹴ってくることは想定していました」と語ったが、かわし切れなかった。
作戦がピタリとハマり、見事に王座を奪い返した。「ベラトールのベルトも返してしまったので、それをしっかり取りにいきたい」と堀口。バンタム級2冠を視野に入れる。朝倉海とは1勝1敗。朝倉海は「必ずリベンジしたい」と堀口の首を取りにくるつもりだ。堀口vs.朝倉海の第3章はあるのか。2人の今後に注目が集まる。
この日行われたもうひとつのタイトルマッチ、女子のスーパーアトム級は浜崎が山本と対戦した。試合はタックルで山本がテイクダウンを奪う。グラウンドの攻防で浜崎が身体を入れ替え、最後は腕をロックし、両足で首を絞めるセンタク挟みでタップさせた。
18年の大晦日にRIZINの初代女王に輝いた浜崎だが、昨年の大晦日ではハム・ソヒ(韓国)に王座を奪われた。今回はハムが別団体への参戦により、空位となった王座を自らの手で取り返した。「強い選手とやりたい」と浜崎。この日、あい(フリー)に勝利した浅倉カンナ(パラエストラ松戸)もリベンジに名乗りを上げてくるだろうが、浜崎が国内では頭一つ抜け出している印象はある。
RIZINフェザー級タイトルマッチで斎藤裕(パラエストラ小岩)に敗れた朝倉未来は、DEEP同級前王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)を1ラウンド4分20秒でKO勝ちを収めた。「早くやりたい」と朝倉未来は斎藤とのリマッチを熱望。この日勝利したクレベル・コイケ(ブラジル)、萩原京平(SMOKER GYM)も加わるフェザー級戦線が盛り上がりを見せている。
2021年に向けて大きな動きがあったのは、14試合目の後だ。那須川はクマンドーイ・ペットジャルーンウィット(タイ)に判定勝ち。試合直後のインタビューでリングサイドにいたK-1の3階級制覇王者・武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)に「武尊選手、来てくれてありがとうございます。まだ何も決まってないんですけど、一緒に格闘技を盛り上げましょう」と直接語りかけた。
那須川がリングを降り、2人は言葉を交わした。その内容を武尊は「それは最大級の秘密です」と話したが、来場の理由をこう明かした。
「僕の意思表示と、来年実現させるという決意を持ってRIZINに来場しました」
武尊が「来年実現させる」というのは、数年前から取り沙汰されている那須川との一騎打ちだ。1月に武尊がレオナ・ペタス(THE SPIRIT GYM TEAM TOP ZEROS)、2月には那須川が志朗(BeWELLキックボクシングジム)と互いの主戦場とするリングで試合が決まっている。武尊vs.那須川は実現するとしても春以降になることは間違いない。
日程、場所などはまだ何も明らかになっていないが、武尊は「中立なリングをつくってやりたいと思います」と言及した。団体の垣根を越えるファン待望のカードは実現に向け、大きな一歩を踏み出したと見ていいだろう。
(文/杉浦泰介)