東京オリンピック・バスケットボール女子決勝が8日、さいたまスーパーアリーナで行われた。日本代表がアメリカ代表に75-90で敗れた。アメリカはオリンピック7連覇。日本は初の銀メダルを獲得した。銅メダルは前日の3位決定戦を制したフランス代表が手にした。

 

◇決勝

 グリナー、インサイド圧倒で30得点(さいたまスーパーアリーナ)

日本 75-90 アメリカ

【第1Q】14-23【第2Q】25-27【第3Q】17-25【第4Q】19-15

 

 世界No.1という壁は高く、そして分厚かった。1996年アトランタオリンピックから6連覇中のアメリカに一度もリードを奪えないまま、タイムアップを迎えた。

 

 スターティングラインアップは決勝トーナメント初戦から同じ、PG町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)、SG林咲希(ENEOSサンフラワーズ)、SF赤穂ひまわり(富士通レッドウェーブ)、PF宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)、C髙田真希(デンソーアイリス)で臨んだ。ここまでの1試合平均得点は83.6点。アメリカと並ぶトップタイだ。成功率40.9%を誇るスリーポイントと共にいかに得点を重ねられるかが日本の生命線となる。

 

 アメリカは自国の女子プロバスケットボールリーグWNBAのメンバーを揃える。5大会連続オリンピック出場のベテランPGスー・バード、Fアジャ・ウィルソン、PFブレアナ・スチュアートらをスターター起用。ウィルソンは20年、スチュアートは18年のWNBAのMVPプレーヤーだ。身長2mを超えるCブリトニー・グリナーをはじめ、日本に1人もいない身長190cm以上の選手がロスターには5人もいる。高さでは圧倒的不利である。

 

 第1Qはアメリカの高さと圧力に屈する。アウトサイドの林、宮澤を厳しくマークされ、インサイドからのシュートはことごとく長身選手に阻まれた。手の長いアメリカの守備にも苦しみ、シュート成功率18分の4と苦しんだ。守ってはグリナーの高さ、強さにゴール下の主導権を握られた。14-23と9点ビハインドで第2Qを迎える。

 

 日本は第1Q途中から投入したPG本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)がスリーポイントを決め、流れを引き戻そうとした。第2Qは25得点を奪ったが、アメリカは27得点。その差は広がった。アメリカにインサイドを圧倒され、人数をかけるとアウトサイドがフリーになり、スリーポイントを沈められる。日本の頼みの綱であるスリーポイントが決まらず、点差は広がるばかりだった。

 

 第3Qは17-25で、20点近い差がついた。第4Qこそ19-15と差を詰めたが、アメリカを慌てさせるには至らなかった。75-91でタイムアップ。日本の快進撃はここで止められた。アメリカは7連覇を達成。オリンピックでの敗戦は92年バルセロナ大会まで遡らなければいけない無敵の強さを埼玉でも発揮した。日本のフィールドゴール成功率は36%。今大会40%を超えていたスリーポイント成功率も26%。厳しい言い方をすれば、これでは勝ち目はなかった。

 

 それでも史上初の銀メダル獲得という輝きが色褪せることはない。サイズに頼らないスリーポイントとスピーディーなオフェンス。そして40分間走り抜く粘り強いディフェンス。“ジャパンズ・ウェイ”を追求したトム・ホーバスHCのバスケットは、世界を驚かせ、日本を沸かせた。日本にはここで得た自信で、更なる飛躍を期待したい。来年にはオーストラリアでのW杯を控えている。今後は日本への警戒は厳しくなるはず。オリンピックの躍進はフロックではない。それを証明することが、3年後のパリに向けての最初の関門となる。

 

(文/杉浦泰介)