大坂谷明里(陸上・棒高跳び選手/愛媛県競技力向上対策本部)最終回「身近にいる“日本一の存在”」
大坂谷明里は園田学園女子大学進学後、1年時(2021年度)に日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)で優勝した。好スタートを切ったものの2年時は2位、3年時は2位、最終学年でも3位と4連覇の目標には届かなかった。
「今思えば、負けたからといって死ぬわけじゃないんだから、もっと楽しんで臨めば良かった。順位ばかり狙い過ぎていた気がします」
毎シーズン更新していた自己ベストも大学2年時に止まった。「その年は自分が競技に対する気持ちが抜けていたのかなと思います」。だが彼女は前を向いている。
「でもその時期があったから今がある。後悔はしていません」
3年時は4m13、4年時は4m20で自己ベストを塗り替えてみせた。4年時は日本陸上競技選手権大会で2位に入り、初めて同選手権で表彰台に上がった。
この春、大坂谷は園田を卒業、愛媛県競技力向上対策本部所属となり、拠点を東京に移した。愛媛県競技力向上対策本部は<「スポーツ立県えひめ」の実現に向け、競技力の更なる向上や地域スポーツの振興等を図るため、優れた競技力や指導力を有する者を「スポーツ専門員」として採用>(愛媛県HP)している。
所属選手は陸上競技だけを見ても、この夏、東京で開催する世界陸上選手権大会(世界陸上)の日本代表に内定している男子やり投げの﨑山雄太、男子110mハードルの野本周成らトップアスリートが名を連ねている。園田との縁もあり、大坂谷の1期上の三浦愛華(女子短距離)、同期の安達茉鈴(同)も所属している。
園田は毎年合宿を愛媛で行う。「私が愛媛県競技力向上対策本部に入ったのは、愛媛の子と同期で仲が良かったし、愛媛が好きだからです。全く知らない土地だったらたぶん選んでいなかったかもしれません」。加えて練習拠点を選べる点も大きかった。
最大の目的は東京にあった。女子棒高跳び日本記録保持者(4m48)の諸田実咲と一緒に練習できる環境、その諸田を指導する田中成コーチに教わることができるからだ。コーチの田中とは園田時代に教えを乞うたことがあった。
「大学3年生時に、卒業後に『コーチをお願いしたい』という話をしました。大学在学中も、リモートで見ていただき、アドバイスをもらいました」
田中の指導は、大坂谷曰く、「全体的に見るスタンス。だから跳躍だけじゃなくて、スプリント系の練習に限らず、練習の態度や食事面のことも気にかけてくれます」と細部に渡るという。もちろん競技面に繋がるものだからこそ、田中も口うるさく指摘するのだろう。そこには田中の「応援される選手になってもらいたい」という思いも込められている。
意識の変化で記録も安定
大坂谷本人は学生時代と比べて「アスリートっぽくなりました」と意識の変化を口にする。
「陸上をしてお給料をいただけるという点が変わりました。結果を出せなければ、もちろん生きていけない世界。学生の時とは違う責任感が生まれてきていますし、練習の質も変わったと思います。メンタル面において試合での差が結構なくなってきました。いつでも同じようなメンタルの状態で跳べるから、記録にもムラがなくなったのだと思います。身体のケアや食事面をきちんとするようになってからは、身体が重たいと感じることもあまりなくなりました」
生まれ育った関西を離れ、慣れない土地に身を置くことになっても落ち込むことはないという。
「一緒に練習している選手がすごいから。悪い方には引っ張られません」
その「すごい選手」である諸田から一番刺激を受ける点は、意識の高さだという。
「とにかく覚悟がすごいんです。ずっと陸上のことを考え、練習に取り組んでいる姿を見ていますから、実咲さんには見習いたいところがたくさんあります」
5月の木南道孝記念陸上競技大会(木南記念)では諸田が4m40で優勝、大坂谷が4m20で2位と続いた。大坂谷にとっては2月にマークした自己ベストに並ぶ好記録。だが、諸田はその上をいった。
6月には韓国・クミで行われたアジア選手権大会に諸田と共に日本代表として出場した。諸田は4m13で3位、大坂谷は3m98で6位。
「全然悔しかった。コンディションが悪かったとはいえ、もっとできたなという気持ちが強いですね」
初のジャパンのユニホームを着て臨んだ大会。大坂谷にとっては初の海外遠征でもあった。国際大会の経験豊富な諸田の存在は有難かったという。
「もっとパニくるかなと思ったけど、実咲さんが一緒にいたので安心でした。わからないことあったらすぐ聞けるし、海外に慣れている姿を見たら、自分も冷静になれました」
今は後塵を拝しているが、もちろんそれで良しとする気は更々ない。
「練習でも、実咲さんの方が圧倒的に勝っている。まだ“勝とう”と言えるレベルではない。ただ実咲さんより早く(4m)50を跳びたいという気持ちはあります」
まだ23歳。棒高跳びを始めて8年目。本格化はまだこれからか。「今は何が一番ベストなのか探っていければいい」と大坂谷。コーチの田中も「伸びしろはかなりあると思います。今、日本女子の棒高跳びで世界と戦えているのは諸田だけ。その次に誰が活躍できそうかと言われれば、間違いなく大坂谷だと思っています」と期待を寄せる。自身の記録を跳び越えていく先に、日本記録、そして世界大会出場という景色が視界に入ってくるはずだ。
(おわり)
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<大坂谷明里(おおさかや・あかり)プロフィール>
2002年4月10日、兵庫県小野市出身。小学4年生から陸上を始める。小学生時は走り高跳び、中学生時は走り高跳びと四種競技。社高校で棒高跳びを始める。高校2年時、全国高校総合体育大会(インターハイ)で同種目4位入賞(3m80)。園田学園女子大学進学後は1年時に日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)優勝(4m00)。大学4年時は日本学生陸上競技個人選手権大会で優勝(4m15)。24年の日本選手権では2位(4m10)に入った。25年2月、香川室内跳躍競技会で当時日本歴代10位タイとなる4m20をマークして優勝した。この春から愛媛県競技力向上対策本部に所属し、東京に拠点を移した。アジア選手権では6位入賞(3m98)。日本選手権では自己ベストタイの4m20を記録し、2年連続2位。身長162cm。
(文・そのほかの写真/杉浦泰介、跳躍写真/本人提供)
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