二宮: 以前、キャプテンの遠藤隆行選手に聞いたのですが、車椅子バスケットの選手をスカウトに行ったとか...。

中北: はい、そのようです。私も日本選手権など、大会会場に行ってバスケット協会の方々にご協力をお願いしたりしています。実際、バンクーバー後にバスケット経験者が2人ほど入ってきました。

 

二宮: 現在、国内におけるアイススレッジホッケーの競技人口はどれくらいですか?

中北: OBなども含めて、50名弱ですね。その中で、実際に活動しているのは30名です。

 

二宮: それほど少ないとは......。しかし、逆に考えれば、本腰を入れれば日本代表に入りやすいとも言えます。

中北: そこなんです。代表登録15名に加えて補欠要員を2名選ぶことができるので、計17名を連れて行くことができるんです。

 

二宮: 他のどの団体競技よりも金メダルに近いところにいるわけですから、スカウトする際には、いいアピールになりますね。

中北: はい。ですから、「次は金メダルが獲れますよ」というふうに言ったりしているんですけどね(笑)。それでも、なかなか集まらない。もっと大々的にアピールしていかないといけないですね。

 

二宮: しかし、底辺がそこまで小さいと、トップのレベルアップは容易ではない。そんな中、よく銀メダルを獲得したなと改めて感心してしまいますね。

中北: ありがとうございます。ただ、今のような競争原理が全く働かない状態では、いつか息切れしてしまうことは目に見えています。今のままではソチでの日本の平均年齢は確実に40歳となるわけで、やはり元気な若手が少なくとも5人は欲しいですね。

 

二宮: 子どもの頃からやっていると、また違うんでしょうね。

中北: そうなんです。実は今、13歳の選手が一緒に練習しているんです。吸収が早くて、どんどん伸びてきているんです。数年後が楽しみですよ。

 

 成長著しい韓国

 

二宮: メンバーの新陳代謝が進まないこともあり、バンクーバー以降は苦戦が続いています。

中北: はい。キャプテンの遠藤隆行が1年間入院したり、エースキーパーの永瀬充が休養していたこともあって、この2年間は新しい選手を育成することでチームの"ディベロップメント"をテーマにしてきました。それがなかなかうまくいかなかったというのが正直なところです。

 

二宮: 直近の大会としては今年1月、長野で行なわれた「ジャパンアイススレッジホッケーチャンピオンシップ」ですね。ノルウェー、カナダ、韓国、日本の4カ国が対戦したこの大会で、日本は韓国に3位決定戦で敗れて最下位に終わりました。

中北: 本当にお恥ずかしい限りです。予選ではノルウェーと韓国に勝って2位で通過したのですが、決勝ラウンドではそのノルウェーと韓国に敗れてしまいました。疲労が残っていたのかもしれませんが、決勝ラウンドでの選手たちは勝つ意志が他チームより劣っていたように、私には見えたんです。「これはまずい。一から立て直さないといけないな」と痛感させられた大会でしたね。

 

二宮: それにしても、韓国がメキメキと力をつけてきていますね。

中北: そうなんです。韓国はパラリンピック競技専用のナショナルトレーニングセンターをつくるなど、非常に力を入れているんです。ですから、各競技で驚異的に伸びてきている国の一つが韓国なんです。

 

二宮: 韓国はピョンチャンが2018年のオリンピック・パラリンピック開催地ですから、それに向けての強化が図られているんでしょうね。

中北: はい。日本もうかうかしていると、韓国に差をつけられることになりかねません。これからは一企業が支えるのではなく、国レベルで考えていかなければいけないと思います。

 

(第5回につづく)

 

中北浩仁(なかきた・こうじん)プロフィール>

1963年9月28日、香川県生まれ。6歳でアイスホッケーを始め、中学ではアイスホッケー部に所属。中学3年時には西日本選抜チームに選出され、全国大会に出場した。卒業後はアイスホッケーの本場であるカナダの高校、米国の大学へと留学した。プロを目指していたが、大学4年時に右ヒザ靭帯を断裂し、選手生命を絶たれた。大学卒業後は帰国し、日立製作所に就職。2002年よりアイススレッジホッケー日本代表監督を務め、06年トリノ大会では5位、10年バンクーバー大会では銀メダル獲得に導いた。

日本アイススレッジホッケー協会 http://www.sledgejapan.org/


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