(写真:多くの人が集まり、盛況だったファン感謝祭)

 2日、男子プロバスケットボールリーグの「B.LEAGUE」川崎ブレイブサンダースが2017-18シーズンのファン感謝祭を神奈川・東芝小向体育館で開催した。ファンクラブ会員のみが参加できる今回のイベントには1000人以上の応募があり、当選した約400人のファン・ブースターが選手・スタッフと交流を深めた。

 

 普段は川崎の練習場となる東芝小向体育館。試合が近くなれば緊張感を漂わせるコートもこの日ばかりは和やかなムード一色だった。会場に足を運べなかったファン・ブースターのため、イベントの模様は動画でも届けられた。選手たちにとってはシーズンを共に戦った“仲間”に感謝の気持ちを伝える場でもある。

 

(写真:チアリーダーのBTCは特別編成でのパフォーマンス)

 イベントはチアリーダーBTCのダンスショーで始まり、キャプテンの篠山竜青の開会宣言で幕を開けた。レギュラーシーズンのホームゲームで、アリーナMCの高森てつ氏、アシスタントMCのお笑い芸人・上々軍団が進行役を務めた。来場者は8チームに分けられ、そこに選手・スタッフが加わり、ゲーム形式で『ふれあいイベント』は行われた。フリースロー、玉入れで競う。まるで運動会のような“お祭り”だった。

 

 アナリストとアシスタントコーチによる戦術解説講座も開かれた。岩部大輝アナリストはデータを提示して今シーズンの分析結果の一部を説明。佐藤賢次アシスタントコーチは映像を交えて、プレーを解説した。約20分間の講義は好評で、「すごく面白かった。もっとやってほしい」との要望も聞こえてきた。この日のイベントは終了予定時刻を約1時間過ぎるなど盛況だった。最後は選手、スタッフ、チアがファン・ブースターを見送る形で終えた。

 

 約8カ月間に渡ったシーズンは、アルバルク東京がB1を制し、MVPにはシーホース三河のエース比江島慎が輝いた。東京ら強豪が揃う激戦区東地区を戦い抜いた川崎はレギュラーシーズン地区3位。ワイルドカードでチャンピオンシップ(CS)1回戦で千葉ジェッツ船橋に敗れた。

 

(写真:イベントを盛り上げた上々軍団はメジャーデビュー曲『仲間』を披露)

 シーズン無冠に終わったものの、川崎の熱は着実に高まってきている。B.LEAGUE初年度は前年比244%を記録した観客動員を今シーズンはさらに125%に伸ばした。増したのは数だけではない。川崎市出身の上々軍団は昨年3月より、とどろきアリーナの盛り上げ役を担っている。ボケ担当のさわやか五郎は「昨年に比べてお客さんの雰囲気も明らかに変わりました。アリーナでの盛り上がりも倍以上に熱くなっている」と実感を口にする。

 

 クラブの広報担当によれば、昨シーズンのCSファイナル栃木ブレックス戦の影響は大きいという。中立地の東京・代々木第一体育館での開催にも関わらず、客席の多くを占めたのが栃木のチームカラー黄色だった。川崎はホームアリーナのような声援に後押しされた栃木に惜敗し、初代王者の栄冠を逃した。

 

(写真:終了後は選手、スタッフ、チアが来場者を見送った)

“この悔しさを忘れない”という思いは選手だけでなく、スタッフの胸にも刻みこまれた。マーケティングに力を注いだことも今シーズンの動員アップの一因となっている。千葉とのCSはアウェイだったが、多くの川崎ファン・ブースターが詰め掛けた。試合には敗れたものの、チームに対する熱量は勝るとも劣らないものだったという。

 

 そして来シーズン、クラブは大きく変化する。運営母体が東芝からDeNAに移る。コート上では6月2日時点で、インサイドを支えたジョシュ・デービス、野本建吾ら5人の選手がクラブを去る。辻直人は「プロチームとしては仕方がないのかもしれませんが、正直、寂しい思いしかありません」と仲間との別れを惜しんだ。

 

(写真:ファジーカスを生かすためにはインサイドの選手との連系強化も必須)

「プロのチームになっていろいろな変化がある。来シーズンに向けて、変わらなきゃいけないところ、変えてはいけないところを整理して頑張ります」

 そう篠山がファン・ブースターの前で口にしたようにすべてを変えるわけではない。篠山と辻、そして得点源のニック・ファジーカスは残留する。リーグ3位の得点力(1試合平均82.4点)を挙げたオフェンスユニットは今後も彼らが軸となるだろう。

 

 ファジーカスは身長210cm、体重111kgの巨漢だが、柔らかなボールタッチと広いシュートエリアを誇る点取り屋である。昨シーズンはMVP&得点王&ベストファイブ、今シーズンはリバウンド王とベストファイブのタイトルを獲得した。大島頼昌通訳によれば、「絶対に手を抜かない。練習後はほぼ毎回自主練をしている」という真面目な性格の持ち主。一途に積み重ねてきたシュート練習が多彩なゴールパターンを生んだ。ファジーカスは今年4月に日本国籍を取得し、帰化選手となった。外国人枠には制限があるため、来シーズンは新外国人選手獲得を含め、彼の起用法の幅も広がるはずだ。

 

(写真:藤井<手前左>の貢献度は高く、篠山<右>の代役としても活躍)

 藤井祐眞は飛躍を遂げた選手のひとり。ポジションは司令塔・篠山と同じポイントカードだ。篠山の代わりを務めることあれば、篠山とツーガードを組むこともある。スタメン起用は少ないが、レギュラーシーズン60試合全てに出場。CSでも攻守に渡ってチームに貢献した。

 

 昨シーズンよりもプレータイムを伸ばし、日に日に存在感は増している。今シーズンの活躍が評価され、ベストシックスマン賞を受賞。

「スタメンで出た時、控えに出た時の役割がある。僕がその役割をしっかりこなした結果が賞に繋がったので、素直にうれしいです」

 

 藤井はスピードや得点力だけでなく泥臭いプレーが持ち味だ。「ディフェンスでアグレッシブに当たったり、オフェンスでもプッシュしたりかき回す。ルーズボールへのハッスルプレーは誰にも負けたくないです」。川崎がチャンピオンリングを目指す上では、今後も藤井の活躍は欠かせない。泥臭く、逞しく。更なる成長が期待される。

 

 来シーズンの川崎は本拠地、ホームアリーナなどは継続するが、大きな変化が予想される。“新生・川崎”の動向に注目だ。

 

(文・写真/杉浦泰介)