7日(現地時間)、ソチパラリンピックが開幕する。今大会には45カ国・地域から約750名の選手が集結。アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、アイススレッジホッケー、車いすカーリングの5競技72種目で、10日間にわたって熱戦が繰り広げられる。日本からはアルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロンの3競技34種目に20名の選手が出場。計10個のメダル獲得が目標だ。

 エースが狙う“4度目の正直”

 バンクーバーで金1、銀1、銅5、計7個のメダルを獲得したアルペンスキーでは、ソチでもメダル量産が期待されている。特に1本のスキー板にシートを付けたチェアスキー(シットスキー)を使用する座位(シッティング)カテゴリーは、全種目でのメダル獲得の可能性もあるほど、日本人選手のレベルは高い。なかでも、森井大輝(富士通セミコンダクター)、狩野亮(マルハン)、鈴木猛史(駿河台大学職員)の3選手は、W杯や世界選手権で常に表彰台に上がっており、スピード、技術ともに世界のトップクラスだ。

 今大会、日本選手団の団長を務める森井は、2002年ソルトレイクシティー、06年トリノ、10年バンクーバーに続いて4度目の出場だ。トリノでは大回転で銀メダル、エースとして臨んだバンクーバーでは滑降で銀メダル、スーパー大回転で銅メダルと、これまで3つのメダルを獲得している。11−12シーズンにはW杯総合チャンピオンになるなど、常に世界のトップに君臨してきた森井だが、未だパラリンピックでの頂点には立っていない。それだけに「喉から手が出るほど欲しい」と金メダルへの思いは誰よりも強い。

 森井のスキー操作の技術は、日本人選手の中でもずば抜けている。もともと定評のあるカービングターンはバンクーバー後、さらに磨きをかけてきた。どんな難所においても正確にライン取りを行ない、安定した滑りを見せる。種目によって得意、不得意がなく、過去の国際大会では全種目でメダルを獲得しているオールラウンダーだ。「今大会ではスポーツのもつ力をひとりでも多くの人に知ってもらいたい。そのためにも僕自身が金メダルを獲得したい」と決意を新たにする。

 高速系・狩野&技術系・鈴木

 森井が目指すのは、個人の目標だけではない。“日本人表彰台独占”というチームジャパンとしての目標も、森井が掲げたものだ。ポスト森井として期待されているのがバンクーバー金メダリスト(スーパー大回転)の狩野、そして昨シーズンW杯総合チャンピオンの鈴木である。今や森井と並び、ともに日本の“3大エース”と言っても過言ではない。

 高速系が得意な狩野は、4年前のバンクーバーではスーパー大回転で金メダルに輝いている。今大会も本番にピークをうまく合わせてきており、今年2月にイタリアで行なわれたW杯最終戦、スーパー大回転では全2戦で優勝。大回転でも2戦とも2位に入るなど絶好調だ。2大会連続での金メダルへの期待がますます膨らむ。

 狩野は今大会の見どころをこう語る。
「ソチのコースは、僕がこれまで経験してきた大会史上、最も難しい。正直、何が起こるかわからない。選手にとっては非常にやっかいなコースです。ただ、観ている側にとっては、これ以上面白いレースはない。チェアスキーの迫力やスピード感を存分に味わえるはずです」

 一方、鈴木は回転、大回転といった技術系を得意としている。両手に持つアウトリガーでポールをなぎ倒す高度なテクニックを持つ鈴木は、よりスキー板を下に落とすことができ、故にスピードが落ちない。また、体幹が100%きくため、どんなに荒れたコースでもすぐさま体勢を整えることができる。

「荒れれば荒れるほど、僕にとっては優位だと思っています。たとえ溝にひっかかって飛ばされても、空中で姿勢を戻すことができる。だから着地してから身体のポジションを修正するのではなく、着地した時には既に次のターンに向かって行くことができる状態にある。そのために他の選手よりもロスなく、安定して滑ることができるんです」

 ソチオリンピックの回転では、トップ選手たちが次々とコースアウトしていたことからも、ソチの雪質がいかに水分を多く含み、やわらかいかは一目瞭然である。それが逆に、鈴木にとってはチャンスとなる。

 森井、狩野、鈴木が狙う“日本人表彰台独占”の可能性が最も高い種目が、スーパー大回転だ。1998年長野大会のアイススレッジスピードレース以来となる、3つの日の丸を掲げることができるか――。日本時間の9日14時55分からの生中継を今から楽しみにしたい。

 久保、金メダルへ身に付けた“爆発力”

 クロスカントリースキーと射撃を組み合わせたバイアスロンでは、座位カテゴリー・久保恒造(日立ソリューションズ)の金メダル獲得が期待されている。バイアスロンはショート(男子7.5キロ、女子6キロ)、ミドル(男子12.5キロ、女子10キロ)、ロング(男子15キロ、女子12.5キロ)の3種目がある。久保は全種目に出場し、3つのメダル獲得を目指す。

 射撃を得意とする久保は昨シーズン、合計180発中175発を命中させた。「命中率の高さなら誰にも負けない」と、本人も絶対の自信を持っている。しかし、初めて出場したバンクーバーではミドルでの6位が最高位で、メダル獲得には至らなかった。クロスカントリーでの走力において、表彰台を独占したロシア勢に歯が立たなかったのである。そこで昨シーズンから取り入れたのが、専門家のアドバイスを受けての科学トレーニングだ。もともと車椅子マラソンのランナーでもある久保は、スタミナには自信を持っていた。それでもロシア勢に勝てなかったのは、なぜか。久保が言うには「勝負どころでの爆発力」の違いにあった。

「科学トレーニングを取り入れるにあたって、まずは定期的に体力を測定して、自分の持っている能力を数値化したんです。そこでわかったのが、瞬発力の不足でした。もともと持久系には強いので、最初から最後まで一定のペースを保って滑り続けることは得意でした。一方、ロシアの選手たちは持久力に加えて、ラスト1周、“ここが勝負だ”というところで、ポーンとギアをもう一段上げることができるんです。それが僕にはなかった」

 ソチを目指して久保は、短い距離での走り込みを行ない、瞬発力を養ってきた。その成果は早くもあらわれる。昨シーズン、日本人初の年間総合チャンピオンに輝いたのだ。「全3種目での表彰台」を狙う久保だが、最も金メダルに近いのがミドルだ。日本時間の11日14時55分から生中継で放送される。

 そのほか、クロスカントリーでは立位(スタンディング)カテゴリーでバンクーバー金メダリストの新田佳浩(日立ソリューションズ)も、ソチ本番に合わせて調子を上げてきており、2大会連続でのメダル獲得も十分に可能である。女子では、トリノで銅メダル(バイアスロン・ロング)、バンクーバーではで銀メダル(クロスカントリー・クラシカルスプリント)を獲得した立位カテゴリーの太田渉子(日立ソリューションズ)に注目したい。11−12シーズンはクロスカントリーでW杯年間総合ランキング2位、昨シーズンはバイアスロンで同3位となっている。開会式で旗手を務める太田。悲願の金メダル獲得で、自ら日本選手団に勢いをもたらしたいところだ。

 4年前のバンクーバー大会で日本は、長野大会を除いては、国外開催として冬季史上最多の11個のメダルを獲得した。しかし、ソチではバンクーバーで銀メダルに輝いたアイススレッジホッケー、同大会で初出場を果たした車いすカーリングの団体競技ともに出場権を逃している。それでもバンクーバーに並ぶ「金3、銀3、銅5を含む、計10個のメダル獲得を目指す」と、日本選手団は意気軒昂だ。ソチオリンピックにひけをとらない熱戦を期待したい。

 日本初! ソチパラリンピック専門チャンネルを24時間放送! 生中継60時間を含め、200時間連続放送!!
 中継では選手の競技技術の高さ、感動の瞬間、闘い抜く勇気をありのままお届けします。

↓放送スケジュールなど詳しくはバナーをクリック↓



 スカパー!のチャンネルまたはパック・セット等のご契約をされている方は、無料でお楽しみいただけます。
 ご加入いただいていない方も、まずは「2週間お試し体験」にお申し込みいただくことで、期間中、無料でお楽しみいただくことができます。
 またスカパー!オンデマンドならPC・スマホ・タブレットで、いつでもどこでもお楽しみいただくことができます。


※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。 
◎バックナンバーはこちらから