金子達仁

スポーツライター

バルサ圧勝の背景にバックパス“否定”の歴史

 試合後、バルセロナのグアルディオラ監督は言った。「この勝利をチャーリー・レシャックとヨハン・クライフに捧げたい。彼らが私たちの進むべき道を示してくれたからだ。この勝利は、チームが15年間かけて成長させたフットボールのスタイルがもたらしたものだ」  この言葉は、若き監督による先達へ向けた社交辞令、では断じてない。5−0。世界を驚かせたレアル・マドリード相手の圧勝劇は、まさに、バルセロナというチームの歴史がなければ起こりえないものだった。

日本サッカー育成のカギ握る「大学」の存在

 これが一時的なもの、突発的な出来事だというのであれば、何も心配する必要はない。あくまでもJを徹底して重視するスタイルを貫けばいい。  だが、変化の始まりである可能性はないだろうか。高校3年生の段階ではJのスカウトのふるいから落とされ、大学生になって頭角をあらわした選手が、五輪代表のエースとして君臨するケース――つまり福岡大・永井謙佑のケースである。

大学スポーツの力、侮りがたし

 バルセロナ五輪の予選に挑んだ日本代表は、大学生を主体としたチームだった。中盤の柱となったのは東海大の澤登正朗、ケガ人の出た最終ラインをまとめたのは早稲田の相馬直樹である。GK下川健一、DF名良橋晃、FW藤吉信次など、プロアマ混合の日本リーグでプレーしている選手もいたが、あくまで、大学生が多数派を占めるチームだった。

早すぎる2点目は「毒」だった

 サッカーは怖い。あらためて痛感させられたナビスコ杯決勝だった。  前半の試合内容は、はっきりいってかなり低調だった。無理もない。広島は勝ったことがない。磐田は久しく勝っていない。どちらのチームも、このタイトルに並々ならぬ思いを抱いており、それゆえ、どちらのチームも極端にリスクを恐れた。結果が、単調な縦パスの応酬だった。

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