音符に託した挑発的メッセージ

 1960年生まれの筆者にとって70年代の記憶は今なお鮮明だ。たとえばスポーツ、たとえば音楽、たとえば事件。あさま山荘事件の一部始終は小学校の視聴覚教室で見た。長嶋茂雄の引退セレモニーでの名ゼリフ「我が巨人軍は永久に不滅です」にはジンとした。そして街にはポップスがあふれていた。

選手の力引き出した愛情と信念

 日本シリーズ最終戦、スタメン9選手の年俸総額は巨人17億250万円、埼玉西武は5億5500万円(いずれも推定)。西武は巨人のおよそ3分の1。しかし最終戦に勝ち、シリーズを制したのは西武だった。  昨季、5位のチームを就任1年目で日本一に導いたのだから、渡辺久信監督の手腕はどれだけ褒めても褒め足りない。シリーズ最終戦で同点のホームを踏んだ片岡易之は死球で出るなり二盗を決め、三塁からはリスク覚悟の“ギャンブルスタート”を決めた。失敗を恐れず、前向きに仕掛け続ける西武の選手たちは生き生きしていた。

「賢い患者」こそが医療を進歩

 ヤブ医者の多い病院ほど儲かる―。医療界の人間からこう聞いたことがある。評判が悪くなって客足が落ちれば利益は減ると思っていたが、事はそう単純ではないらしい。本書はこう明かす。<腕のいい医者が治療して患者が早く退院すると、治療期間が短い分、請求できる医療費は少なくなる。一方、患者の回復が遅くて入院が長引くほど、医療費は高く請求できる>。そういう仕組みだったのか。

「影武者」の真相に迫る

 「影武者」と聞いて、まず頭に浮かんだのが戦国武将の武田信玄だ。黒澤明の映画の印象が強すぎるせいかもしれない。「影武者」は徳川家康にもいた。外国に目を転じるとナポレオン、ヒトラー、スターリン…。権力者、とりわけ独裁者が「影武者」を起用したのは暗殺を恐れたからだ。自らの死後、権力が不安定化するのを未然に防ごうとした場合もある。

朝青龍育てた親方の胸の内

 昨年、世間をにぎわせた「朝青龍騒動」について、感想を求められると、私は次のように答えた。――日本相撲協会は公益法人である。巡業は大切な公益事業のひとつである。理由はどうあれ、公人である横綱が公務をサボったことは許されない。ただ相撲協会が課した罰則はあまりにも重過ぎる。朝青龍は法を犯したわけではない。“軟禁生活”を強いた結果、病状が悪化すれば人権侵害と受け取られかねない。

地域密着型球団の健闘

 参入1年目は38勝97敗1分と散々だった楽天が、4年目の今季は17勝14敗(2008年4月30日現在)と大健闘している。とりわけ本拠地のKスタ宮城では13勝1敗と圧倒的な強さを誇っている。地元の熱い声援が生み出したひとつの現象とみていいだろう。

サッカー界の異端児の哲学

 昨年11月、サッカー日本代表監督イビチャ・オシムが急性脳梗塞で倒れ、意識不明の状態に陥った時には、復帰について悲観的にならざるをえなかった。ところがオシムは「奇跡の回復」をとげ、この1月にはスタジアムに足を運べるまでになった。日本協会はオシムに新ポストの就任を要請した。

悩む前に動け!

 人生にだって寿命というデッドラインがあるのだから、仕事にデッドラインがあるのは当然だ。ところが、この国では朝から晩まで仕事をしている人間がもてはやされ、模範的社員と言われたりする。<「時間をかけないと仕事の質が落ちる」というのは、単なる思い込みにすぎない>。著者はこう喝破する。

脱・サラリーマン的コーチのすすめ

 プロ野球のキャンプが始まった。実績のあるベテランにとっては調整の場だが若手は首脳陣に自らの成長をアピールしなければならない。そこで問われるのがコーチの能力だ。  著者は書く。「人を育てるというのは教える側と教わる側の共同作業である」。選手の向上心と指導者の情熱、技術が結合してはじめて成果は得られるというわけだ。

打たせて取る究極の配球

 かつてプロ野球には杉浦忠(故人)、秋山登(故人)、皆川睦雄(故人)、山田久志、足立光宏らアンダースローの大投手がたくさんいた。ところが昨今、下手投げのエース級といえば著者である千葉ロッテの渡辺俊介くらいのものである。本人の言葉を借りれば「絶滅危惧種」。私に言わせれば「無形文化財」である。

スポーツビジネスの未来暗示

 楽天球団が新規参入する以前、パ・リーグの球団は「赤字が当たり前」と言われていた。30億〜40億円の赤字を親会社が宣伝・広告費として補填するのが常だった。  球界に経営者らしい経営者はいなかった。球団社長、球団代表とはいっても、ほとんどが親会社からの出向で野球に対する知識も愛情も持ち合わせてはいない。

意表突く抜群のさじ加減

 野球好きの父親が、かつて、こうつぶやいていた。「豊田さんのような野球選手上がりのコラムニストはこれまでいなかったし、これからも現れないだろうな…」  豊田さんのコラムは「チェンジアップ」のタイトルが示すように常に読者の意表を突く。肩の凝らない自然体のフォームで投げているのに、いつも読む者をハッとさせるのは著者の卓越した観察眼によるものだろう。

伝説の生き証人、脇役健在

 史上初の野球の国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)の決勝、日本対キューバ戦の視聴率は43.4%(関東地区)を記録した。プロ野球中継では歴代3位の視聴率だった。王貞治日本代表監督は「正直、野球がこれほど盛り上がるとは…」と語ったが、本当にその通りだ。日本人はやっぱり野球が好きなのだ。改めてそのことに気付かされた。

アンチ巨人が説く再建論

 昨年、巨人OBの評論家が私に「最近の巨人の野球はサインが少ないように感じる」と語った。「これが巨人の弱くなった理由のひとつではないか」とも。ここ数年の巨人は他球団から4番打者ばかりかき集めていたため、サインを必要としなかった。誰かがホームランを打てばいいのだ。著しく個人の能力に偏った野球をやった結果が3年連続の“V逸”だった。

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