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(写真:第14回「えひめスポーツ俳句大賞」表彰式の様子)

 スポーツと文化が融合した新しい芸術文化の発信を目的とした「えひめスポーツ俳句大賞」。野球などのスポーツを愛した愛媛県出身の俳人・正岡子規が野球殿堂入りしたことを記念して創設され、今回で14回目を迎えた。3月、松山市のひめぎんホールで2015年度の表彰式が盛大に催された。

 

 応募総数は過去最多となる4923句。

 46都道府県から集まり、前年の3523句を大きく上回ったという。内訳は一般の部3549句、ジュニアの部1318句、ハイブリッド部門56点。福谷俊子委員長は「スポーツ俳句には、独特な言葉や表現の楽しさがあります。短詩型の俳句に最も大切な季語のない句や、感動の焦点が絞り切れず散漫になってしまった句、類想句なども散見されましたが、41種目というたくさんの競技をそれぞれ思い描きながら、17文字と一体になって選句にあたりました」とコメントを寄せている。

 

 では厳正な選考によって決定した、各部門の大賞を紹介したい。

 

◇俳句部門(一般)大賞

 幾万の眼のラリー追ふ虫時雨(愛媛県・清水貞子さん)

◇俳句部門(ジュニア)大賞

 ホームラン打った瞬間せみしぐれ(愛媛県・日出山大輝さん)

◇ハイブリッド部門 大賞

 炎天にシュート放つも壁あつし(愛媛県・宮内佳子さん)

 

 一般の部で大賞を受賞した清水さんの一句は、バレーボールのラリーを詠んだもの。福谷審査委員長は「『幾万の眼』という強調した表現法からテレビの映像に触発された句のように想像できます。息を凝らして見つめるラリーがふと途切れた瞬間に、緊張をやわらげるように虫が鳴いていることに気付かれたのでしょう。スポーツ俳句で『虫時雨』という豊かな抒情を備えた季語が使われるのは稀有なことですが、そこに作者の閃きを感じます」と講評している。

 

 ジュニアの部の大賞作は、野球の一句。ストレートな表現が、爽快感を与えている。「俳句の季語はしばしば省略されますので、ホームランを打ったのは作者かもしれません。読み手も一緒に爽快な気分になれる句です。特に『打った瞬間』という感動を凝縮した誌の言葉が、ひときわ鮮やかに臨場感のある句にしています」とは福谷審査委員長。

 

1603DAIKi ハイブリッド部門(写真+俳句)は炎天の下で行なわれた女子ホッケーの光景(写真)を詠んだ句が選ばれている。同委員長は「炎天下での精神統一は、日頃の厳しい練習によって培われるものでしょうが、ボールに集中する一瞬の緊張感が漲ってきます。『壁あつし』には、観戦する作者の落胆もうかがえますが、負けて悔いなしという気持ちもこめられた句だと思います」と評している。また、写真の審査を担当した川本征紀委員は「飛ぶボールに集中するディフェンスの視線に圧力を感じるナイスショットが秀逸」と講評した。

 

 各部門では「金賞」「銀賞」「銅賞」も発表されている。

 

◇俳句部門(一般)金賞

 カットしてまたカットして汗切れず(東京都・野上卓さん)

 呼吸するシャトルコックに夏の息(北海道・平松泰輔さん)

 逆転のベースを踏みぬ雲の蜂(愛媛県・武井日出子さん)

 目力の空手少女のさわやかに(山梨県・松田由紀子さん)

 

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(写真:愛媛県体協・大亀会長から表彰状を受け取る授賞者)

◇俳句部門(ジュニア)金賞

 友達にバトンと気もちつなぐ秋(愛媛県・武山日向佳さん)

 執念でスマッシュ一本麦の秋(青森県・宮本依於さん)

 自転車のペダルかるいな夏の雨(愛媛県・久保迅輝さん)

 お月さますぶりするぼく見つめてる(愛媛県・鍛冶崎大志さん)

 

◇ハイブリッド部門金賞

 渾身のみなぎる力秋の影(愛媛県・本宮あすかさん)

 秋風に闘志抱いて綱を引く(愛媛県・鳴滝久照さん)

 

 愛媛県内の各メディアによる「報道関係賞」。一部、紹介したい。

 仁王立ちのゴール・キーパー雲の峰(香川県・対尾冴子さん)

 回生の背面ショット天高し(愛媛県・井門敬之さん)

 跳ぶ走る人馬一体青葉風(愛媛県・若山智栄さん)

 クレー射撃鷹の眼となりにけり(神奈川県・佐野利典さん)

 大富士に向かひ正眼初稽古(静岡県・今井克己さん)

 スタートダッシュ春泥深く深く蹴る(大阪府・張沢碩さん)

 ペダル踏む足の底にも春一番(青森県・高山大夢さん)

 フリースロー自分の努力信じよう(神奈川県・望月遥さん)

(他、多数)

 

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(写真:「スポーツ俳句を愛媛ブランドとして定着させたい」と挨拶した大亀会長)

 県体育協会の大亀孝裕会長は「来年に迫った『愛顔つなぐえひめ国体・えひめ大会』の開催は64年ぶりで初めての本県単独開催。これを機にスポーツファン、俳句愛好者のみなさまには、スポーツ現場に足を運び、間近にスポーツの迫力や面白さを体感していただき、活躍する選手の感動や夢、希望を分かち合う場面を、俳句を通して表現していただきたい」と挨拶。えひめ国体を契機に、スポーツ俳句をさらに浸透させていく意向を示した。

 

 草茂みベースボールの道白し

 

 これは明治29年夏に詠まれた正岡子規の俳句である。松山市の坊ちゃんスタジアムには句碑が建てられている。

 広がりを見せつつあるスポーツ俳句。天国の子規も思わずポンとひざを打っているのかもしれない。

 

「第15回えひめスポーツ俳句大賞」の募集は5月から11月末迄と例年より延長しております。ふるってご応募ください。

 

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

 

(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)


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