ついに夏の祭典がフィナーレを迎える。日本の期待を背負って最終日に登場するのはマラソン男子日本代表だ。(ミキハウス)、(安川電機)、(佐川急便)がロンドンの街を駆け抜ける。藤原はレースを通してハイスピードを維持して上位を狙いたい。また、中本は状況を見極める冷静な走り、山本は持ち前の粘りで先頭集団についていけるか。前回大会のマラソンで日本の入賞者は男女ともにゼロ。今大会もすでに女子が入賞を逃しており、男子で低落傾向に歯止めをかけたい。
熱戦もあと2日、今大会の日本勢は競技初日から連日欠かさずメダルを獲得してきた。11日もメダルが期待される競技が続く。ボクシングではミドル級の(東洋大職)が、日本勢では1964年東京五輪のバンタム級・桜井孝雄(故人)以来、2人目の金メダルに挑む。対戦相手はエスキバ・ファルカン(ブラジル)。昨年の世界選手権では準決勝で大差をつけて勝っている相手だ。これまでの戦い同様、ボディでスタミナを奪い、後半以降、パンチを集めたい。
がメキシコ大会以来、44年ぶりのメダル獲得に挑む。運命の3位決定戦は日韓戦となった。五輪世代の日本は同世代の韓国に辛酸を舐めさせられてきた。U-20W杯への出場権をかけたアジアU-19選手権で、2008年、10年ともに準々決勝で敗退。この時の相手が韓国だったのだ。メダルをかけた大一番で雪辱を果たせるか。韓国は準決勝のブラジル戦で0−3の大敗を喫しており、守備が堅いとは言えない。日本としてはボールポゼッションを高め、波状攻撃で相手守備網をこじ開けたい。
女子サッカー決勝は、が最強のライバル・米国と対戦する。勝てばW杯と五輪の連続制覇となり、これは史上初の快挙だ。対する米国は五輪5大会すべてに決勝進出を果たし、3大会連続4度目の金メダル狙う。警戒すべきはアビー・ワンバック、アレックス・モーガンの強力2トップだ。準決勝のフランス戦ではGK(湯郷ベル)が好セーブを連発した。(日テレ)、(フランクフルト)らと形成する堅い守備陣が、アメリカの猛攻をどこまで防げるか。米国は今大会5試合で5失点と守備にスキがあるだけに、司令塔の(湯郷ベル)が多彩なキックでチャンスを演出し、早めの得点につなげたい。
女子レスリングは、63キロ級の(ALSOK)が日本女子初の五輪3連覇を狙う。同級で圧倒的な存在感を誇る伊調は金メダルの大本命だ。国際大会では2007年以降負けなしと、連勝街道をひた走る。五輪と世界選手権に限っていえば32戦無敗。女王のV3に死角は見当たらない。また、48キロ級の(自衛隊体育学校)にも金メダルの期待がかかる。小原は五輪こそ初出場だが、国際大会の経験は豊富だ。世界選手権を51キロ級で6度制し、48キロ級転向後も連覇するなど実績は申し分ない。小原のメダル獲得も堅いだろう。ここまで女子レスリングで、日本勢はアテネ五輪から全階級でメダルを獲っている。“お家芸”の名にかけて今回も金メダルを量産する。
男子サッカーのの快進撃に日本だけでなく、今や世界中が注目している。初戦で優勝候補のスペインを下した勢いそのままに、44年ぶりに準決勝進出。メキシコ戦に勝てば、史上初の決勝進出となる。メキシコとは大会直前の親善試合で対戦。2−1の勝利を収めており、相性は悪くない。また、日本はコンディション的にも有利だ。というのも、相手は準々決勝で延長戦にまでもつれ込んでいるのだ。動きの重い相手に序盤から攻勢をかけ、先制点を奪い取りたい。リードすれば、守備陣は4試合連続無失点中だけに、勝利が見えてくる。なでしこジャパンとともに男女揃っての決勝進出となるか。
女子サッカーは、が悲願のメダルをかけてフランスと対戦する。フランスには大会直前の親善試合で0−2の完敗を喫した。相手の高い身体能力は脅威だが、前戦で難敵ブラジルを完封した勢いのまま、W杯4位の強敵を撃破したい。ブラジル戦ではストライカーの (ポツダム)にも初ゴールが生まれ、攻撃陣も上り調子。4試合1失点と守備陣は安定しているだけに、大儀見らアタッカー陣の出来が決勝進出への命運を分ける。
陸上競技では、今大会日本勢初のメダル獲得へ注目が集まる。男子ハンマー投げは、予選2位で通過した(ミズノ)が金メダルの期待を背負う。今季世界ランク1位イワン・チホン(ベラルーシ)が予選直前に欠場したため、2大会ぶりのメダル獲得の可能性は高い。37歳の鉄人から放たれるビッグスローに目が離せない。
バドミントン女子ダブルス決勝は見逃せない。組(ルネサス、世界ランク5位)が金メダルに挑む。相手は世界ランク2位の田卿、趙ウン蕾組(中国)。ランキングでは格上だが、“フジカキ”は昨年12月の対戦でセットカウント2−1の勝利を収めている。大会5連覇がかかる中国勢に対し、藤井と垣岩に失うものはない。持ち前の攻撃的スタイルで、一気に世界の頂へ登り詰めるか。
トランポリンが行われ、男子は史上初のメダル獲得に期待が高まる。悲願達成に挑むのは昨季の世界ランキング1位・(金沢学院大ク)と2大会連続出場の(大体大大学院)。トランポリンは1度演技が途切れると、その時点で終了になる。ひとつのミスが命取りになるため、一発勝負の色合いが濃く、金メダル獲得は十分にあり得る。日の丸を背負って、ロンドンで高く舞う2人の演技から目が離せない。
バドミントンでは、女子ダブルスの組(ルネサス、世界ランク5位)が日本勢初のメダル獲得に挑む。快挙達成に向けては追い風が吹いている。1次リーグで無気力試合を行ったとして、ベスト8に進んだ4ペアが失格。この中には世界ランク1位、同3位のペアが含まれていたのだ。準決勝では繰り上がりで決勝トーナメントに進んだブルース・アレックス、ミシェル・リー組(カナダ、同27位)と対戦する。世界ランクでは大きな差があり、普段どおりの戦いをすれば銀メダル以上が期待できそうだ。
日本中、いや世界中が注目するのは(コカ・コーラ)が出場する男子200メートル平泳ぎ決勝だろう。前人未到の2種目3連覇に挑んだ今大会、100メートルはメダルにも届かない5位。しかし、「まだ200メートルが残されている」と切り替え、前日の予選を2分9秒43(全体5位)で通過した。準決勝では2分9秒03(全体5位)と着実に記録を上げてきている。レース後には「100メートルよりは泳ぎはしっくりきている」と本人も手応えを感じているようだ。同一種目の3連覇でも競泳男子では史上初の快挙。果たしてロンドンの地で伝説を残せるか。 また、初出場の(NECグリーン)も2分9秒13で決勝に進出し、メダルの期待がかかる。女子200メートルバタフライ決勝には(スウィン大教)が出場する。
競泳では男子200メートルバタフライで準決勝をトップ通過した(コスモス薬品)に金メダル獲得のチャンスがある。前回の銅メダリストは、今大会、この種目で第一人者マイケル・フェルプス(米国)を破っての金メダルに照準を合わせてきた。フェルプスは3連覇を狙った400メートル個人メドレーで4位に終わるなど決して本調子ではない。昨年の世界水泳ではフェルプスに0.67秒差をつけられての2位。この差を一気に逆転して“怪物超え”を果たしたい。
4日目は日本競泳陣にメダルラッシュの期待がかかる。女子100メートル背泳ぎ決勝には(ミズノ)が出場する。予選は59秒82で4位通過。続く準決勝では59秒34を記録し、全体3位で決勝進出を決めた。調子を上げての決勝進出だが「勝負は決勝なので自己ベストを更新してメダルを取れるようがんばる」と気を引き締める。初出場となったアテネ大会では決勝に進出したものの、緊張から本来の泳ぎができず、8位に沈んだ。前回の北京大会はまさかの代表落選。8年越しの大舞台で悲願のメダル獲得を目指す。
最大の注目は初の3大会連続2冠の偉業に挑む(日本コカ・コーラ)が登場する100メートル平泳ぎ決勝だ。28日の予選ではトップと0.01秒差の59秒63とまずまずのタイムで2位通過した北島だが、準決勝では59秒69と伸び悩み、全体の6位で決勝に臨む。果たして決勝ではどんな泳ぎを見せてくれるのか。そのほか、女子100メートル背泳ぎ予選にはアテネ大会以来の出場となった(ミズノ)、男子100メートル背泳ぎ予選には昨年の世界選手権、同種目で銅メダルを獲得している(イトマン東進)が登場する。
4年に1度のスポーツの祭典がついに幕を開けた。204カ国・地域が参加するロンドン五輪は27日(日本時間28日未明)、メインスタジアムとなる五輪スタジアムで開会式が行われ、17日間にわたって行なわれる戦いがスタートした。518人(選手293人、役員225人)の選手団を派遣した日本は今回、世界5位の金メダル獲得数を目指している。既に予選リーグが始まっているサッカーでは、男女ともに白星スタートを切った。特に男子は優勝候補の筆頭と言われるスペインを破る大金星をあげ、日本チームにいい流れをつくっているだけに、今後の日本人選手の活躍が期待される。