白戸太朗
羽生結弦選手が8日に行われたフィギュアのスケートグランプリシリーズ第3戦、中国杯の練習滑走中に他の選手と衝突し、負傷しながらも試合に出場した。この判断に対して、その後も様々な意見やコメントが出ている。僕自身も選手であったり、大会主催者であったり、報道する立場であったりと、この事件に関して思うことも多い。数々の見解を聞かせてもらう中で、いろいろと考えさせられている。
日本ではチャリティがまだまだ定着しない。毎年、東京マラソンで募集している「チャリティ枠」も定員が埋まらない状況だ。10倍を超える倍率の一般枠との落差は歴然。未だ「スポーツ→社会貢献→チャリティ」という構図は、日本国内において認識が薄いという話を本コラムの148回目で書かせて頂いた。その後、いろいろと反響は頂いたが、もちろん世の中が急に変わるはずもない。そんな中で、来年の東京マラソンでは「オリンピックに向けて子供たちに残して行けるモノを作って行こう」という「レガシープログラム」をチャリティで行っていくことが決まった。
今年も三陸の人々は温かかった。走る選手達を応援し続ける人たち、エイドステーション(補給所)で選手に食べ物を配るボランティアスタッフ。皆が笑顔で、一所懸命に選手を歓迎しているのが伝わってくる。でもその向こうに見えるのは震災の傷跡……。いろいろな想いを巡らせながら、僕たちはペダルを踏み続けた。
日本の中だけではそこまで価値を見出されないが、海外から絶賛されると国内でも、というケースは意外に多い。日本人がシャイで自信を持てないのか、足元にあるいいものに気が付かないのか。芸術、音楽の世界はもちろん、工業製品からコンビニの便利さ、治安の良さなどなど……。国内にいると当たり前と思っていることが、海外から見ると「Cool!」となるわけだ。つい先日も、海外から絶賛を受けて急激に人が増えているというところに行ってきた。それは「西瀬戸自動車道」、通称「しまなみ海道」。ここは建設当初、「こんなにお金をかけてどうするんだ」と非難の声が多かった場所だが、今では国内外から沢山の人を呼び寄せている。
この夏、世界を夢中にしたサッカーのワールドカップ(W杯)。開催地ブラジルとの時差もあり、寝不足が続いていた人も多かったのではないだろうか。予想外の展開、結果に喜んだり驚いたり……。普段はそれほどサッカーを見ていない人にも、世界の技は十分に見応えがあったことだろう。個人的には、ゲームのほとんどを支配したり優勢に進めていたにもかかわらず、相手にワンチャンスを決められて敗退したり、流れを変えられてしまうシーンを何度も目のあたりにし、サッカーの残酷さと難しさをヒシヒシと感じることが多かった。逆にいうと、これがロースコアで争われるこのスポーツの面白いところなのだろう。
「うーん、日本はボールをキープできていないな」。自宅に帰ると皆で論議をしていた。その中心はなんと80歳の義父。生粋の昭和初期生まれの彼は、スポーツといえば野球で、プロ野球は巨人ファン。たまにゴルフやボクシングを見ているが、サッカーなど見たことがない。そんな男が日本戦の振り返りVTRを見ながらサッカーを論じる。街中で見かける自転車で駆け抜けていく少年たちはサムライブルーのユニフォームだし、朝のワイドショーも中心はワールドカップ(W杯)。ゴルフのUSオープンが中継されていても、世の中では「松山」より「本田」である。日本人ってこんなにサッカー好きだっけ?
日本国内において、5月は「自転車月間」となっている。これ自体はあまり浸透していないのだが、実際この季節は自転車に乗るのがとても気持ちよく感じられ、便利さや快適さを実感するには最適だ。ぜひ、多くの方に自転車に乗って頂きたい。そんなこともあり、5月はサイクルロードレースも数多く開催されている。ヨーロッパはもちろんだが、国内でも大きなレースがいくつもあり、選手や関係者は大忙しだ。
僕の周りで、にわかにパラリンピックが盛り上がっている。その理由としてあげられるのは、まずはなんと言っても東京での開催決定が大きい。これに伴い、選手、関係者はもとより、一般の方々もオリンピックはもちろん、パラリンピックも意識するようになってきている。やはり目標があると、人は変わることができるのだということをあらためて認識させられる。もう一つは、トライアスロンが2016年のリオデジャネイロ大会から、パラリンピックの正式種目となることが決まっていること。他種目のパラリンピックアスリートや、それまでは趣味で取り組んできたハンディキャップを持つトライアスリートのモチベーションや動向が明らかに変化してきた。こうしたエネルギーを感じることができるのは、トライアスロン業界に身を置くものとして嬉しい限りだ。
近頃は、国内はどこもマラソン人気。大会も参加者も相当数増加し、いずれも盛況だ。データによると2006年から12年の6年間でランナー人口は400万人増加し、1000万人を超えているという(笹川スポーツ財団発表)。アメリカにおいても同様の傾向が見られ、00年には800万人程度だったのが、12年では1500万人を超えたと言われている(Running USA発表)。つまり、少なくとも日本国内においては10人に1人程度は走っているわけで、乳幼児や、高齢者を除くと、その割合はかなり高いことがわかる。確かにどこに行っても、走っている人に会わないことはないというくらいだ。
「英語が話せなくて買い物に不自由した」 このようなことは海外旅行などでは珍しくない経験だが、日本国内でもこんな経験ができる場所、いや、してしまう場所がある。噂には聞いていたが、実際に行ってみると驚くべき外国人率の高さ。道行く人はもちろん、英語のみの看板、建築物の雰囲気……まるで海外に来ている錯覚に陥るほどだ。そう、ここ「Niseko」(北海道倶知安町、ニセコ町)はオーストラリア人を中心とした外国人の一大リゾート地と化している。
「東京の2月と言えばマラソン!」。来月で8回目を迎え、すっかり都市マラソンの顔になった東京マラソン。間違いなく国内で最も有名で、最も多くのスポンサーが集まるマラソンレースである。そしてなにより、この大会のおかげで、日本でも各都市の中心部でマラソンが開催されるようになったといっても過言ではない。それまで人様の邪魔にならぬよう、人口の少ない地域、交通に支障が出ない地域で開催されていたマラソンが、一般市民参加レースでさえ都市部に進出するようになった。東京マラソンは、日本マラソン界の歴史を変える大きな一歩となったといえるだろう。
12月9日、第41回ホノルルマラソンが開催された。参加者総数は3万1000人。そのうち日本人の参加者は1万4000人。つまり、半数近くを日本人が占めたことになる。ホノルルマラソンは、日本人にとっては入門編の象徴でもあり、日本国内のランニング人口増加に大きく貢献している。
走りながら、こみ上げてくるものを抑えられなかった。胸が熱くなり、涙が出てくる。サングラスをしていなかったらカッコ悪い面をさらけ出すところだった。青い空と、蒼く静かな海。優しい笑顔の応援者たち。11月3日、「ツールド東北」を走りながら、そんな感情に襲われた参加者は僕だけではなかったはずだ。
「アイアンマン」。そのまま訳すと「鉄人」である。そう、日本にトライアスロンが広まった当時、この言葉が先行してしまい、「トライアスロン=鉄人」と表現されることが多くなった。ただ、本来この「アイアンマン」というのは、トライアスロンにおけるひとつのシリーズの名称であり、総称ではない。例えていうなら、車のレースは「モータースポーツ」とか「カーレース」というのが表現として正しいのだが、その総称を「フォーミュラー1」と言っているようなものである。本来はカテゴリーの1つに過ぎないのに、そのインパクトが強過ぎて、総称を超えて一般的に認知されているという感じだろうか。
9月8日、記念すべき東京オリンピック・パラリンピック開催が決定した。早朝から起きて、この瞬間をLiveで見ていた方も多かったのではないだろうか。正直、決定に対する反応の早さと大きさは、東京オリンピックに対する国民の期待の大きさ、注目度の高さを示すものではなかったかと思う。まあ、国民気質として決まったもの、大勢が注目するものに対して興味を示すというのはいつものことではあるが……。いずれにしても、多くの人々がオリンピック開催に関して興味を持ってくれるということは嬉しいことだ。
「ロードレース」はなぜ「ロードレース」と言うのか? それはもちろん「ロード=道」で行うからである。普段、一般市民が行きかう道を、その日だけは自転車やランナーがコースとして使うのだ。一方、本来の道ではない公園や、港などのクローズド・スペースで開催されているレースは、本当の意味での「ロードレース」ではないのかもしれない。
「世界最大のサイクルロードレース」というキャッチフレーズで盛り上がっているツール・ド・フランス(TDF)。日本国内でも毎晩数十万人がLive中継に盛り上がるという。サイクルスポーツがまだそれほど一般化していない日本国内でもその名前は知れ渡るようになってきた。それも意外に自転車、いや、スポーツに縁のないような女性が見ている例が多く、意外な組み合わせに驚かされることが多い。なぜこのレースはそれほどに人を魅了するのか。また星の数ほどあるサイクルロードレースの中で突出した存在なのか。
今では、すっかり国民的スポーツになったマラソン。どんな職場に行っても、市民ランナーがいることが珍しくない時代になった。決して身体に優しいわけでもなく、ゲーム性のもないこのスポーツが日本で広がったきっかけは、やはり「ホノルルマラソン」だろう。
私の5月は忙しい。自社で主催しているトライアスロン大会が1つ。JSPORTSでLive中継担当するサイクルロードレースが、3週間続くジロ・デ・イタリアと、8日間のツアー・オブ・カリフォルニアと2つある。どれも非常に興味深いモノばかりで、これを仕事にできることを幸せに思う。そしてさらに、19日からは国内最大のステージレース(複数日間続くロードレース)であるツアー・オブ・ジャパン(TOJ)も開催される。こちらも会場MCを担当しているものだから、昼夜問わず、国内外あちこちに移動し続けることになる。なんと、楽しくて、なんとハードで落ち着かない1カ月だろうか!?
アベノミクスで景気が向上しているらしいが、スポーツイベント業界は苦戦が続いている。それは、私が関与することが多いマラソンイベントも同様だ。飛躍的に増えた愛好者人口とは裏腹に、各地のイベントは存続をかけて戦っている。
僕は反省していた。弱い自分を情けなく思いながら、叱咤していた。周囲から見ているとただ自転車に乗ってペダルを回しているだけだが、頭の中では自分をなじり、反省しきりだったのである。
2月のある日、日本自転車普及協会にて、「日本人がツール・ド・フランスに勝つためには」という題目の自転車セミナーが開催された。これが5年前なら、「日本人がツール・ド・フランスに出るには」となっていたところだ。それほどここ数年の日本人選手の活躍は目覚ましく、我々の常識を打ち破ってくれているということだろう。そんな少々、上段から構えたセミナーではあったが、その内容は講師が自転車競技の最前線で活躍しているエキップアサダ監督兼代表の浅田顕氏、宇都宮ブリッツェン監督の栗村修氏ということもあり、なかなか興味深いものだった。
冬にしては風のない荒川河川敷。早朝こそ冷え込んでいたが、気持ちのいい天気の日曜日に1万人を超える人が走っている。単純に「1万」というけれど1万人の人が一度に動く景色は壮観! ここ数年、満員御礼の「谷川真理ハーフマラソン」は、今年も大勢の参加者で賑わった。
当HP人気コラム「スポーツ“TRY”アングル」執筆者の白戸太朗氏が、日本の行動科学の第一人者・石田淳氏と共著で新刊を出版しました。プロアスリートの経験と、行動科学のセルフマネジメントが物語るランニングをツールとしたセルフマネジメント本です。ビジネスパーソン必見の内容です!
冷たい冬の雨が降る12月15日、お台場の潮風公園が活気に満ち溢れていた。子供から人生のベテランまで、多くの人が様々なウエアーで走り、応援をしている。この日は「お台場EKIDENフェスティバル」が開催され、参加者たちが雨にも負けず走っていたのだ。その中には見覚えのある顔もちらほら見受けられ、それがまた皆を鼓舞することになった。実はこのイベント、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」が主催し開催されたもので、様々なオリンピック種目のアスリートが参加していたのだ。招致の国内支持率をあげたい委員会が、ムーブメントを盛り上げるべく開催しているというわけだ。