近藤隆夫

第108回 エリオ・グレイシーが伝えたかったこと

 歯科医院で親不知を抜き、顎に手を触れながら帰宅しようと歩いていると携帯電話が鳴った。並ぶ桁数が普段よりも多い着信表示。その国際電話でエリオ・グレイシーが他界したことを知った。リオ・デ・ジャネイロ近くの病院で最期は苦しむこともなく静かに息を引き取ったそうだ。1月29日(現地時間)のこと……享年95。

第107回 K-1選手のリベンジは総合格闘技のリングで! 〜12・31『Dynamite!!』を観終えて〜

 昨年大晦日のさいたまスーパーアリーナは熱気に包まれていた。まさかの結果の連続にファンの興奮が収まらない。だが私は、武田幸三、バダ・ハリ、武蔵は、いま何を思うのか、と心配してしまった。会場に集まっていたのは、ほとんどが総合格闘技ファンだった。K-1選手たちがアウェイ的雰囲気を感じたことは確かだろう。それにしても、この結果はどういうことか?

第106回 総合格闘家・石井慧に求められるテーマ

「石井が総合格闘技へ行ったら、どれくらい強いんですか。ミルコには勝てますよね。ヒョードルといい勝負ですか? なにしろ柔道で金メダルを獲ったばかりの選手ですからね」  最近、そんな風によく話しかけられる。  もう少し格闘技を深く観ている人になると、こんな風に声をかけてくる。 「石井は通用しますかね。打撃に対応できるかどうかがポイントでしょうか。でも、まだ20歳過ぎで若いでしょ。可能性は十分にありますよね」

第105回 石井慧の現在、これから……

「もったいないですよ。だって、まだ何年もトップクラスで柔道がやれるじゃないですか。21歳でしょ、総合格闘技へ行くのは、ロンドン五輪の後でもいいでしょ。もったいない……」  高校の柔道部時代からの付き合いがあり、現在も指導者として道衣を着ている友人が私に、そう言った。勿論、石井慧のことである。  石井の選択が「もったいない」のかどうかは、個人の価値観によるものだと思うが、多くの柔道家が、私の友人と同じ意見のようで、それは、何よりも「柔道」が好きだからである。いまは『戦極』のリングに上がっている吉田秀彦も同じように考えていると思う。

第104回 秋山成勲の「吉田秀彦と闘いたい」発言に思う。

 一体、何を言っているのか?  9月23日、さいたまスーパーアリーナで自分の耳を疑った。  秋山成勲の言葉である。 『DREAM6』の第9試合でカラテ家の外岡真徳(正道会館)に勝利した直後、リング上で彼は言った。 「年末、吉田秀彦とやりたいです。吉田先輩、後輩の挑戦、受けてくれますよね」  自分がファンから、どのように見られているのか、自らがいかなる立場にいるのかについて、秋山は、まったく理解できていないように思えた。

第103回 ヘビー級戦線……ミルコは生き残れるのか?

 プロボクシングには、ミニマム(47.62キロ以下)級からヘビー級(90.72キロ以上、無制限)まで17の階級がある。WBA、WBC等の団体が各階級の世界王者を定めているのだが、その中でも「世界ヘビー級チャンピオン」の称号には特別な重みがある。  ボクシングでも柔道でも、レスリングでもそうだが、もともとは階級分けなどなかった。競技として発展する中で、スポーツ性を高めるために設けられたものなのだ。50キロの男が100キロの男と闘えば体格的なハンディを負う。だから闘わせるのはやめよう……との発想が、階級分けの源にある。つまりは、ボクシング界で最強の男とは「ヘビー級チャンピオン」を指すのであり、よって特別な重みが備わっている。

第102回 大阪城ホールに吹いた風の正体 〜7.21『DREAM5』を観た後に〜

「今回、私は不運に見舞われました。でも、自分の代わりに誰かに(決勝戦に)出てもらうとしたらヨアキム(・ハンセン)しかいないと思います」  リング上でエディ・アルバレスが、そう話すと、場内がドッと沸いた。その瞬間、何かが変わったことに私は気付いた。私だけではなかっただろう。7月21日、大阪城ホールに集った多くのファンが、そう感じていたのではないか。勝負に勝つためには、どうしても味方につけなければならない「風」の吹く向きが、あの瞬間に変わったのだ――。

第101回 7.21大阪城ホール『DREAM5』に飛躍の予感

 清々しい光景だった。  6月15日、横浜アリーナ。第4試合終了後、休憩明けのリング上で『DREAMライト(70キロ以下)級グランプリ・トーナメント』準決勝戦の公開抽選が行われた。この日の第1試合で永田克彦を破りベスト4入りを最後に決めた青木真也、川尻達也、宇野薫、そしてエディ・アルバレスの代役としてDREAMの笹原圭一プロデューサーがロープをくぐって登場。箱の中に入っている封筒を青木、川尻、宇野の順(アルファベット順)に引く。その封筒の中にある紙に記されている番号によって7.21大阪城ホール大会の組み合わせが決まった。

第100回 『DREAM3』に生じた『PRIDE』の熱。

「いやぁ、良かったですねぇ、今日の試合。久しぶりに興奮しました。まるで、『PRIDE』を観ているような気分でしたよ」  さいたまスーパーアリーナを出て駅に向かって歩いていた時、格闘技観戦をライフワークにしている知人が駆け寄ってきて、顔を輝かせながら、私にそう言った。5月11日、『DREAM3』が終わった直後のことだ。  私も彼と同じ気持ちだった。  アリーナが満席になったわけでは無かったが、場内には熱気が漂った。過去2回の大会では感じることのできなかった「熱」が『DREAM』に確実に生じていた。そのことが、格闘技好きとして嬉しかった。

第99回 感じられなかった「特別な雰囲気」 〜4.29『DREAM.2・ミドル級GP』を観て思ったこと〜

「2回戦に進出した皆さん、おめでとうございます。僕は関係ないんで」  極真カラテの世界王者アンドリュース・ナカハラを破って1回戦を突破した直後のリング上で桜庭和志は、そう喋っていた。4月29日、さいたまスーパーアリーナで開かれた『DREAM.2』でのことだ。  インタビュールームでも彼は、こんな風に続けている。 「僕は初めからトーナメントに関係ないです。もうトーナメントは無理です。ワンマッチならやりますけど」  もともと、1日に複数試合を行うこともあるトーナメントを桜庭は好んでいない。加えて、『DREAMミドル級グランプリ』のチャンピオンになりたいという気持ちが強くも無いようである。

第98回 『戦極』、『DREAM』に期待することとは…

 3月に開かれた2つの格闘技イベント――3・5代々木『戦極』と3・15さいたま『DREAM1』を観て久しぶりに熱い気持ちになれた。今年は毎月、格闘技のビッグイベントが開催されることになりそうで嬉しい。さて、『戦極』と『DREAM』のどちらが、より『PRIDE』の熱を維持していたか? 私は『戦極』だったと思う。両団体ともに、新機軸を打ち出したいと考えているようで、それは良いことだが長年、観る者を熱くさせてきた『PRIDE』の良き部分は、しっかりと引き継いでもらいたいとも思う。

第97回 『戦極』旗揚げ戦を観て……

 代々木第一体育館での取材を終えての帰り路、原宿駅へ向かうつもりが気がつくと渋谷駅へと歩いていた。ショックを受けてボーッとしていた。  3月5日『戦極』旗揚げ大会のメインエベント、吉田秀彦のタップシーンは私にとって衝撃が大きかった。柔道時代から20数年、吉田の試合を見続けてきた。その間、私が知る限り彼がギブアップを表示したことは一度も無い。  まだ私が柔道をやっていた頃から、3つ歳下ながら吉田は特別な存在でもあり、彼が「参った」をする姿が、まったく想像できなかった。それだけに、あのシーンは驚きでもあり、淋しくもあった。

第96回 三崎×秋山戦が「ノーコンテスト」に…… 納得できない!

 大晦日の格闘技シーンを大いに盛り上げた三崎和雄×秋山成勲戦の公式結果が覆った。「1ラウンド8分12秒、三崎のKO勝利」が、「ノーコンテスト」へと。釈然としない。  まず、三崎の蹴撃は果たして秋山が4点ポジションにある際に見舞われたものなのか? ビデオテープを何度見直しても秋山の左手が、マットについていたとは断定できない。僅かにグローブがマットから浮いているようにも見える。加えて、あの状態を果たして「4点ポジション」と規定すべきなのだろうか、と考えてしまう。

第95回 三崎の蹴撃は反則なのか? 〜「やれんのか!大晦日!2007」考察〜

 秋山成勲をマットに沈めた三崎和雄の右の蹴りが反則だったのではないか、とFEGの谷川貞治氏が口にし、そのことがスポーツ紙でも報じられた。三崎が蹴った時点で、秋山は4点ポジションにあった……そこを蹴撃したのだから「反則だ」というわけだ。 ※年末年始の更新スケジュールにともない、毎月第1木曜更新の連載・近藤隆夫「INSIDE格闘技」は、今月に限り4日(金)更新とさせていただきます。

第94回 大晦日、ヒョードルの対戦相手は?

『PRIDE』が事実上、消滅したことで勢いを欠いた2007年の日本総合格闘技界だが、ここにきて息を吹き返しつつある。  新団体WVR(ワールド・ビクトリー・ロード=来年3月5日、東京・代々木第一体育館で旗揚げ)の発足に続き、旧PRIDEスタッフによって『やれんのか! 大晦日! 2007』(12月31日・さいたまスーパーアリーナ)が開催されることが決定した。

第93回 来春、9年ぶりにリングに上がるヒクソン・グレイシーについて

「そういえば、ここのマウンドにヒクソン・グレイシーが立ったことがありましたね」  プロ野球日本シリーズ第4戦の試合前、バッティング練習を見ていたら、顔見知りの野球評論家(元選手)から、そう話しかけられた。ナゴヤドームに野球の取材に来ているのだが、格闘技の話題を振られることは少なくない。野球界には格闘技好きが結構、多いのだ。  まず、プロボクシングの亀田騒動、続いて大晦日「Dynamite!!」の桜庭和志×船木誠勝戦はどうなるか、そして皆が一番熱心に尋ねてくるのが、ヒクソンについてである。

第92回 PRIDE関係者からの、まさかの電話

 あと数日で『PRIDE』は10周年を迎えます。そう、1997年の10月11日に『PRIDE.1』は開催されました。10年……長いようで短い――。  さて今回は、10周年を記念して「PRIDE名勝負10」を私的に選んでみましょう。思えば、ナンバーシリーズ、グランプリシリーズ、武士道はもとより『THE BEST』、ラスベガス決戦……すべての『PRIDE』の会場に私は足を運んできました。次の大会が開かれないのは気になりますが、発表を待つしかないので、その間に……と、先日、『PRIDE.1』から順にビデオテープで試合を振り返ってみたのです。

第91回 選手たちよ、「プロ」である前に「ファイター」であってくれ!

 先日、米国の或る雑誌からインタビュー取材を受けた。  テーマは、「人気が低迷し始めた日本の総合格闘技を、どう見るか?」――。  私の元を訪れたインタビュアーは結構、格闘技に詳しく、いくつかのマニアックな質問もしてきたが、こんな風にも問うてきた。 「これまでに日本でも、アマチュアの格闘技で実績を残した選手が総合格闘技に参戦している。柔道の吉田秀彦、滝本誠、レスリングの永田克彦……。彼らは、総合格闘技のリングに上がることで高額なファイトマネーが手に入る点が魅力だったのだろう。でも、いまやPRIDEも消滅状態にある。これからは、そんな選手もいなくなるのではないかと私は思う。あなたはどう見るか?」

第90回 船木誠勝、現役復帰に思う

 船木誠勝が現役復帰を宣言した。  7月16日、横浜アリーナ『HERO’S』のリング上で――。  正直、驚いた。選手が、引退を撤回することが珍しくはない格闘技界。だが船木に限っては、それは無いと思っていたから。  あれから7年以上も経つのに、まるで昨日のことのように鮮明に憶えている。衝撃的だった船木の引退表明――。2000年5月26日、東京ドームで開かれた『コロシアム2000』のメインエベントで船木はヒクソン・グレイシーと闘い、チョークスリーパーを決められ失神負けを喫した。直後、記者会見場で彼は「引退します」と口にしたのだ。

第89回「PRIDEはどうなる?」…まあ、そう焦る必要もない。

「PRIDEは、この先どうなってしまうのでしょうか」 「海外のトップ選手は、ボードックファイトやUFCに皆、流れてしまいますよ。日本人選手だってHERO’Sに行ってしまうんじゃないですか。田村潔司とかもHERO’Sに出るんでしょ?」 「今年に入ってからPRIDEは、まだ1回しか大会を開いていないじゃないですか。(地上波での)テレビ中継も無くなったし、ファンに忘れられてしまいますよ」  私の耳に届くのは、そんな声ばかりだ。色んな噂話も聞くが、まあ、そんなに焦らなくてもいいんじゃないかと私は思う。

第88回 緊張感が伝わってこなかった6.2『Dynamite!! USA』

 6月2日にロスアンジェルスへは行かなかった。1984年の五輪メイン会場であり、かつてはNFL(ナショナル・フットボールリーグ)LAレイダースの本拠地であったメモリアル・コロシアムで開催された『Dynamite!! USA』を私はテレビで観戦した。他の取材スケジュールが入っていたため行けなかったのだが、大会の直前になっても「どうしても現地で観なければ…」とは思えなかったからだ。昨年の5月、LAのステイプルズ・センターでホイス・グレイシーがマット・ヒューズと闘った(UFC60)。この時も別の予定が入っていたのだが直前になり、どうしても現地で観て取材しておきたいと思った。無理を言って、あるイベントの出演をキャンセルし飛行機に乗った。だが今回は違った、「どうしても…」という衝動は最後まで湧き上がってはこなかった。どうしてだろう?

第87回 今後10年…『PRIDE』に求められること

「PRIDEは、どうなっちゃうんですか? もう日本で大会が開かれることはないんですか? アメリカに行っちゃうんですかね…」  先日、池袋東口にある「アントニオ猪木酒場」で仕事仲間と打ち合わせがてら呑んでいた時に、そんな風に話しかけられた。 「PRIDEが好きで、ずっと会場へ行き続けていたんです」  そう、淋しそうに話していた。

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